劇場サディズム   予感は君1
【SIDE不二周助】

『憂鬱なら不二にいうんだな。噂の出所はあいつだ』
『滅多に構わない不二が相手にはムキになって付きまとっている』

 事実だから、何もいえなかった。
 はその理由を、裕太の件のせいだと思ってるんだろう。
 解決したからとでもいいたげな素振りで受け流していた。
 けれど……

「はっきりさせた方がいい」

 乾の警告は、に対するものじゃない。
 僕に向けられたものだ。
 去っていくの後ろ姿を見ながら、チームメイトはおもむろに口を開く。

「きいてたんだろう?」

「……まあね」

 本棚の向こう側で問いかける乾に、こっちに来るように促すかにして、目の前の本を手に取った。
 まだから見られる可能性もある。
 そうなるとややこしいのだ。
 意図に気付いて、乾は「お節介だったかな」と少し緊張を緩めた。

「僕のせいなんだろう?」

 ならば、知っておくべきだ、と言外に告げる。
 そう。神埼と、後輩(自惚れじゃなく、僕のファンとやらだろう)との諍いをみたのは、半分以上必然だった。
 乾自身が僕にさり気なく教えてくれたことだからだ。

「木更津とは……付き合ってるわけじゃなさそうだが」

「知らないよ」

 ――全く……。痛いところをついてくれるな。

 フォローに出て行く隙を、自分は兎に角乾に――第三者にすら作らせず、解決してしまう辺りが憎い。
 しかも、こともあろうに、逃げる理由は『木更津淳』だ。
 本人は無意識でも、助けを求める場所が彼というのは面白くない。
 
 ――彼氏っていいたくないのも何となく分かったから、そこは……まあ……いいけど。

 彼女の表情は素直で……思考回路が一度見えてくれば、わりと単純なのだ。
 女の子っぽくない分余計に分かりやすいとすらいえる。

「好き、でもないか」

「さあ……」

 答えながら、乾の中でその確率はかなり高いのだと推測が出来て、その『確かめ算』にほっとする自分がいた。
 同時に、相変わらず性格の悪い自分は、一つ思いついた。

「確かめてみる?」

 木更津と同じように、なりたくない。
 でももしも近づいているのなら……昨日の実感が本当であるなら、嫌われていないだけマシだ。
 ――確かめてどうなるものではなくても気になるんだ……
 ……同時に、危うくば、それを利用して多少でも意識させられればいい。

 ――今更……何を……。

 そうは思っても、自分で考えてた以上にを前にすると、どうにかしたくてしかたのない自分がいた。
 何を言っても受け入れられないと分かる分、無理やりでも許してもらうか、受け入れさせたい。
 どれだけ無茶かわかっていても、自分勝手でも、そう思うから仕方ない。
 乾は、何かいいたそうに口をぱくぱくさせたが、どのみち、自分は浮かんだアイディアを押し通すだろう。

 ――ただ、そうは言ったものの、「がむしゃらになる」なんて格好悪いことはしたくない……。だから……。

 余裕のある素振りで、告げる。

「――確かめさせてあげるよ」

『なんか、腐れ縁の幼馴染みたい……』

 それが本当なのか、どうか。

 ――すくなくとも木更津のポジションにはいかない。

 恐らく、それは望んでいるところとは対極の場所だから。



 目覚めたつもりが、まだ分かりきってない人
 取り合えず、あっちゃんと同じは嫌、と主張。

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