劇場サディズム  【余韻はなく】
【SIDE 不二兄】


 「ねえ、どうして裕太をふったの?」

 それは確かに疑問でもあったのだけれど……あれ?
 ――おかしいな。

「わりと男好きなんだ?」

 するりと口をついてでたのは思ってもみない言葉。
 床に押しつけてる手首は予想よりずっと細い。
 昨日制服から覗いた水色は今日は淡いピンクで、既にはだけたセーラーから、膨らみを強調するように思えた。
 自分は内側からそれを掴んでる。

「やっ……」 

 意識して柔らかい感触を楽しみ、膨らみのうえ更に主張を始めた突起をつまむと、は小さい悲鳴をあげた。
 軽く唇を舐め、歪ませた顔、その輪郭をキスで埋める。
 舌を絡ませないのは声をきくためだったけど、蒸気した表情に誘われる。端をほぐし、少しだけ開かせたそこに素早く潜り込ませた。ゆっくり羊歯をなぞらえ、後退できないよう追い詰めた内側で舌を捕らえる。

「……っ」

 微かな熱さを逃すよう、加速するよう夢中に絡めれば、乾いてしかたなった喉を飲み下しにくい液体が満たし――

「んっ」

 必死に閉じた目から出た涙さえ、欲するようになる。
 俺の身体の下で、柔らかい女の子は「ごめん」とうわ言のように囁いてる。

「何が?」

 嗜虐心が刺激される。
 乱れて意味をなさなくなったスカートをたくしあげ、自分の身体を滑り込ませたせいで閉じられなくなった脚をなでる。
 徐々に付け根に指先をはわせると

「やだ、やだよ」

 抵抗が増した。

「黙ってて」

 裂け目に指を押しつけ、半分涙だらけになった顔(でもそこまで不細工でもないからむかつく)を舐めるようにみた。
 ……と、同時に水音と感触が、下着が意味を成さない状態になってることを伝えてくる。
 刹那、なぜかどうしようもない衝動に駆られた。
 ―― 早 く 入 っ て し ま い た い ――
 首筋に噛み付き、抱き寄せる。

 ――密着してしまった方が逃れにくい。

 甘ったるい匂いとぬちょぬちょ手首まで汚れるのと……さまざまなことが合間って気持ち悪い。

 ――吐き気がする。

 「裕太君、ごめん、裕太君ごめん」っていいつづけてる神崎に、へどが出る。

「違うよ――」

 ――僕に謝るべきなんじゃない?

 肌のべたつきとか――しなやかというより吸い付いて解け混みそうな感覚が――その温みが気持ち悪い。
 許せないから辱めた。
 覆うものがなくなり、肩を上下させる少女の、右脚を更に開かせ、かかえあげ……

「――っ!!」

 何度かずらして入口を探しながら無理やり腰をスライドさせる。
 飲み込むよう誘う卑猥な部分はのイヤらしさそのもので……耐え切れないでついた息まで霞がかっているようだ。
 生ぬるくて、ただ熱くて……突き動かせばよくなる。わかるから、何とか動作を繰り返す。
 泣いてるのを楽しんでるのにも、何となく納得がいく。
 その方がぬめりが大きくなるし、途中一度進めなくなったことから経験がないとわかるものの……

「意外とっ、余裕?みたいだ――」

 この女は投げ掛けられる冷たさに反応しすぎる。
 いちいち逃れにかかるせいで摩擦が大きくなり、まるで自分から男を楽しみにかかっているみたい……
 柔らかすぎる、しめった受け皿はどんどん匂いを強くし、やがて――

「くっ」


 *    *  *  *  *  *  *
 匂いは当然だった――。


「嘘だろ……」
 勘弁してほしい。
 布団はともかく下は生理現象で大変なことになってるだろう。――むしろうっすらとした射精感の名残で納まってるからこそ質が悪い。

 ――こんなことさせるからは嫌なんだ……

 とふと思うがそれも違うことに気付く。
 ついでに「寄りによって何で彼女で」、とも、思わなかった。
 男だから当たり前に行為の快楽には惹かれるんだろうが、実際にはわりとそういうのに淡泊で――正直嫌悪の対象にすらなるこの自分が。

「う……」 

 ――気持ち悪い……。

 とりあえずこの篭った臭いをどうにかしなければ。
 ベッドから立ち上がり窓を開け放つ。
 ついでに見た時計の表示は朝の5時半。

 ――朝練まではたっぷりあるからシャワーでも浴びて来るか。

  他のクラスメートをだしにしてしまたたならまだしも彼女であるのは許しがたいが、今は考えて変に意識するよりきっぱり忘れるべきだ。

 結局どうということのない一日が始まる。
 練習前英二に

「あれ?なんか不二、顔色が悪いけど平気?」

 だのと心配されて、

「朝早かったからだれてるだけだよ」

 簡単に誤魔化したのくらいで、特に変わったこともなかった。
 いつもどおり、何もないはずだった。教室で彼女をみても。





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