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「それで結局」
と滝は言った
「誰がすきなの?」
まるでヒロインじゃん?(そうなんだけど)
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今日は自習がなかった。
さぼる趣味はそもそもなかった。
だから部活の前に少し……珍しく滝は私を訪ねた。
忍足のことが好きだとばればれな私に、滝がこうして(↑)顔を歪める理由は分かる。
そりゃ、毎度のことながら、辛くなるごとに日吉を頼ったり、日吉に飛びついたり、日吉と誤解されそうなこと(一方的だけど)してたら……ね?
けれど私には、それ以上に分かってるのだ。
滝はその理由なんぞ、お見通しだって。
だから、その言葉は私を諌めてのことなんだって。
「知ってるんでしょ?」
「開き直るねー」
「開き直ってなんてない。……私がすきなのは幼馴染」
といいつつも知ってる。
未練は既に薄れてて……。
私は彼に似てるという理由を振りかざしては忍足を追っていた。
気づけば泥沼。
忍足を見ては彼を想い、彼を想っては忍足を憎む。
どっち?と聞きたいのは私。
答えを知ってるのも私。
そもそもね、結構前に会ってるんだよ、私と忍足は。
最初見たときから忍足を避けていたのは、予感じゃなくて悪寒。
会ったときから、たぶん、好きになりかけていた(まだ好きだとは認めたくない)。
当然滝はこれくらい知ってる。
全部を話してなくても、何となくは感づいている。
こうやって私がかわすことまで、またもお見通し。
「建設的に話さないなら、俺帰るよ?」
暇じゃないし。
……と、テニス道具を強調しながら、滝は靴箱目指した私を追い、一緒の階段を下りてきた。
冷たく言われると怖いです。
その辺、そういうタイプ好きな自分だけに、心得てます。
「ごめんなさい」
私はすぐに謝った。
「俺は日吉ほど使いやすくないねー。そもそもあいつとは同じクラスだから、問題にもなる。その点、日吉は誤解されて困る子いないみたいだしねー……」
「……自分が非道に思えてきた」
要するに、日吉を使うな、と滝は説教している。
うん、めちゃくちゃ分かる。
「でも、私、日吉のこと好きだよ?」
恐る恐る返したら、むっとされた(珍しい)。
「滝と同じって言ったでしょ?そういう意味で」
「………へえ」
やっぱり滝は怖い。
私は素直に付け足した。
「……でも、違うかも……」
――実は、ちょっと危惧してた。
滝の前じゃ、甘えてると日吉は言う。
でも事実は逆。
日吉には甘えてて、私は滝には寄りかかったり甘えたりしない。
分かりにくいが、きちんと線を引いてる。
滝は寄りかかりづらい。
こちらの気持ちなんぞ殆ど読まれていて……だからこそ、私が自分でも計算かどうか分からない部分に対して、滝がどう動くか私には分からないから。
自分でわざと甘えたふりするにはいいんだけど、
自覚して、荷物をちょっと預けるにはいいんだけど、
よっぽどのことがない限り、滝前にして真剣に泣き出すことなんてないと思う。仮にあったとしても理由はいわないだろうな。
私と滝の関係はシンプルかつ複雑だ。(だからこその『友情』なんだって。)
――なら、日吉は?
視線に耐えかねて、私は下を向く。
滝を見なくても大体どんな表情をしてるか想像できた。
「曖昧だねー。にしては珍しい。だからこそ危なっかしいと思ってる」
「……忍足は泣きそうになるから……」
「それが好きだとしたら日吉は違うだろ?」
「それが好きだとしたら、ね」
と私は繰り返す。
忍足を見ると苦しい。
可愛らしい感情なんてない。
ただ気持ち悪い。
憎悪。
別の人が好きだったのよ!!なんでこんなやつが気になるの?……って頭にくる。
そんな自分の不条理な気持ちに嫌気が刺す。
そういえば幼馴染と別れたとき、「なんで別れたの?」と滝は聞かなかった。
ずっと付き合ってた人と上手くいかなくなった理由を、別れる前から友人し始めてた滝は今も聞かない。
決め付けている。
そして滝の推測は正しい。
忍足は敵だ。
私は彼に目を奪われる。
これが『好き』だとしたら、私は恋を認めない。
――だから、日吉なの?
「甘えちゃ駄目だよ?」
滝は言う。
「甘えても、彼なら堕ちないよ?」
私は返す。
日吉は私を好きにならない。
好きになってと、叫んでも好きにならない。
だから私は日吉が「好き」でいられるのだと思う。
滝は笑う。
「どうかな?」
そういう滝だって、私に堕ちなかった。
だからこうして一緒にいるんじゃん。
「知ってるよ。だからこそ……」
「日吉は、私を好きになってくれると思う?」
「俺には分からないよ。……で、は好きになってほしい?」
欲しい。
泣きたい。
日吉の前ならまだ泣ける。
今なら少しは泣ける。
……かもしれない、と願う。
だから……。
滝は靴箱までついてきて、テニスシューズを取った。
クラス順で向い側なので、近いからついでがあってだけれど、私の答えを待ってるのだと思った。
「なって欲しいよ」
「だから駄目」
滝は続けた。
「日吉はを好きにならない。それには日吉が好きじゃない。ただ甘えたいだけなら止めた方がいい」
それがなんでいけないの?
忍足は手に入らない。
私は忍足に甘えを求めない。
恋じゃなくて、そういう友情が欲しい。
「今の私達みたいにぎすぎすした関係は疲れるよ」
「望んだのはそっち。俺は泣き付かれても――そりゃ困るけど――……振り払わないよ?」
鬼だ。
それは最凶の誘惑。
絶対堕ちてはくれないくせに、「友達」でいる彼が「俺にしろ」と暗に言う。
後輩のために。
あるいは後で泣く私のために。
そこから火の粉がくる将来の自分のために。(これが一番の理由。滝ってそういうやつだ)
「そういう優しくてずるいとこが滝は失格」
にやりとした滝の目が憎らしいほど「男」してて、私は不覚にもつんと痛んだ鼻の奥を無理やり無視して笑った。
「滝が好きだよ?」
たまには滝もぐっと来て。
来ないのは分かってても、言うんだ。
この間、日吉に「好きだ」と告げたのと同じだけの強さで。
決して忍足には言わない言葉を。
前に好きだった人にも、ずっと好きな人にも言わない台詞を。
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――それで結局、誰がすきなの?
答えて溜まるか。 |