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「何でここにいるの?」
試験が終った私を待ち構えていたのは間違えなく観月だった。
聖ルドルフ高等部――中等部の隣りの建物だし、休みの日とはいえ寮から距離はさほどないのだから彼がいても可笑しくは無い。
ただし、この時間、見計らったように昇降口に立っていなければの話だ。
「来たかったからですよ」
またも読めない口調で告げられるけれども、私は素直に差し出された手をとることなんて出来なかった。
「駄目」
搾り出した言葉に、
「何故ですか?」
観月の悠長な美声が返る。
はっとして周囲を見たら、案の定、試験に来た他の子たちから注目を浴びていた。
視線が痛い。
――ひとまず移動してよ?
目で訴えるが観月はいつもとは違い、それを許してくれなかった。
手首を捕まれた私はすごく焦ってしまった。
「好きな人がいるの……」
するりと飛び出た自嘲的な声の響き。
自分のものとも思えず、口を噤むが、観月はほぼ同時に反応してくれた。
「知ってます」
その言葉に声を失った。
要になった伝言の紙を握りつぶし――勉強教えてくれてありがとうとか他の色々とか……観月あてに書いたメモだ――私は俯いた。
観月は私の答えを待っている。
落ち着き払った態度で、
「?」
卑怯な呪文まで付け足して――。
――さあ、どうする?
秘密にしますか?
それとも……?
真実あるいは嘘。
言葉にしてしまったことはどちらにせよ、もう取り下げられないのだ。
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