二月十四日学校は土曜日でもあります。
さすが私立!
国家の方針は無視の方向で。
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「盛大にやりましたね」
「あ、おはよ。日吉」
「おはようございます。先輩」
振り向かずと分かるって、この声。
運動部の朝練が終わるこのタイミングで、おまけに今下の学年の下駄箱前を通り過ぎており、なおかつ私の知り合いなんてそもそも数えなくても一人なんだから。
「なんだ、ばれてたか……」
「あんなにでかい正方形の包装紙持って、図書館方面から走ってくれば分かるでしょう。あそこ冷蔵庫完備だし」
しまった。
日吉も図書委員だった。
しかも私が連れ込んでる(?)からヘビィユーザー。司書さんから冷蔵庫借りるくらい予想に易いだろう。
まあいっか。
手間が省けたし。
「じゃ、そういうことで終わったら図書館集合ね?」
「それでそっちの手に持ってる紙袋の方は?」
「そこ、無粋なことを聞かない!」
本当はちょっとだけせめて可愛い「ふり」くらいはしたかったんだけど、出鼻をくじかれてしまった。
図書館においてきた正方形はケーキの箱。
手に持ってる紙袋には大量の義理用、クッキーの詰め合わせ袋が入っている。
言わずもがな今日は2月14日=バレンタイン。
「知ってはいましたが、本当に凄い量で……」
と、日吉に呆れ顔で言われるが、反論できないから黙ってみた。
うん、自分でもそう思うよ。
何って六十袋よ? 六十。
大体3〜4クラス分の男子の総数?
……んな阿呆な。
「まあね。でも特別は特別で別に作ってるから。後であげる」
「……まあいいですけど」
本命用というか特別用は滝と日吉の分。
後は預かってることからも分かるように、日ごろお世話になっている司書さん達の。
それで、手に持つ紙袋――例の60個の方はというと、ボランティア。
要するに、義理ももらえない子たちに配り始めたのが最初で気がついたらワラワラ増えてたという経緯。
作るうちに「俺!俺!」と詐欺師並みに倍増。
面倒なのだが、お菓子作りは好きだから、適当に作れるだけもっていって私の脳内優先順位(=予約権利)在る人以外ジャンケンで決めてもらうんだが。
「じゃ後で」
私は高速で日吉と分かれて、ささっと靴箱をスルーしようかと……思ってやむなく断念。
停止。
「おはよう」
「ん、おはよ、滝」
涼しげに登校してきたこの人はいつももっと早い。
多分朝練習に出てたのだろう。
引退後は自由参加なのだ。
それにしても、しっかり練習しておきながらこれだけ爽やかって反則よ、滝。
いくらシャワー使えるからって――。
「何?今日は朝練ないけど?」
「え?そうなの?」
そういや半月前にきいたな。
(ギャラリーのせいで)練習にならないからって。
「なら収穫は?」
と尋ねかけて止める。
気になるけど、聞いたら負けたみたいで嫌。
日吉をターゲットにし損ねたしね。
可愛いふりをしてみたい。
滝を騙してみたいとか思うのは滝が絶対騙されないからなんだけど
まあそんな目論見なんぞ「お見通し」の滝は薄い笑みを浮かべて、跡部の愚痴をさらりと流した。。
「元部長が来なければまだ自主練やれたのにね。虫除けになってくれたみたいだから、収穫はないよ」
助かったと滝は毒を吐いた。
怖いから、その目。
跡部と、これでも特別仲が悪くないあたり滝って不思議だと思う。
「まああれは名物だからね。でも滝、ラッキーって……もらわなくていいの?」
きいたら鼻で笑われてしまったような……。
そりゃ私が渡すとばれてるのでしょうな。
そこで大抵くるんだよね、直球ででなく、変化球な報復。
「日吉も自主練でてたろ?ま、おおむね平和そうだったかな」
と、滝は言った。
もろに「こちらを伺ってます」な表情をしてみせてくれてる。
滝を試すとこれだからいただけない。
「知ってる。そこであったから」
げんなり。
朝から無駄な対決姿勢なぞ見せるものではなかった。
「でも、滝?日吉の場合面とむかって渡す勇気はない子が多いから。本人、あんまり人気とか気にしてないし」
「そうだね」
にっこり。
うん、もうわかった。
猫かぶりはやめるから笑顔やめて。
「………」
それであげたの?と滝の目は続けて問うてきた。
これはもう答えるほか……。
最初は日吉。
でも次の話題は多分………あれ……だし……
「はい」
っと私は滝に紙袋からちっちゃいラッピングの包みを渡した。
「これ向日のガックンに。滝は後で。映画行く前に図書集合ね?」
「ああ、うん。じゃもう一個」
「……何ですか?その手は」
滝はもう一つくれろと手を差し出して、またしてもにっこり。
「それとも二時間目辞書返しに来る?」
「………」
「粘る気?」
「……」
滝は私が忍足のことをどう思ってるか知ってる。
忍足にあげろと?
まあ有体に言ってそういうことよね。
「………さっきの返して」
いいながら私は滝の手から袋を奪った。
続きを待つ滝に、降参の答えを投げた。
靴箱から歩き出しながら、お互い別の階段の方が早く教室にいけるので立ち止まって、
「後でまとめて渡しにいく。そしたら滝も万が一図書館で見られても変な誤解されずにすむし」
「今更だけど?」
本当にそれが目的?目的が、何だか分かってる?と無言で聞かれているのだろう。
『いいでしょ?何にせよ行くんだから。』と言おうと思ったが、ここまで滝が念押しするのも珍しい。
忍足になんてあげたくないのよ!と反抗すればするほどどつぼに嵌ると理解できていた私は黙って頷いた。
「了解」
滝は向こう側の階段に消えていった。
さて、私も急ごう。
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賑わう教室を横目に奥のロッカーまでたどり着く。
一時間目は日本史か。
取りあえず教科書を取り出して、変わりに無理やり紙袋を詰め込んだ。
ぎりぎりなスペースに何とかいれようとするがうまくいかない。
クラスの分だけ先に配ろう。
「おはよう」「ね、もってきた?」「誰にあげるの?」などなど女の子女の子した会話をスルーしつつ、私は教室窓際一番はしっこというベストプレイスな自分の席までさっさと移動。
既にやたらチョコを整理してる宍戸の斜め後ろに座ると、誰も話せる子が来てなくて手持ち無沙汰だった。
でもって会話。
「お早う」
「…おう?」
一応高校から別の学校に編入したと宍戸がよく話してた関係で知らない仲じゃない。この人事態は苦手でもないので挨拶したわけだが……
そんなに不審か?挨拶が。
「その分じゃ義理なしチョコはずっと用なしね」
「あ?お前、今年ももってきてんのかよ」
宍戸も、去年から同じクラスだから知られてて当然。
「まあ」
うーん。
去年はが義理であげてたけど、今年はいないのよね?
もしや本命じゃなく「義理」なら上げた方がいいのか?
男女でVDの話となると何だか微妙だな。
滝と日吉は例外として……
たぶん相手が極度にテレや(?)なせいだろうが、私は沈黙が辛い……。
なんだか辛い……
「あれ上手かったよな」
とこともあろうに褒めるし。
「……いつの間に食べた?去年あげてないよ?」
「から分けてもらったの、見てなかったか?」
「え?」
「他クラスのやつにも評判みてーで、みんな噂してるしな」
「そりゃあれだけ騒げば評判云々はさておき話は広まるっしょ?」
「あーまあ……。けどよ、誤解されねーか?」
「ん――」
考えなくもないが既にクラスってか年下にまで色々と誤解は回ってるし。
ほら、滝とか滝とか日吉とか日吉とか。
「今更じゃない?」
問題ない答えよね?
うん。
「あー」
ほら宍戸にすら回ってるんだわ。(噂の最終地だと思ってたのに)
「ともかくそういうこと。君相手なら誤解されんだろーし」
「まあがいなくなってから接点ねーから俺ら」
「十分、が接点になってるからこうして話すんだけど。そういえばさ、彼女、あの真田さんを微妙に気にかけてたのに、横にいたガキにひっつかれてるらしいよ。からかうと微妙に面白いから分かるけどね」
「へえ、そりゃおもしれー……」
以降友人話でもりあがったのだが、ふと視線を感じたのは五分もしないうちだった。
「VD」「女の子の目」で、ここにきて突き刺さるってことは多分宍戸狙いかぁ。
こいつとは誤解されようがないのですが?
年下かなぁ。
「宍戸、お客だよ?」
と教えて……。でも、どかないけどさ。
ちなみにこれは気を利かせないじゃなくて、きかせてるから。
面倒そうに顔をしかめた宍戸の心情を読んでるし、盾になってやってもいいと思ってる。
私なら「今更」だから。
そういう意味だ。
「悪ぃ」
宍戸は何となく分かったのだろう。
「仕方ないって、じゃ、ついでにコレ」
私はクラス男子用・じゃんけん景品を一つ贈呈した。
可愛いラッピングされたクッキーの詰め合わせは七種類ランダムでいれた本命臭さが漂うダミー(60本命なわけがあるか?)
宍戸は「激ダサ」とか言って、受け取った。
女の子が逃げてく。
ごめん、カノジョ。
でも、半端に受け取りたくなくて断るのも辛そうな人見てられないわ。
「マジ、悪ぃな。評判おとさせて」
「地まで落ちる前に、私は優等生評価がくだってるから平気よ」
といいつつも、へこむ。
何故か、みたいに委員長とかなら義理だとあっさり思われるんだが、私は駄目みたいだから。(理不尽)
60のうちの1でもテニス部相手だと駄目なのか?
好きでもないのになぁ。(遠い目)
ところで「損してんな」と宍戸はいい、会話はここで打ち切り。
クラスに人が続々入ってきたから、ばしばしとじゃんけんさせて、女の子にも適当に配って、第一ラウンド終了。
……で、どうしたものか。
滝のクラス=忍足がいる→忍足=知り合い。他の知り合いはみんなあげるし、あげないわけには……
――そもそもあげたいのか?自分よ?(いまだ跡部様口調ブーム終わらじ)
「さあ、P27から始めるぞ」とか先生が言い始めても私はそのことで結局勉強てつかず。
今日クラスメイトにうった恩が早速役立つこととなった。
さて、授業おわったら誰かにノートかりなきゃね。
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終わった。
終わってしまった。
いこうか、どうしようか。
ロッカーまで移動して、教科書の入れ替えAND辞書を取る。
その後うだうだうだうだ………
当然向こうのクラスまで足をのばしていない。
だが、だがどうしてこうなる?
こともあろうに、次の教室はやつらの隣のクラスだった。
学力別だからね、次の科目=数学。
数クラスミックスしてるから場所もそれぞれなのだ。
そうして更に追い討ちをかけたのは……
「遅せーよ!」
お迎えにきた滝とガックンだった。
つーか向日岳人とはそこまで親密になった気もないんだけどなぁ。
お互い友人(滝)の友人認識だし。
それも納得がいくのは
「だって、こないだもくれたじゃん?俺、腹へったから狙ってたのにこねーんだもん。滝は来る来る言うしさー」
のあまりに適当な回答に……。
ありがとうガックン。
物欲って分かりやすくて好きだ。
その反面、もらえないという発想はないのか?とさり気なく将来が不安になりながらも、私は二人についてとろとろと歩き出す。
ラッピングいっぱいの紙袋抱えて。
人は思いっきり注目してるが気にしないことにしておく。
考える余裕もないのはまあこれから数十秒後に会う人間のせいなんだろうが。
しかし、教室に彼は居なかった。
「はい」
さっさとガックンに渡す。
ラッキーとばかりに、満面の笑みで渡したので今度こそ周囲に「え?」てな顔されたが、コレくらい許容だ。
もうなんでもござれだ。
忍足以外なんでも……。
「サンキュ」
「滝にも」
あとで別にあるからね?
と伝えつつ、「特別」を岳人にとりあげないように配慮して一応60分の1も渡した。
他数名の顔見知りに配って、このクラスでの作業は終了。
そのはずだった。
「俺にはくれへんの?」
「……」
調子者の当人がいない限りは……。
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「60人分あるんだからやれば?」
すかさず滝がフォローに入る。
告白なぞしないことは分かってるから、渡させるだけ渡させて別の人への依存をとこうという作戦だろう。
そうはいっても日吉は渡さないからね(違っ)
いや、一人ツッコミしてる場合じゃない……(第二弾)
パニックの表れだ。
私はセーターの裾をぎゅっと掴んだ。
見られないようにセーターの袖口がだぼだぼのままでよかったよ。
何とか心臓を落ち着かせる。
ちらりと滝を見たが、滝はこちらを見なかった。
あえて放っておいてくれているのが分かる。
むしろ、ガックンが問題。
何もしらないから気が楽だが、その分正直ゆえ、おっかない。
案の定、
「あ、侑士。いいだろ?のめちゃくちゃうまいんだぜ?しかも手作りなのに義理なのなー」
嬉しいが反応に困ることをいい、更に困る相方の反応を引き出した。
「あのな、岳人…それ失礼とちゃう?」
とちゃう?
って言われても。
こちらを向かれても。
立ち往生する私に、「本命ならもらうの?」とすかさず滝がフォローしてくれた。
が……。
それフォローじゃないって……。
あのぉ……滝さん?
何を誰にきいてんの?
思わぬ話の展開においてけぼり。
けど嫌になっちゃう。
耳は頭に来るほど忠実に忍足の答えを待っていて、
「もらうで?」
へえ貰うんだ。
「ただし好きやったらな」
そうよね?
と、一度は納まった心臓がばくばく。
「ま、【本命じゃない】からどうぞ」
と、気づいたら思い切り言っていた。
後悔。
反省。
後のまつり。
どうせ告るつもりなんてこれっぽっちもないが……また忍足を見ると微妙だなぁと苛立つことが一つ増えてしまったことだけは確かだった。
ついでに、と忍足は芥川の分を持って、隣の教室に消えていった。そうか、このクラスも英語ってことは学力別だから、ね。
「滝は次ここ?」
「うん」
「……ありがと……」
「一言多かった」
「うるさい」
渡せたのでよかったなんて白状はしない。
無理やり第二ラウンド終了。
むしろメインがコレだとは思ってなかったから、微妙な心持で私は授業に望んだ。
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三時間目はあっという間だった。
図書館でケーキを消費して、その後のんびり映画。
ケーキだけじゃなくて、実は昼の用意もしてきたので、クラブハウス取り合ったりして意外と楽しかった。
流石に図書館は目立つから、私が幽霊所属してる存続の危機にある美術部室だったりするけれど、マアマア綺麗だし。
デートを満喫したのはまた別の話。
さて16日のお昼、私はこんな話を聞いた。
まず、挨拶すらすっとばして、宍戸が「跡部がのせいで仲間はずれにされて拗ねてたぜ」 といった。
次に辞書借りに行ったときき滝が「フォローはしておいたけど?」と意味深なことを言って、次に偶然移動教室で会った日吉にいたっては
「これ以上目立たないようにしてください」
一体何ごとかと思ったので、まあ日吉には軽く「なら責任とってくれてもいいよ?」とふざけ半分本気半分で返し、その後、いつの間にか横にいた滝にぺちっと叩かれたが(痛いって)。
何が起こったのかは結局なぞで、ただ私のWHITEDAYのお返しはあげた記憶のないはずの跡部からくるかもという噂をテニス陣からまことしやかに聞いたのだった。
んな馬鹿な。
それでもって、お昼。
今日は事情あって、滝と一緒、詳しく事情を聞いてみる。
「結果的に跡部以外全員、の60分の1プレゼント貰ったんだよ」
「……へ?そうなの?」
「……ついでに嫌だと思うけど宍戸が鳳におすそ分けしてた。日吉はあげなかったの、えらいと思うけど誤解を招いたしね」
「あ、そう」
END
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オマケ
15日テニス部は練習。
部室にて練習前。
「忍足、あのさー……俺に昨日くれたのだれ〜?」
発端はジロの一声。
「ん?珍しいやん。せやけどあれ、別に告白とかちゃうで?俺がかっぱらってきたんや」
「誰、誰?だーれ?ありがとーって言いたいC」
「ああ……委員長……じゃなかった、図書委員の……」
インプットされた印象が強すぎて名まえが出てこなかった。
横で見ていた滝が「あーあ」という顔をする。
着替え終わってタオルをバックから出していた日吉がすかさずフォローに入る。
「……先輩ですよ。先輩」
「へぇ!日吉、知ってんだーすっげーずっり〜」
「あーあ」と、次に滝は日吉を見る。
ほぼ同時にため息の理由は日吉に伝わった。
知った人間だからとタイミングよく名前を出しすぎた。
忍足がは日吉が聞いているとは思ってもいなかったのだろう。
だから、滝と日吉の嫌な予感どおり、
「あれ?日吉、つきおうてるんちゃうん?ほんまに怪しいやっちゃなぁ」
と突っ込み、
「図書委員なんで」
「違うだろ?滝のが仲いいじゃん」
日吉の言い訳と、正直者岳人の言い分がなければまたしても誤情報が走るところであった。
「へえ、滝はんの彼女なん?」
ついでにそんな(普段から有名な)説も囁かれたが、忍足は、そういえば噂されてる女がいたようないなかったような……と回想してみるも、滝の本性を知るだけに彼女?とは異例の事態でありえないと結論を出す。
「なわけないな」
「分かってくれて嬉しい」とは滝の弁。
岳人がすかさず、発言元に情報を提供し、
「そうそうジロ、にお礼言うんだったらさ。あいつ、宍戸のクラスだぜ?」
「わかったC……で?なんで宍戸きょどってんの?」
ジロが聞いた答えに宍戸が、「あー……いやお前らがを知ってんのが意外で」と返す。
ついでに何故か、「美味しかったC。もらった〜?」と……スルーされて、話はクッキーの方へ。
鳳までもが「ああ、あの人か」と納得(心底苦手にされてるとは思ってないだろうなと横で日吉は観察)。
どうやら全員が本命でチョコレートなんぞ貰えるにもかかわらずの【義理なしオトコに愛の手を】企画でクッキーを手に入れたと発覚した。
「一人ぬけてるやん?」
という、忍足の指摘とともに、『彼』が現れるまでは……。
ちなみにBGMはわいわいがやがやこんな内容。
「どっかできいた名前思たら、世界史の鉄人やん?」(忍足)
「あー名前は知ってる」(ジロ)
「毎年恒例だぜ」(宍戸)
「なぁ!帰り一緒いただろ?」(ガックン)
「映画いったんだよ、三人で」(滝)
「強引ですから」(日吉)
「いつもタイミング合わなくて会いませんね」(鳳)
ドアが開いて入ってきた跡部とナイスタイミングな忍足の指摘に、思わず全員が
「「「「「「あー」」」」」」」
「何だ?アーン?」
「可哀想に」(ジロ)
「不憫な子や」(忍足)
「もったいねーな」(宍戸)
「ま、義理無し企画だしね」(滝)
「というか本気の義理ですから」(日吉)
「でも本命貰ってるにきまってるッス」(鳳)
いっせいに話したところで、一人だけずれた岳人が「跡部、残念だったな」と告げて、瞬間沈黙が訪れる。
「だから何がなんだ?」
「昨日のこと」
これはジロ。
「バレンタインだろ?数でも競いあってんじゃねーだろうな。馬鹿馬鹿しい」
すかさず跡部が頷くが、
「違うC]
反論と共にしごく嬉しそうなジロの顔に身じろぎ、周囲を見回すとその異様なほどの哀れみの目に圧倒された。
ついでに結局事情をすぱっと宍戸が話したもので、その後知り合いでもないのに何故だかみんなが褒めているその最高の義理が気になって、拗ねたような顔をした跡部が見られたとか……。
本人の預かり知らぬところで、よもや跡部様に微妙に恨みもちょっとで名前をインプットされているとは当然、は思ってもいない。
一ヶ月後のホワイトデーが来るまで……テニス部レギュラーにまいていた事実なぞもすっぱり忘れているのだった。
続くのか?
一応END
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