【SIDE K・ATOBE】
「待ってろよ」
後一年したら追いついてやる。
そういってから数箇月。
結局自分はこらえ性がないらしい。
あるいは相手があまりにお子様なのだろうか。
「まったか?」と 声をかけようとした相手は……
「ん……」
机につっぷして 熟睡中の模様だ。
「おい、」
「……ん……」
「起きろよ」
いい年して。無防備がすぎねーか?
いい気分を邪魔されて気分をがいしたのか、ねてるくせにしわがよる眉宇。こつんとつついても、反応はない。
「ふう」
しかたねーな。
ちらばった、ペンをケースにしまいこみ、乱雑におかれたかばんと、抱きしめているコート(勝手にもっていった俺のだ、と跡部は気づいた)を引っ張って……
用意を手伝う。
どうせ起きたところで この年上とは思えない適当でずぼらな彼女はしばらくぼーっとしてるだろうから
「け……ぃ……」
――……あ?
横を向いた途端、 名前を呼ばれたかと一瞬思ったが恐らくは気のせいだろう。
向き直る。
「ったく……」
何度「景吾」とよばせようとしても、この幼馴染は……小さい頃のようにはよんでくれたためしがないのだ。
まるで何かを拒否するように。
付き合う、と承諾させたのも無理に(とくにやましいことをした記憶はないが)
そのまま、こうしてなし崩しに……まあ放課後後頭部に偲びこんで、待ち合わせるでもなく一緒に帰宅することまで許されただけでも進歩だが……
それでいてため息が重くはならないのは、
――それはこいつが……
「あ……」
人の気配にやっと気づいたか、「」が身じろぎをした。
焦点の合わない瞳は誘うようで……
――ちっ……
寝ていれば口付けたのに、と検討違いなことを跡部に思わせる(目をあかなければ ここまで誘われもしないくせに)
「風邪ひくぞ?……まってんならまってるで中等部までくればいいじゃねーか。【元生徒会】待遇で部室でも、生徒会室でもあけとくぜ?」
「……職権乱用はしない……。……そもそもけい――…跡部君をまってたわけでもなければ、私はただのおさな…」
「幼馴染か?ならなんだ?……なんで名前でよばねーんだよ?」
「……それは……」
いつもはこれで、軽くドアを叩く程度でひいてきたが 少しだけ強めるように尋ねてみた。
本当は怖いくらい、鼓動が高まっている自分がいる。
「らしくもない」自分に気づくが、まだはっきりしないからか握られたままの自分のコートが……それをぎゅっと握る手が可愛くて、閉じ込めてしまいたくなった。
――【こらえ性がない】…… なるほどな。
本当にそのようだ。
最初から分かっていたのだ、今日が何の日か。
彼女がそれをどう思ってるのかは分からなくても自分は意識していた。
そんなこと悟られたくはないのに、甘い匂いが……許さない。
「――」
いつもは怖がらせないようにセーブしていたのだ。
この臆病であまちゃんで、どうしようもなくガキな……ガキでいたい幼馴染を、とっくに包み込んでいると気づいているのに。だからといって、無理に彼女の心に踏み込まないように、していたのだ。
「好きだって……」
「何をいきなり……」
「何度も」
そうだ。あってからずっと うまれてそばにいてから、再会してからずっと。
気づいてからずっと……
「言ったよな?」
びっくりして目を見開く少女の唇に素早く指先でふれて……
――こっちだって震えてる……
「気付け、馬鹿」
いい加減、その目が「オトコ」をうつしてることに、彼女とて覚悟するべきなのだ。もっとちゃんと抱きしめてやるといっているのだから。
こつんと、おでこを叩いて辞める パターンこそ……もう本当に「やめ」だ。
一度のキスで総て分かるとは言わない。
でもだからこそ……
――ガキの頃から何度も
「してるだろ?」
かすれた声で唇を近づける……
かちっと ドアを叩くように、あやまって歯が触れるような、そんな不器用なキスで、お姫様が目を覚ますのならば、自分は年下でも……子どもっぽい、「らしくない」跡部景吾でもいい。
昔から彼女の王様が自分だった自信もあるのだ
少しづつまた積み重ねておしえればいいだけ。
――お前にあわせてやるから……
だから今はキスを……
「 ……」
「…… ……」
呟く名前に、返されるのは自分の名前か、それとも……
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