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前略 手塚国光様。
僕はを見てるよ ずっとそばで。
だから僕以外に任せないで欲しいんだ。
ねえ、こんな心境、変かな?
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不二の様子が可笑しくなったのは手塚が九州にいってからのことだった。
コーチを任されている(年齢はソロソロ秘密よ?)は、最近、背後に気を使っている。
その様子はさながらゴル○のようだ。
――胃が、胃が痛い……
ここのところ、大石はコーチとチームメイトの放つ毒にやられて、朝練中も放課後も顔色がなかなか元に戻らない。
試合前の練習期間、ギスギスともまた違う、匂い立つような怪しい空気をどうやって拭おうか憂慮しながら暮らしていた。
「不二、ちょっといいかな」
意を決して話しかけたのは放課後のことだ。
「何?」
不二はいつもどおり柔和な笑みで迎える。
――ほっ。これで何とかなりそうだな。
だが、その考えは次の瞬間にも打ち砕かれることになる。
「そうだ、手塚がいなくなった穴埋めは僕がするから」
「は?」
「あ、ごめん。これからコーチと【二人きりで】ミーティングなんだ。またね」
「あ、ああ……」
――それは俺の役目じゃ……
思うが、まあ円滑に進めばいいやとどこかで心得ている大石であった。
* * * * * * *
それでも部長代理という肩書きとは関係なしに、大石に任されている責務はある。
人間関係一般というやつだ。
――うちはあまりにまとまりがなさすぎる……
氷帝ほどのしのぎあいもないのに、ルドルフほどの策士もいないのに、どうしてこう、山吹や不動峰のように仲良く出来ないものか。
手塚がいない間、絶対的権力がないだけに、この問題は深刻であった。
よって、大石はチームを纏めるべく、ダブルスのパートナー菊丸英二に相談した。
それで出た結果が……
「宣戦布告ってやつだよ」
「……って、俺はダブルスだし、不二の方が上手いと誰も認めてるじゃないか?目の敵にされる理由がわからないよ」
「ほほーい。まぁ、俺は何となく分かる」
「えっ」
菊丸は気紛れに拾ったボールを手で遊ばせながらあっさり言ってのけた。
これには大石も吃驚したが、その答えはあんまりに分かりやすくて大石は頭を抱えた。
「だって不二、先生と話したいって俺に言ってたもん」
「だからその理由が……」
「だから、単に話したいだけなんだにゃ」
――いや、だから……話って言ったって内容があるわけで……。
通じていない。
ある意味、しっかり読み取れている菊丸の方が上手かもしれない。
「不二は大石に嫉妬してるんだって」
無邪気に言ってのける相方に苦笑しながら、大石は諦めのため息をついた。
――英二に聞いた俺が間違っていたのかもな。
そんな理由で不二がプレッシャーをかけるわけがないのだ。
――もしそうだとしたら、俺はシングルスで越前にはれてるよ……。
そもそも手塚への恨みが、こちらにふってきているような――不二は手塚に対してだけは何やら張り合ってるようなオーラを出していたことがある――感覚に、眩暈すら覚える。
――なんで、俺なんだ?
逆に自分の評価を下げていく大石であった。
* * * * * * * *
ことの真相がつかめたのは三日目の朝だった。
コートサイドのベンチに、大石はよからぬモノを見てしまったのである。
「ねぇ、?そろそろ認めてくれるでしょ?」
「あのなぁ、不二。お前さんはいったい何を言いたいんじゃ?」
「……ふふふ。大石も困ってるよ?」
「お前が困らせてるんじゃろうが」
「いやだなぁ。僕が困らせたいのは君だけだよ。スミレ?」
禁断。
思わぬ光景に絶句する。
瞬間、殺意の風が吹いた。
大石から、ではなく、不二の方から。
ギロリ。
視線だけで人を射殺せそうな、そんな目がこちらを向き、
「大石、来てたの?早いね」
ゆっくりと綺麗な目が見開かれる。
――殺られる。
大石の転換は早かった。
「いやぁ不二……あの……その……なんていうか……」
「おお、大石か。今日のメニューなら――」
当然、まだそこにコーチはいるわけで……
――は、話しかけられてしまった……
焦りがじわりと汗となってにじみ出る。
物凄い緊張感はこれまでの非ではない。
状況は把握できた。
相方の眼力に感動しながら、大石は、
「おはようございます【先生】。……ええと、メニューについてはシングルスの方は不二がやるということになりました。よろしくお願いします!!」
先手を打ったもの勝ちとばかりに頭を垂れる。
――お前と争う気はないよ、不二……
生贄を免れたがる親子のような心情で(親が大石であれば、子は他のプレイヤー全て、ひいては青学テニス部自体である)大石は拝み倒した。
叩頭はの方に向けながらも、内心は不二に向かって。
やがて不二が続けた。
「いいでしょ?【コーチ】……そうでないと僕は手を抜いちゃうかもしれない、ね?」
――何が、「ね?」だ?
……というか、なんで先生が勝てないんだぁぁぁぁ
密かに大石は叫ぶが、それすらも瞳に殺される。
援護射撃しか許されない。
「コーチ、俺もその方が助かります」
かなりの確率で本音が混ざっていた。
それが彼女にも分かったのだろう。
は「うむ」と頷いた。
――やった!これで安全は確保できる!
とは大石のおたけびである。
……が、しかし……
「これで晴れて公認だね?」
不二は後ろから手を伸ばし、の首筋に、
ちゅっ
お世辞にも控えめとは言いがたいキスをした。
――風紀が……部活の風紀が乱れて……
大石は蒼白になった。
手塚の偉大さを思い知った。
レベルが一つ上がった。
あるいはここで、誰かがここで出てくればよかったかもしれない。
あきらめろと助言して、手塚に電話をかけるようにすればよかったかもしれない。
もっとも有効そうな、同年代――伴爺か、あるいはよく知ってそうなダンディ榊(ノットお笑い系)にでも連絡を取っていればよかったかもしれない。
しかし、この場には三人しかおらず、必死なが助けを求めるのは、襲いくる不二でなく大石に決まっていて……
「……大石、提案を呑むかわり、コイツをわしの後ろに立たせんよう見張ってくれ」
「はっ……」
「(ぼそ…)成績」
「はい……」と小さく頷くに至った彼を責めることは誰もできないのであった。
「ツレナイなぁ?」
そんなこと、しないよね?――そう続ける不二を止めてやる事も……
大石は気を失うことすら許されず、こくこくと頷いて、静かにコートに戻っていった。
あとでダブルスパートナーに「冗談だよ」と笑い流され、最後の望みまでもが絶たれるのは……この時点では誰も知らない。
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返信 不二周助様
頼むから無茶はしないでくれ。
大石の胃の負担は青学勝利への道にとってもマイナスになるんだぞ?
完璧な状態でコー ――こほん、ちがった、先生に、勝利を届けたいだろう?
俺が戻るまで大人しく前の体制のままにしていてくれないか?
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「……ふふふ、さあ、どうかな?……」
怪しげな声が部室に響きわたる。
結果は……神と大石と……大石が運び込まれることになる医者のみぞ知る。(駄目じゃん。医者って行ってる時点で……)
END
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