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 今時流行らない対決。  その2


【SIDE

 あのときの彼と出会ってしまったのは……またしても偶然だった。
 頼まれた買い物を終えて、通りかかった土手でトレーニングをしていた彼を見つけたのだ。
 何もなかったように通り過ぎようとし――事実そうする前に、近寄っていた。
 そして、「何かあったの?」と声をかけたのはこちらだ。
 ――でも……

「放っておけ」

「そんな言い方……」

 通りすがりの人間であることはわかってる
 でもそもそも最初に手を……腕を掴んだのは彼だ。
 ヒドイと、抗議に顔をあげたときのことだった。

「手塚が心配する」

 情けないほど……少しだけ困って頭をかきながら言うことに、何だか毒気がぬかれてしまった。

「ライバルに対して寛容でも、ほれた女については落ち着いてなどいられないだろう」

「別につきあってるわけじゃ……」

「……そう、か。だが、……これ以上お前――君に……迷惑をかけたくない」

「……

「?」

でいいよ」

「ああ……」

 なるほど、と真田は頷いている。
 おかしなひと
 何でそんなに自分を心配するんだろう。

 ――私とまちがえたひとのせいかな?

 ふとおもうが、真田にはきけようもなかった(あれだけ取り乱していたのだ)
 だが真田は

「人違いをしてすまなかった。あまりに……従妹ににていた」

「え?」

 よりによって従妹?身内ではないか。
 好きだったの?といいたくもあるが、そういう様子ではない。
 ―−だってそんな……優しい……
 顔をする。まるで妹へのものだ。

「俺の後をついてきて、文句ばかりだったが……もう……」

「え、なくなったの……」

 おもわず、失礼とおもってもくちをついてでてしまった声。
 でも……

「?」

 様子がおかしい。

「いや、単純に……彼氏ができてな……」

「は?」

 まさか、である。
 そんなことくらいで……といえる空気ではなかった。

 ――シスコン?

 いやまさか……

「離れていっただけならよかったんだが……喧嘩をした。ヒドイ喧嘩だ。それから……連絡がとれなくなって……」

「えーと……」

 縁をきられてしまったんだ……と凹む真田をみていると、なんだかばかばかしくなってきた。
 ただ、本気で何かをいつくしむような瞳には、妙にきにかかるものがある。

「好きだったんじゃない……の?」

「……かもしれんな。だがそういうのとも違う……あれは……俺の許婚だったから……義務感があった。それを思い起こさせられて……」

 ――どうしよう。
 気まずいとはこのことを言う。
 ひょんな展開から、軽くなったと思えばまたこれだ。

 ――なんてジェットコースターなのよ……

 手塚の抜けてるのとも少し違うのは、「許婚」などという古風な事が平気で出てしまう家柄のせいなのかもしれない。

「義務ではないと思いながらも俺は、どこかで彼女を好かねばと思っていたらしい。
 ――結局、そういう自分を知って恥ずかしくなってな……。常々謝りたいと思っている……」

 そこでため息を落とす。
 真田は生真面目すぎるらしい。小さい頃のちょっとした両親の思いつきに踊らされてるのでは?と思うが、その真剣さには口を挟ませない何かがあった。

「でも、会えない?」

「会おうとすること自体が彼女を幸せから引き離すかもしれないなら……この罪悪感を抱えていることが俺の使命だと思った。それだけのことだ」

「なのに、私が似てたから?」

「いいや……。似てなどいないな。ただ……」

 それから真田はペットボトルに口をつけた。
 なんだろう?
 言葉をいいよどんで、「なんでもない」といわれる予想がつくだけに、どうしても納得がいかない想いがする。

「ねえ、話して?」

 思わず口走った私は、いつになく大胆になっていたんだとおもう。
 それはこれだけ叔父さんみたいに年取った顔のくせ、真田があまりにおさなくて……手塚とは違う意味で放っておけなくなってしまったからだ。
 
「手塚に…ひかれた手を見て……急にな」

 思わず手が出ていた……のだと、彼は少しだけ顔を赤くした。
 それは免疫がない自体への焦りで、私へのものじゃないとわかっていたけれど。

「だから手塚とはつきあってないんだって」
 と、何故だか思わず否定の言葉がでてきたのだ。

 真田はただ苦笑して、立ち上がり、ついでとばかりに頭をぽんっと撫でた。
「すまん……くせで」と釈明する彼に、妙にあつくなる頬(免疫がないんだって!)をごまかしながら、並ぶ。

「送る」

 ごく自然に、否定を許さず言う真田には、もう嫌悪も哀れみも感じない。
 ただ「不器用だなぁ」と思うだけだ。
 それから、なんとなく口にしてしまっていた。
 はっとして口をふさぐが、もう時はすでにおそし。

「スパイだとは思われないとはおもうが……いいのか?」

 真剣にこちらを案じてくれるのがわかる真っ直ぐな視線は、今更の否定を妨げる。
 少しだけ嬉しそうでいて、困ったように帽子wのつばを下げているのは……年相応の青少年だった。
 手塚よりもナイーブな方かもしれない。
 なんとなく、何となくが積み重なって直感がそういう。
 傷つけたらとおもうのは、こないだの泣きそうな表情をみてしまったからだろう。
 ただの同級生だったら 同じ学校だったらここまで気にはならないのに。

 ――深みにはまってるみたいじゃない……

 一歩たちどまった私をふりむいて、ゆっくりまっててくれる仕草は、手塚にもにて……ただ手塚とは全く違うのだ。
 不器用で普段しないだろうことのわかる、そんな戸惑いを感じて……

 ――特別にしてくれている?

 そんな気分にさせる。
「無理はしなくていいのだが」とまた苦笑をうかべよとして……視線を落とす真田をほうっておけるはずがない

「いくよ」

 うん。いってもいい。
 一度くらいなら。
 そういうつもりで、告げれば、頷いて(照れてるとみた……悔しいがそれがわかる……)少し歩調をまた速めてしまう、きのきかなさ、不器用さに。
 仕方ないなと笑みがこぼれた。



事情が色々分かる話。いかにも続きますね……これ
でも、続きかくか不明なのでこそっと言うと、これ…真田落ちです。

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