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その後私達はわりと静かにされていた。
ヒソヒソ話はあれどさっきの抱擁に対しての冷やかしはあれど――囁きは私だけのものだ。
不二たちも気を利かせてか、あるいはこれからのファンとの攻防に備えてか、はたまたこっちのテニス部も打ち上げがあるのか……いつの間にか姿を消していた。
私は大人しく観月に手をひかれて――正確には制服の袖口をひっぱられて、とことこと後をついていくことになった。
何も変わっていないと思っていたけれど、歩きながら、途中、
「もう我慢しないでいいから、あんまり意地を張らないで下さい」
後ろを向いたまま告げた観月が優しくて、
視界が滲んだことは内緒だ。
それから照れて「嫌い……」と言いかけた私が、言って欲しいと催促する観月の目に負けて、「嫌いじゃない」としどろもどろに返したことも。
「」
「天邪鬼でごめん」
観月はむっとしてたのにその一言で諦めたように私を引き寄せ、一つだけキスを落とした。
「入学する前には毎日言えるように」
――それは無理だと思う。
でも……
「思うだけじゃ駄目?」
「駄目です」
――意地悪。
本当は、裕太のことが私の中ですっきりしていないことを観月は知ってるに違いない。
打ち上げに連れていかれるのだと聞かされていたから、今日中には言えるようになる予感はあったのだけれど――裕太の性格上黙ってるとは思えず、観月はきっと何かしら無茶なことを裕太にいったのだと予想がつく――そうとも言えず私はただただ「嫌いじゃない」を繰り返した。
握られていた袖口は手に変わったり、私が逃げて離れたり……逆にまた寂しくなって私が観月の腕を掴んだり……まだ安定しなかったけれど、一定の距離以上間が開くことはもうない。歩き難いほどくっつきすぎることも……。
観月の速度にはとっくに慣れているのだ。
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