【SIDE 日吉】
したくもなく引き受けた図書委員だが、いつの間にか、当番は億劫ではなくなっていた。
相方の(と本人が主張する)先輩は、滝先輩と一緒にいるところを何度も見ている顔見知り。何より仕事はきちっとこなす人ときている。
部活についても理解があるため、いざとなれば無理やりでも俺をコートに送り出してくれる(かえって困るくらいだ……先輩命令とあっては断れない。下克上、か……)
ところで……
――……何故、跡部部長が……?
早く着いたのが幸か不幸か、少し外れた本棚で、先輩と向かい合っていたのは滝さんではなく、部長だった。
この組み合わせは少々どころかかなり意外だ。
一説には非常に仲が悪い。
……本人が言っていたから間違えないだろう。
しかも、その先輩の前に立つ、部長の驚愕の表情ときたら――見ているこちらの方がぎょっとさせられてしまうようなものだ。
思わず「何がそんなに……?」といいかけて、口を紡ぐ。
――滝さん……?あの人はなにやってるんだ……。
原因の「印」に気付いて頭がいたくなった。
鮮やかすぎるほどに色づいた胸元のソレはこの位置からでも見えてしまう程度に(まあそれも跡部部長の表情がなければきづけなかっただろうが)目立って――他の相手を想像させない先輩ならば、根本の問題はその相手、滝先輩にしかないだろう。
他は有り得ない。
レギュラー落ちしようと、何だろうが、あの人とは準レギュのときに世話になって以来、よく話をするし、先輩は先輩で毎週当番で一緒だ。
別れたという話も聞くが、風評としか思えないくらいに……二人の持つ、入り込めない空気というやつを俺は味合わされていた。
とはいえ、部長のリアクションも気になることながらタイをかっちり結びなおして戻ってきた先輩と――何事もなかったように去っていた跡部部長を前には、何もきけず……流石に気になったまま、当番を終え教室に戻った。
そして昼休み……
大方の事情はあるお節介な先輩から聞かされることになる。(半分以上愚痴りにきただけだろうが)
「別れた?」
意外なところで、俺は風評が事実だと知る。
だが、ニュースソースである忍足先輩は、静かに、
「不思議やろ?滝は臆病やで。を跡部にとられたくないんや。それがありえへんと知っとってもな。せやから複雑なことになっとる」
「部長は――」
「多分あれは無意識やなに惹かれとる」
「なら何故強引にもってかないんですか」
「と滝別れさせたんは跡部かもしれんて話や」
初耳だった、何より大切な話題を提出してくれた。
――あの驚愕の間に混じる、気まずそうな空気の原因はそこにあったのか?
とはいえ滝先輩以外という可能性は……ないな。
「滝曰くは跡部がすきだと言い張るんやて」
「……それは」
「ありえへん」と忍足先輩――お節介な滝先輩の「友人」は言う。
も滝もお互いに不安になってるのだ、と。
「滝さんも滝さんでどうせ言葉が足りてないんでしょう。まだ、あの人たちは……」
大方の構造は理解できた。
部長はその状況に耐え切れるのだろうか?
到底想像はできないが、味方もできそうになかった。
「秘める恋ってやつやな。撒き沿いくった跡部はかわいそうやけどそのうち何とかなるやろ」
「ええ」
あの二人でいる図が、自分も好きなのだと遅ればせ気付いてしまったのだ。
――多分部長も……。
不自然そうに、横と、真正面だけはとらなかった自信家の真意が、今日の俺には理解できる気がした。
当番の後迎えに来て、筆談に意地悪そうな顔を見せる滝先輩と、仕返す先輩……その立ち位置にわって入れるとおもったことは、俺とてない。
仄かな憧れがあるとしたら、二人セットであって、一人では到底みることのできない光景へのものなのだから。
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