◇ マジに考えると恋愛になれない ◇
 友情でいいじゃん?
 恋愛って面倒で汚いし。
 あー。
 でも好きなんだよ。
 馬鹿。
 大好き。

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 キンコ〜ン

 チャイムと同時に飛び出した。
 すぐに階段を下りる。

「日吉」

 一学年下の教室にいって、素早く拉致。
 どうせ昼休みだから問題ないし。

「またですか……今度は何です?先輩」

 嫌そうな顔して、日吉はこっちによってきた。

「(小声)長太郎が来る前に、急いで!」

 日吉の首根っこを文字通り引っ張って、「頼む」と真剣に手を合わせた。

「食堂でBランチおごるから」

「別にいいですよ」

 ともかく付き合いのいい後輩(には一見思えないところがミソ)がいると助かる。

「でも、私のせいで日吉浮くじゃん?」

 そうだよな。
 一応、異性で、しかも昔らから人気とは別の場所で有名人だからさ。
 まあ中等部は中等部で編入組だったし、そこであった小学校の友達以外昔の私なんて知らないから、今有名なのは純粋に成績と、委員会のせいなんだけど。
 悪くはないが面倒だわな。
 純粋にでかいせいもある。
 そこまではなくても私の身長と髪の長さは平均を優に上回ってるし。

「今更浮かないですって。んなこと気にする男いないでしょ?色々聞かれはしますが、事実無根ですし」

 事実無根っていわれると寂しいな。
 私はこいつが結構好きなんだけど?

「私は、嫌いじゃないけど?」

 ちょっと気分可愛くなりたいので言ってみた。
 まあお見通しなのだろうが。

「……滝さんに言いつけますよ?」

 本気なんだけどな、半分。
 取り合えず謝る。

「すみません」

 念のため滝とは付き合ってるんじゃないよ?
 親友です。
 すっかり。
 もう男も女もない。
 滝は知ってるしね。
 だからこそ、怖いのです。
 滝、怒らせたくない。

「むしろ、浮かないように≪鳳≫を呼ぶのも手ですが?」

「やめて!」

 食堂に入りながら真面目に日吉を拝んだ。
 こちらも付き合ってなどいない。
 誤解云々じゃない。
 日吉がわざと鳳を引き合いに出した理由。

 私は大嫌いなんだ、あの「白さ」「さわやかさ」を売りにした後輩が!!

「ふう。冗談です。なんでそんなに嫌いなんですか?」

「日吉、敬語やめい。面倒」

「答えて下さい」

 うーん昔色々あったのよ。あの手の後輩。
 無駄に懐かれて面倒な目を見てきた私は敬遠している。
 いい子だと思うが。

 いいあぐねたら、日吉は「いいです」と答えた。

「大体予想ついたんで」

 つかないでよ。
 勝手に。

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 食堂は混んでいた。
 席を確保してから、食券に並ぼうとすると日吉がこっちに何か寄越した。

「あれ?買っておいてくれたの?」

「どうせ来ると思って」

「ありがと」

 素直に受け取る。
 Bラン(チ)だ!
 値段分を払って、そのまま私は日吉の後について、コーナーに並んだ。
 数分まつと、順番がきて、お盆を受け取る。
 席について「いただきます」と呟いてから、ふと思った。

「あれ?なんで二人なんだ?」

「そういえば滝さん来ませんね」

 別に滝と日吉がスッごく仲良しという話もきかないが私のせいで二人一緒というパターンが多い。大抵はそこにガックンが加わる。
 忍足がいるときは私は行かないので、滝と岳人と忍足で食べてる。

「あ……」

 来てるのか、忍足が。
 日吉には分からないようにしているつもりだ。
 だから、伝わっている情報はたぶん、私が忍足が嫌いだということだけ。

「俺としてはどっちでもいいですが、噂されてまた面倒になるのはそっちじゃないんですか?さん」

「名前呼びはやめい。嫌いなんだって」

「逆でしょ?知ってます」

「滝だな。滝が言ったな……」

先輩の場合分かり易すぎだから」

 一理ある。
 だが、基本としてポーカーフェイスだと思われてるんだが?

「なんでこんな人が分からないのか謎ですね」

 失礼だ、こいつ。

「なら近づかなくてもいいです」

「……だって……。話聞いてよ」

「はいはい」

「跡部の横暴が……うちの委員会の予算削りやがったのよ。でもって抗議にいったらなんていったと思う?俺がやったんじゃねーって……何様?あの男、関わりがなくてよかったわ。向こうも名前くらいしかこっちのこと知らないしね……それと………」

 と、たわいもない話で、私たちはBランチを制覇した。
 本当の狙いは何かと聞かれると困るが、日吉といるのが楽しいのだ。
 そういうことでいいじゃない?
 わいわいがやがや話しながら
 食べ終わったので、移動することにした。
 食堂は五月蝿い。
 狙いは図書館。
 図書室といわず、氷帝学園の図書室は図書館という。
 私の知られる委員会活動とはここのこと。
 乙女の夢みる大人しい図書委員ではなく、カウンターで何でも知ってるけど無駄に迫力のある図書委員。長でないところがポイント、というのが周りの意見だ。

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「職権乱用」

「いいでしょ?」

 書庫を貸しきりにして、私は日吉に勉強を教える。
 試験期間だからだ。
 そのかわり、私は日吉に滝のことを聞く。
 なんで?
 いやぁ、無理やり親友にしちゃったんでさ……それなりに不安だったりするのよ。
 いい友達だけど、ここんとこ元気ないしね。
 レギュラー落ちしたときも何も言ってこなかったが、荒れてたのを分かるだけに、今も何考えてるかわからなくて怖い。

  「本当に好きですね」

と、最初日吉に頼んだら(確か図書委員のとき、たまたま資料集め手伝ってあげた交換条件だったんだけど)嫌味を言われてしまった。
 でも、私は答えた。

「うん。好きだよ。一番の友達だもん」

 含みないから、男女間に友情が成立しない派には分かりづらいだろうけどね。
 というか、実際滝には私が人目ぼれのごとくくっついていって……
 去年同じクラスだったからさ。
 それで、ゲットしたのですよ。
 友人として。
 くっついてくうちに馴れ合いがすぎて、もう付き合う付き合わない以前に違うよね?というパターン。
 でも、今も本当に大切な友なので、それから私は滝に見透かされてるので……。
 本当は滝、私が日吉のそばにいるのもよく思ってないんだよ?
 日吉にはいえないから心の中で呟いてみた。

「日吉もだよ」

「……嘘つくなら向こう行ってください」

「嘘です」

 半分本気だけれど。
 これが日常。
 でも、そろそろ限界かな?
 日吉が好きだ。
 好きになりすぎて辛い。
 恋愛じゃなくて……。

「ここはね、アイデンティティを持ち出せば点数取れるのよ。古文得意なんでしょ?現代文は?なぜ感想文だけ苦手かな?」

 テストの予想をしながら、日吉の方を見た。
 盗み見た顔は間違えなく好みのタイプだ。
 この系統の綺麗な日本顔。
 滝もだけれど、好きだと思う。

「で?こっちはどうするんですか?」

「ああ、次ね。作者本人の生涯と重ねるの。暗記は得意でしょ?」

「ええ」

「だったら分かるよね、大体。それで八割はいけると思う」

「………なるほど」

 で?と日吉は続けた。

「狙いはなんなんですか?」

 私は即答した。

「日吉がすきなの」

 そう。

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「それで結局逃げてきたんだ?」

 五時間目の授業は自習だったので、私はそのまま図書館にいた。
 滝が来て言う。
 さっきまで日吉がいたところで。
 どうやら滝のクラスも自習になったらしい。

 え?……滝のクラス?

「……それより、滝だけ?」

「馬鹿だね。確認する方が重要ってことがどんなことか、は分かってないだろ?」

「あ……」

 日吉のことよりももっと先に気にしていること。
 滝のこととも違う。
 それは……

「嫌いなのよ。近づきたくない。……もうやだ……」

「本当に?近づいたことあった?」

「……昔からの知り合いに似てる」

「例の幼馴染?」

「そう」

 すっごく好きな人だ。
 正確にはだった、がつく。過去形。

「だから嫌なの?」

「ちがう。関係なくって……。私、会ってるよ、忍足に」

「やっぱり」

 滝の訳知り顔にはもう飽きたのだ。
 というか、それがいやなので、私は滝さえ避けるようになっていたのだ。
 気づいてるだろうな。この人。

は忍足がすきなんだろ?」

「…………」

 答えられません。
 嫌いというか微妙なんです。
 関係としても、向こうはどう思ってんだか知らないけど、何となく近づいたらまずいことになりそうで……いや、あちらさんもてるけどね。
 そういうのとはまた違った次元で、よくない気がする。
 あくまで主観だから問題ないんだが。

「日吉、怒るよ?」

「怒らないよ、日吉も分かってるから……」

「最悪だね」

「ありがと…」

 滝の悪口が心地いいよ。

  「でもね、本当に日吉も好きなんだよ?」

 滝が笑う。

「俺を好きなのと同じように、だろ?」

「そう」

 他には渡したくないし、大切な友達。
 ついでに少しだけ甘えたい。

「で?何ていわれたの?日吉には」

「…………って……言われた」

 滝は凍った。

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「知ってます」

と、日吉は言った。

「でも違うでしょう?」と。

 続けて出た言葉の痛いこと痛いこと。

「忍足さんが好きなら素直に言えばいいでしょう?別に嫌いじゃないだろうし、うまくいけば付き合える。誰でもいいんならそうするだろうし、あの人、女いませんよ?」

「……好きじゃない。死ぬほど憎いだけ。なんでか頭をちらちらして、イライラする」

 日吉は滝みたいにポンッと肩を叩いてはくれないが、そうされるとプライドの高い私が余計憤るとうまくわかっているようで、小憎たらしい顔でわざといったんだ。

「真剣にすきなのは分かったから、その気持ちは受け取るけど、付き合うわけじゃないし変わんないのに言っても無駄だろ?」

 と。
 男の子の顔だった。

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 全て話しおえると滝はため息をついた。
 滝が凍った理由が理由なので、私もうなだれた。

「やるねー……俺と同じこと言ってる」

「うん」

 滝には告白でなく、思いつめて泣きそうになっていたとき普通に「好きだよ」といっただけだ。愛の意味をこめたものでもなく、はずみででた真実で、そういうことをあっさり言ってしまう私を知らなかったはずの彼は驚いたが、さっと表情を見て取っていったのだ。

「なんで、素直なのに、忍足相手だと駄目になっちゃうかな?」

 滝さん、それ、さっき日吉に言われました。
 ……結局このタイプの人間は恋にならないから、安心しているのだ。
 気がついた私は愕然とするだけ。

「滝、明日、忍足いなかったら一緒にお弁当たべよ?」

「学食だろ?」

「作ってくる」

「やめておいた方がいいと思うよ?また外野が五月蝿い。落ち着いて≪友達≫できないだろ?」

「じゃ、お菓子」

 感謝を込めて。
 告げると、滝はやっぱりあの見透かした目で、

「もらってやってもいい。日吉にもね」

と笑って、その後、すかさず

「忍足がいても……岳人が不審がるから、偶には一緒に食べよう?」

「忍足にはお菓子あげない。それに、その面子じゃ日吉が困るじゃん?」

「日吉は明日ミーティング呼び出し。放課後部活んとき渡しとくから諦めて」

 忍足と食事……いや未定だけど……。
 うー
 低く唸っていたら、滝に笑われてしまった。

  「なんでだろうね?普通、好きな人の友人って利用するとこじゃないの?女的に」

「いつもそれで苦労してる?」

「俺は話しかけづらいらしいよ?」

「それもそうか」

「失礼。……でもは反対だよね。日吉と友達になったのだって偶然でしょ。実は?」

「……ええ」

   そう。
 滝のこと持ちかけたのも偶然。
 友達として「タイプ」だったのよ。
 好みの……。

「馬鹿だ。だから、俺は橋渡しはしないけど、無理やりでも素直なことさせてみたくなるわけ」

 うん、しばらくやっぱり私「お友達」でいいよ。
 つーか友達だけで。

 言ったら、「阿呆。俺らが困るだろ?」と小突かれ、

「しばらくはいいけど?」

と、お許しを貰った。
 日吉もきっと同じようなこといいそう。

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 友情よりも愛情といいますが、
 私はしばらく「友情」をとります。

 せめて愛情を捧げる人に友情してろよと友人につっこまれたけど。

ぼやき
  さすがヒロインのモデルがモデル。意味が不明。
  ともかく友情に乾杯したい時期もあるってことで。

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