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「寒い」
宍戸は呟いた。
冬真っ只中。
さりとて試合は待ったなし。
部活は今日も朝からあった。
午後からまた練習試合だが、その合間をぬって、女子が練習をするらしく、休憩中だ。
動かなくなると汗のせいで急に温度が下がる。上着をきて、部室から出ると吹雪かと思うほどの冷風が吹きつけてきたのは確かに堪えた。
「文句多いですよ、宍戸さん」
長太郎は横から連呼してはがくがく震える宍戸(寒いの苦手)を怪訝そうに見た。
「文句じゃねぇ。事実だろ」
「言わないでください」
余計寒くなる――と呟いているところを見ると、どうやら長太郎も寒さにはあまり強くないらしい。
よく見れば、コートにマフラーのフル装備。
「でも寒いよな」
「日吉まで……」
横であっさりとラケットを持ちながら涼しい顔で言う日吉(道場通いは流石に鍛えられているらしい)を睨みつけて、長太郎は手袋に手を入れた。
「なあ何かかって来いよ?」
休憩は三十分。
食べに出かけるには時間がない。
正しい提案ではあったが、簡単にぱしらされる後輩ではない。
「遠慮しますよ」
無言で歩き出す日吉と、しっかり断る長太郎。
「ちっ」としたうちをしながらも、宍戸が納得したように頷いたそのとき……
「あ、いたいた!ちょた〜!コンビニいってきて」
マネージャー兼長太郎の恋人であるが駆けよってきた。
「やだ」
みもふたもなく却下する。
意外に冷たい長太郎である。
しかも実のところ、は三年で……先輩であるが、丁寧な言葉ですらない。
宍戸以下の扱いか?
日吉が関心していると、案の定、
「冷たいわね」
はむくれた。
だが、更に
「冷たくていい」
「…………」
俺のまねか?と思わず、日吉は自分を顧みてしまう。
流石に宍戸も少々驚いた顔をしていたが、さっき俺にも断ってたしなぁ……気安さが冷たくしてんだろ、と自分を納得させていた。
しかしマネージャーも流石は(?)氷帝のマネージャー。
こんなことでへこたれないどころか、
「じゃあんたに犯されたってかいてしぬわよ」
あっさりとんでもないことを口にする。
おいおい……
呆れる日吉。
宍戸も、実は彼女とは同じクラスであるが、まさかこんな女だったとは……と認識を改めかけていた。
――だが……
「死ね」
「!!!」
これにはショックを隠し切れず、もう口を馬鹿みたいにあけて……。
「……はげしいな」
と、しし殿はつっこみをいれた。(普段の宍戸ではなく、もう馬鹿殿みたいなほうけた表情で――だからしし殿。獅子殿なんて格好いいもんじゃない。以上、閑話休題。)
「俺は普段の行動がいいですからね、疑われるのは貴女でしょ?たぶらかしたって」
「……ちょた最悪」
今度ばかりはの方に同情を捧げたくなった二人である。
態度が悪いのも長太郎が原因かと、理解した宍戸はようやく立ち直って日吉を見る。
「外道だな」
普段異性に冷たい日吉ですらそうおもうらしい。
やはりそうか――宍戸は落ち着いた。
「じゃあおごってあげるからこない?」
彼女はなれているらしく(大問題なのだが、平気らしい)新たに提案を重ねる。
「……俺もつれてくきだったんですか?」
「当然。一緒にいたいから誘ったわけだし」
可愛げに笑うマネージャーだが、クラスメイトでもあるわけでマネージャーでもあるわけで――宍戸は何となく裏の声が聞こえて、「似たもの同志め」と呟く。
ふふふ、これで決まりね。
とでも、いいたそうな似非可愛い女マネには日吉も呆れているが、それ以上に、
「いきますよ」
どうせ、このヒトは……とため息をわざとはきながらもすたすたを学園裏のコンビニに歩き出す長太郎に驚かされている。
「やったー!」
は今度こそ本当に喜んで嬉しそうにその横に従った。
こうなると、後輩も先輩もあったもんじゃない。
「どうなってんだあれ?なあ」
取り残された宍戸は日吉に聞いた。
「さあ。激しくわかりにくい利害的な愛のけっか?ですか」
あいつ、本気で寒そうだったし――と日吉。
「……日本語おかしいなお前」
「下剋上」
「だからおかしいっての」と突っ込む声は聞こえないようで、日吉は「さて、じゃ俺は購買行きますけど……あいつらとかぶるのやだし。先輩どうします?」と続ける。
「おう、俺も行くぜ」
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「……で?これも買ってくださいね」
全ての買い物を終え――食べ物とついでに監督に頼まれた品物色々を次々と選んだところで、長太郎はさり気なくカゴにゴムを放り込んだ。
用途は一つしかない。これから行くジャングルで生き残る為、水を入れる道具にするから――なんてことはない。
「最悪」
「制服がいいんでしょ?」
切り返しが早かった。
「死ね」
は先ほどの長太郎の台詞を借りたが、時既に遅し。
「だまってヤられんのは 貴女の方でしょ。はい荷物」
持ちますよっとひきうけて、レジにて会計をあっさり済ませる長太郎。
金だけはあるからと精算を引き受けて、その手をとる。
「………こいつ最悪」
それ以上、その場で痴話げんか(に見られるだろう哀しいかな)を続けるわけにも行かず、コンビニを出て、は呟く。
なんでこんなやつ好きになったのよ。
ろくでもないのよ!と付き合って数日、跡部に告白したら「あの」跡部に「あいつはなー」と納得されてしまうような相手なのだ。
その相手は飄々と言い返す。
「貴女の趣味もね」
制服プレイすきなくせに。
その呟きを不運にも耳にしたのはではなく、休憩ついでにコンビニに走ってきて、長太郎に声をかけかけていた忍足であった。
硬直する忍足は声をかけそこね、の「長太郎が好きなのなんてSMでしょ!」という応戦とこちらに気づいていながら、更にの視線をこちらに向けるようにわざとらしく
「羞恥プレイもね」
笑った後輩に絶句して、ダッシュバックしたという。 |