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「今から半月後の話なんて、早いとは思うのよ?」
「じゃあしなければ?」
……ごめんね。
やっぱ気づかれたか。
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「映画好きでよかったって思うこと、あるのかな?」
隣で昼食中の二人に尋ねた。
主に滝に。
今日は三人。
内訳、滝、私、日吉。がっくんは相方を追っかけて部室にいったらしい。
「忍足に?」
滝は「そうだな」と考え込む。
日吉はそこまで親しくないと黙り込む。
「……というか、先輩にはあったわけですね?」
訂正、日吉は意地悪な言葉を用意してた。
瞬間の沈黙は「タメ」というやつですか。
「………ああ」
頷いたのは滝だった。
今の「ああ」は私の理由へのものに違いない。
とりあえず振られたくない話には釘を。
「ううん。純粋な好奇心。部活休む理由にはしないでしょ?でも好きだけど、一石二鳥で何かってことないのかなぁって思って。……まあマニアな心が沸き起こってくるのとか、一度行くとついつい次回予告につられていってしまう気持ちとかは十分理解できるけど」
副産物はないのか?
女の子と話しやすいとか?
……いや、そういうタイプじゃないかもしれないけど。
適度な距離を置くには、軽い話題として「映画」は役に立つ。
「俺にはそれがわかりませんが……」
とは日吉の弁。
「あるかもねーまあ好きが先に来るのは、三月も一緒だろ?」
「当然」
映画の話はこれで打ち切り。
実は、これが「犯行予告」だなんてきっと気づいてないに違いない。
少なくとも一人は。
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「って、忍足と映画の傾向違うよね」
「知ってる。おかげで映画館で『ばったり』はなくてすんでる。一人でも入りやすいところ探してるから、場所が同じになりがちでしょ?」
五時間目の休み時間。
十分の合間に滝と話すのはさっきの続き。
正確には微妙に方向がかわっておりますが、滝の言い回しを考えると「手短な会話で、ホットなダメージ」狙い。
恐らくこれは「犯行、見破りました宣告」だ。
「辞書返してもらいにきただけだって。勘繰らないように」
疑う瞳の私と同時に、周囲をも嗜めた(声が少し大きめだった)。
「……で?」
私が聞く。
「かぶる内容のものもあるよね?……ラブロマンス込みのファンタジーやらSFと、外せない超大作」
「公開日知ってるの?」
もうバレてるわ。
いいや、すぐさま勝負に出た。
「さあ」
滝ははぐらかした。
でもそれが決定打。
予想はついているということなのか。
墓穴だったかな。
「まあ安心して忍足は誘わないから。……俺をダシにしたくないんだろ?日にち考えておいてよ」
「毎度つき合わせてすまんね」
いいながらも思う。
公開初日、滝と毎回言ってる映画だった。
三部作のラストだから前売りはしっかり買ってる。
でも今年はどうしよう。
少し嫌な企みが渦巻いてるのは事実で、だから多分無意識か意識してか、お昼にあんな話題を出したのだろう。
わかってんなら止めてくれてもいいのに。
思うが、滝の姿は既に消えていた。
ちくしょー
現国(現代国語)の授業だ(眠っ!)
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放課後は図書館でお勉強。
滝と一緒に帰ろうかなと思ったが、今日は日が悪い。
見抜かれてる予感に、さっさと図書館の入り口に足を踏み入れる。
木曜はHRが六時間目。
どうせうちのクラスが遅いんだ。
なんだ、問題ないじゃん。(帰ってるだろうし)
で……。
「日吉」
「あさって世界史の復習テストなんで……」
「教えてあげるから」
「いりません」
「世界史毎回10。同じ先生。問題の傾向も過去問もばっちりある。……本当にいらない?」
「…………なんですか?」
あんまり時間はやらん、と語る目に、「書庫じゃなくてもいいや」と私は腰を落ち着けた。
自習用デスク(一人用)でなく閲覧用でよかった。
横を取って、ノートを広げる。
去年から引き継いでの先生だから、前のノートも持ってきていた。
ラッキーだ。
「先に報酬ね。コロンボからでしょ?」
ちなみにコロンブスは現地語でコロンボ(警部だと覚える人多数)。
現地読み以外認めない先生のお陰で、世界史は難しく……公欠の多いテニス部は大変だと知っている。
あの先生は黒板にノートの内容などかかないが、しっかりその発音まで書いている生徒は少なく、絶対評価の学校ではテストの点数÷10=成績となってしまうから(切捨て切り上げはあれど)死活問題なのだ。
大航海時代の復習を軽く流して、産業革命へ……。
終わる頃には空が暗くなっていた。
「助かりました」
靴箱で待っててくれた日吉に駆け寄って、「ううん」と返す。
他愛もない話をしながら、私は日吉に並んで(適度な距離をとりながら)並木道を歩く。
今日は自転車じゃないらしい。
彼は少し遠いけどチャリ通してるときもあるから、意外だった。
今の季節ほど自転車万歳って季節はないわよ?
何って……この広すぎる敷地を歩くよりはずっといいと思う。
指摘したら、
「先輩に捕まるとどうせ引いて帰る羽目に陥るんで」
と、にべものなく言い返された。
「そうそう」
本題はここから。
でも大したことない。
今のところ、しかも日吉にしてみれば、の話。
滝にはばれてそうだけど、今約束しちゃえば勝ちだ。
日吉は真面目な性格だから。
私は言った。
「二月の第二週土曜日、あいてない?あいてたら映画いこう。日吉も見たいって言ってたやつ。滝とも見る約束はあるんだけどね、滝はのんびりでいいって言うと思うけど、私は初日に見たいの!」
「ああ、あれもう公開なんですか?」
そう去年は日吉を誘おうと思いながらも、結局滝と二人でいったやつ。
ともかく滝のことは放っておいて、答えてくれたまえ。
私は穴があくほど日吉をみてた。
返事待ち。
デートでもないのに(二人ででかければデートってのは可笑しいと思う)ドキドキするのはなんでか理解しておるが、こちとら必死。
「いいですよ。何故かわからないけど、第二土曜は練習休みだと宣言されたので」
そりゃね。
ファンで練習にならなかった去年の教訓を生かしたんだろう。
気づけよ、日吉。
……まあ気づかないのが助かるのですが。
ですが……。
そう上手くはいかないのが世の中の常。
「」
校門で呼ぶ声。
名前自体に「姉さん」だの「姐」だのとくっつけて呼ぶ人(含む同学年)はいるが、この呼び方はいまだ一人。
滝。
いたのか……。
「待ってた。偶々俺も図書館にいてね」
日吉にさり気なく後輩仕様と思われる顔を見せて、滝は手をひらひらふった。
「珍しいわね、待ってるなんて」
うん、牽制するつもりだよな。
多分この人……。
いや、勝手にそうなるのは私なのだが……。
「……それより、は随分先の話するんだね」
「まあ、俺ら部活ありますから」
自主トレの日程組みもさせられるらしいので、そのせいだということに……と思う。
日吉の意識しないフォローに救われるかな。
……でも滝は甘くなかった。
「日吉に確かめなくていいの?」
「何を?」
「彼女いないって分かってはいるだろうけど、お誘いがあってもおかしくないだろ?」
話に流れについていけない日吉。
うん、君が好きだ。
普通は分からないわよね。カレンダーなんてそこまで後のことみないし。
「そりゃ……今から二月十四日の話なんて、早いとは思うのよ?」
「じゃあしなければ?」
……ごめんね。
やっぱ気づかれたか。
「日吉も。こいつ甘やかすとろくな事ないから」
「………バレンタイン」
ようやく思い当たったらしく、日吉はぼそりともらす。
そうそれ。
口走らなくていいから。
「好きでもないのに、誘わないように」
滝、言い返しますよ、ここは。
私は最早なれられてしまってるだろうなと思いながらも、少し不安になりながら言った。
二人に。
「きちんと好きだよ?……日吉駄目なら滝と見に行こうと思ってたし」
代用?
目がきついなぁ。
代用の代用?
うん、滝はそう思ってるだろうけれどね、本当は滝誘う予定だったんだって。
毎年それもどうかなって思ったし、偶然日にちが重なってるから「口実かよ」と思われたくなかったのよ……。
「俺は行ってもいいけど?そんなに早く行きたいなら。ダシにしなくても行ける」
分かってます。
でもね。
日吉、ごめん。
先に滝に言い訳をしなくては……。
「だってガックンも来るっていってたじゃない?」
てことは、絶対来る。
愛の物語じゃない!と私は主張するが、あれなら絶対やつが来る。
日吉も誰関連の話かは察したらしい。
視線がそこまで冷たくないから安心。
……と右に目を流し……滝の微苦笑に凍る。
「口実じゃなくて日吉とも行きたいし」
「俺は?」
「何回も行くから。……ほら、日にち考えておくわよ」
日吉は「別にどっちでもいいですよ」と言ったが、じゃあ三人で、と言い出す気力はまだない。
「デート気分を味わいたい一人身の気持ちは分かる。俺は除け者?」
んな可愛いこというキャラじゃないでしょ、滝は。
日吉との間を裂く気だな?(そもそもなんでもないんだが)
当然、こうくると日吉的に微妙よね?
「三人で行けばいいんじゃないですか?」
「俺がいると休まらないって気を使ってんだろ?は。それも本当だろうから今回は遠慮しておくよ。でも日吉、甘やかさないように」
「………いや……俺が行きたいわけじゃないんですが」
日吉は巻き込まれただけ。
了解しております。
「滝、一緒に行こう?」
日吉にアイコンタクト。
了解をとって、私は意を決した。
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「でも、今から半月後の話なんて早いと思うよ?」
「先輩がいうことじゃ……俺的には助かりますが」
フォローなのか突っ込みなのか?日吉よ(跡部口調プチブーム中)。
「じゃあしなければ?」
滝、冷たい。
といいつつも、OKが嬉しくて、結局甘やかしてはくれないのに付き合いはいい滝が愛しくて、「ありがと」耳元で囁いた。
それで、
「何が?」
とか言われた。
分かれよ、好きなんだよ?
本当に。
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