劇場サディズム  ――余暇はなく――
【SIDE 】 

「ごめんなさい」

「俺の方こそ……なんかよく知らないのに突然変なこといって……」

少しづつ知っていけばいい、と言えるタイプなら良かったのだが、生憎自分は人見知りで――慣れないうちに意識させられれば、そこから先内側には入っていけなくなってしまう。
 彼に失点があるなら、時を見計らうことすら出来なかったその「ひたむきさ」だ。

「試しに付き合う先輩って、俺もなんか違うかなとか気付いてたっていうか……」

「……うん」

 でも、そのまっすぐな目は好みではなくとも、この後輩の最大の魅力だとも思う。
 ――《それでも恋は直感だからね》――
 あっちゃんの言葉が思い出される。

 ――裕太君は本当いい子だよなあ。

「私には勿体ない、よ」

 するりと口をついて出たのは心底からの答え。

「それ、断るときの決まり文句じゃ」

「あ、そか」

 とぼけた返事に、笑われてしまった。
 
「やっぱ、話してみると意外とギャップあるなあ」

 その後裕太君はさらりと失礼なことを言ったが、なんだか苦笑まじりだったから、立て続けて告げられた「素直なのに分かりにくいとか勘弁願います」というありがたい忠告は、甘んじてうけておいた。

*      *      *      *      *
「で?」

「簡単に謝ってそれでお終い。あ、ただ『あっちゃんを好きか』聞かれてちょっと吃驚した」

 ――そんなんじゃないんだけどなぁ。

「……ふう。仕方ないダーネ。勘違いしたくなるような空気も……なんていうかこう……」

「……ええと、これだけ近くにいても、今でもそう見えたりする?」

 裕太の一件について直の先輩に言ってしまうのはどうだろうと思ったのだが、結局こうして私はスクール後のだーねを捕まえた。
 話した理由は、単純に今後練習に暫く来難いとしってもらうためだ(さすがにちょっとは距離をおくべき。こんなセオリーくらい、私でもわかる)
 そして二つ目が、これだった。
 
 ――なんであっちゃんと勘違いされるんだろう?

 幼馴染なんてありふれてるし、確かに私はあっちゃんが大切だけれど身内意識みたいなものだ。
 当然のこと、当然の感情。
 が、どうしてこうも伝わらないのかふと気になったのだ。
 彼は身内であって、恋愛対象じゃないと思う。上手くいえないし、定義しにくいが安心感が違う(好きだから安心するというより、男だという意識があんまりないようなきがする。お兄ちゃんとか弟みたいな?)

 ――まさか、だーねもそう思ってたりしないよね?
 気になったのは、一般よりもそっちの答えだったのかもしれない(だーねは本当友人としてお気に入りなのだ。きっとあっちゃんもしってるとおもうけどね)

「うーん……ちょっとちがうってことは分かるだーね。ただ何となくの好きな空気感は淳の影響が大きいような……」

「ふうん。そっかな……」

 誤解はないらしいが、心外なことが一つ。
 ――確かにあっちゃんは好きだよ?でも……
 あの人の性格のゆがみを微妙に知ってるのも私だったりする。(亮ちゃんもだけど、ちょっと意地悪だったり、済ました顔してからかうのが好きだったりする……似たもの同士め……)

「少なくともは、裕太みたいな弟タイプじゃなくて、淳みたいな方がすきだーね」

「えーと……?あっちゃんは双子だから、他に比べられないとおもうよ?」

「ああ。だから多分、兄でもないだーね」

「一人っ子?」

 ――……というか裕太君って弟キャラだとは思ってたけど本当に弟だったのか。
 密かにその方が気になってきたのだが……。
 それを告げると、だーねは文字通り目を見張った。(いいリアクションだ。……わかりやすくて)

「は?何いってるだーね。そっちの学校だーね」

「え?」

 ――……そっちの学校?
 ……つまり、青学のことか。
 とすると、裕太君の血縁関係(兄か姉)がうちの学校にいることになる。

 ――あれ?裕太君の苗字って……
 気にしないで通り過ぎてきたが、聞いたような記憶も……
 
 一生懸命思い出そうと下をむく。
 首をかしげて数秒、だーねが何か言おうと息を吸った頃のことだった。 

「同じクラスだろ?」

「あっちゃん」「淳」

 見上げれば、案の定見慣れた従兄弟の顔があって、

「あんまり親しくないみたいだから敢えて話には出てこなかっただけだと思ってたんだけど……。あ、観月が戻ってきたみたい」

 更に奥の方からは、赤澤君が合図を出していた。
 どうやらあっちゃんには少し前から話をきかれていたらしい(恥ずかしい……)
 ……しかし、それもここまで。
 スクールがある日は皆思い思い残って練習をし、適当に解散するのだが(裕太君はどうか分からないが、だーねは私が帰る直前のところをとっ捕まえた)週に数回、上級生数名でミーティングをするときく。
 示し合わせて、というより部長とマネージャーの気まぐれらしいが、赤澤君が来ているのをみると多分今日がその日なのだろう。

「淳、急いでいくだーね」

は?まってる?裕太もまだいるけど」

「……あ、いいや。今日は」

 ――宿題があるとか、風が強いとか以前に……さすがに―
 私はそこまで常識が無くもなければ、面の皮も厚くない。

「まったく、淳はデリカシーがないだーね。、こっちでフォローはしておけば、またそのうち来られると思うんだ。いいだーね?」

「うん」

 当然、今日は帰ります。

 宣言して、あっちゃんに軽く手を振った。
 だーねには感謝をしてぺこり。
 二人とも急いでいて……また優しいからいつもどおりだった。
 そう……だから聞きそびれてしまったのだ。
 そのときは大した話でもなかったが、聞くべきだったその話題……裕太君の兄弟のことを。

 
                   TO BE CONTINUED 不二SIDE       


まだまだ……序盤が長くてすみません。
 次から色々まわってくると思います……
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