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「おはよ」
――遠路ようこそ?かな、この場合。
少し考えている間に、
「おはようだーね」
「おはよう、。試合のオーダーはこないだと同じだって。ただシングルと挟みながらになるから2試合目かな」
お馴染みのダブルスコンビに先に話しかけられてしまった。
「そっちは誰がでるだーね?」
「わかんない。菊丸と不二が組むのかなって何となく状況聞いて思ったんだけど片方、今日休みだしね」
「やっぱり……。見当たらないと思ったら」
「うん、風邪だって。応援しにこいとか言ってた癖にね」
咄嗟に、私が原因で休んだという乾の冗談が(嘘だとわかりつつも)ひっかかってしまい――それを誤魔化すように誘われた事実を持ち出していた。
参ったな、とあっちゃんの方をみて――むしろ明らかに挙動不信なだーねに、失敗を知る。
だーねとは不二のことを告白して以降初めて顔をつきあわせてるから、不二の話題が気まずくても無理はないんだけど……。
「」
あっちゃんはパートナーの動揺に何かを悟ったらしく、ちょっと面白くなさそうな表情をみせた。
「何か不二と――」
「ないよ。味をしめてからかわれてたのも少し前でやんだし、そういえばここ数日あんまり話してないかも」
「……そう」
「ま、まあ良かっただーね。裕太も気負わないですむし、不二と当たれないのは勿体ないけどその組み合わせが崩れればゴールデンペアとぶつかれるかもしれないだーね」
「そうだね」
その場は何とかなった。
でも、なんでか、苦い想いが残る。
――不二がいないのが悪い……
いなくて、ほっとしたくせに、我侭なことを考える。
純粋にあっちゃんたちだけの応援にきたんじゃないと、自覚してしまったから……居たたまれない。
そんなことくらいで怒る二人じゃなくても。
――お見舞い……。
いけないよなぁと思う。
第一そこまで親しくないのも事実なんだ。
「あ、風邪ってこと、裕太は……」
「知らないだーね……」
あちゃーと、横でだーねが頭を抱えた。
確かに、裕太君は兄とあたることを楽しみにしてる節があるからな、と妙に納得。
「まいっただーね……最初ダブルスとシングルス別コートだーね……。気付くとは思うけど……早いところ聞かせた方がいいと思うだーね、一応家族だし……連絡とかはとってないと思うし……」
「そうだね。観月に知らされるのも、観月が知らせるのも……若干マズイかもしれない」
「えーと……」
――……ようするに、私にいけっていうの?
たぶん、そういうことなんだろう。
そして、賭けてもいいが二人とも絶対私が断らないって思ってる……。
裕太君とは、もうあの件以降とっくに仲良しになってるから問題ないし。(どうも彼の思ってたキャラと私が大分ずれてたみたいで、むしろ詐欺?みたいな……扱いされてるような……気さえする……かえって安心なんだけど)
「分かった。伝えておくから練習……んと、試合も、頑張って?」
「了解」
「まかせるだーね」
会話のリズムが戻った。
――もう平気。
やっぱり、ひさびさの(でもないけど)この二人との会話はいいなぁと思う。
ルドルフの空気に慣れきってるんだ。
別に青学テニス部が嫌いとかではなくて、単純に慣れの問題。
今日は、ルドルフサイドにいよう。
そう決めて、シングルス側のコートに向かった。
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