せんせぇ、あのね

 


「君は悪い子だね」

 にこっと笑ったせんせぇの顔はすごく綺麗で、思わずみとれてしまった。
 
「だって……」

 「だめでしょ、忘れちゃ」って叱られても、なんだか怒られた気がしなくて、ただただうつむくばかり。
 そもそもが図書室の鍵を忘れてしまったのはちょっとした間違えなのに、わざわざ昼休みどころか放課後に呼び出されてるのがわからない。
 ――うーん?
 好きだからそばに行くのはいいこと。
 でも、ここのところ、わざとらしく
「すきでしょ?」
 とかいいながら、めがねをかけるから……
 ――落ち着かない……。
 どきどきしながら、もう一度図書室に向かおうとする。
 だが、くるりと振り向いたら、

「あ」

 がらん。
 すぐ目の前のドアを閉められた。

「ええと……放課後の仕事もしにいかないと?」

「うん。そうだね」

「だったら、そこ、どいていただけませんか?」

「うん」

「………」

 ――うんって……。
 立ちはだかっておいてよく言う。
 文句をいいたいが、少しだけ屈んで、視線を合わされる。
 ――めがね……。
 どうしても気になる青のフレーム。
 目を奪われていると、すぐ前が……

「?!」

 真っ暗。というか……?何というか?
 ――また!何でこうなっちゃうの……
 鼻先に冷たいフレームを戻して、不二せんせぇはにっこりした。
 やっぱり不二先生の笑顔は怖い――とも思う。

、行くんだったら、このめがね、もう一度はずしてみる?」

 胸元に引き寄せて、フレームに指先を触れさせる。
 収まらない動悸を知ってるのだろうか。
 この人は、無茶なことばかり。

「もっともはずしたら、何しちゃうかわからないけどね」

 可愛く言うせんせぇは、それでもいつもより幼く見えて、
 ――少しだけならいいかな。
 メガネに手を……

END

written by MAYMOON

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