朝(赤澤SIDE)

 食堂に朝食を食いに降りたら、疲弊しきった顔の観月が先に席についていた。
 トレーを取りに行くことを忘れ、思わず話しかける。

「おい、平気か?顔色悪ぃぞ」

「これくらい問題ありません」

 どうやらマズイ自覚はあるらしい。
 俺は一先ず、そのまま、トレーを受け取りに行った。
 献立は大抵同じ。
 基本的に和洋両方の軽いバイキング形式だ。
 今日の気分でトースト二枚と、目玉焼きにヨーグルト、サラダ、かりかりに焼いたベーコンを三枚持ってきた。
 ついでに、飲み物を忘れてる観月の前にコップを置き、持ってきたオレンジジュースのボトルを傾ける。

「ありがとうございます」

 観月は律儀に返して、コップを手にした。
 ――本当にどうしたんだ?
 よく見れば目の下に隈が出来ている。

「単なる寝不足です」

 タイミングを計ったような説明が帰ってきた。

「途中で適当に抜けて保健室辺りで休みますよ」

「なら、いいけどよ」

 食事の内容はそこまで減らしていなかったから、本当にただの寝不足らしい。
 それ以上の追求をやめて、俺もパンにバターを塗り始めた。
 観月は数分で食事をやめて――体調が悪そうではなかったから、無理に引き止めなかったが。後で食えるようパンを持ってってたみたいだしな――部屋に戻っていった。
 一時間目まではまだ余裕がある。
 俺が三枚目に手を伸ばそうとしたとき、

「どうかした?」

 上から誰か離しかけてきた。
 トレーをおいて横に座る。
 見れば木更津淳だった。
 ――柳沢がきていないところを見ると、ヤツは寝坊か?
 いらぬ部長心が騒ぐ。
 ……「普段から、それくらい気を配ってろ」と観月に文句を言われそうだと思って、黙っておいた。

「観月のヤツが寝不足みたいで――……寝不足……?」

 ん?
 なんだって?
 自分で繰り返すと、訝しげな表情をされた。

「だから、どうしたっていうのさ。赤澤の方がよっぽど可笑しいよ」

「ああ、わりぃ。変な想像しちまった」

「だから一体何だって――」

「いや、昨日、がノート取りに来ててさぁ――おっと、これってオフレコだったっけか……」

「言っちゃったんだからもう無駄だろ?」

 それで――
 急かされると同時に、「ばれたら正直に説明してよ!」と怒るの声を思い出した。
 俺は続きを話す。
 ――……つか、俺……本当、阿呆なこと考えてんなぁ……朝から何、盛ってんだか。

「ああ。観月のところか」

 ――けど、このとおり説明いらずだしな。
 数度あれ?と思ったことはあったが、それでも今まで面と向かって疑ったことはなかった。
 あんまり深く考えなかったと言うかなんと言うか……
 あの二人は悪友みてーな関係だし。

「でも、珍しいね」

「ああ?」

「最近あの二人会ってなかったみたいじゃない?」

「あ、ああ……そういや塾もかなりクラス変わったって言ってたような……ってお前、誤解しないよな?」

「赤澤はしかけたみたいだけどね。しないって。どうせ観月が意地悪言って、やむをえなく来ただけだろう?」

「…………」
 
「で?下世話な想像出来る程度の時間だったってことか」
 ――さすがだよ、お前。に警戒されるわけだ。こりゃ。
 全部あっていた。

「観月だよ?本気であると思ったわけ?」

 嫌味を着け沿えられ、俺は「ちぇっ」と舌打ちしたが、実際安心していた。
 観月とがそんなことになっていたら――俺、そっちはありえねーだろうけど、裕太がのこと好きなのはわかっちまってるし、スキー合宿で裕太が居ない手前……面倒なことになるだろうが。
 
「でも、根詰めすぎるのも問題だよね。僕、観月の様子見てから行くよ」

「そうだな。頼むわ。二年が戻ったときまであの調子だと、元気になった後自分で自分に落ち込むだろ、アイツ」

「だね」

 ヤツにまかせりゃ問題ねーな。
 淳はさっさと観月の部屋に直行したようだった。

「いけねぇ」

 のんびりしてたら、もう一限までそう時間がねーじゃんか。
 俺は慌てて、ヨーグルトをかっ込んだ。



MENU