◇ この日に限ってマジになってる ◇【滝編】



 夜中の電話は嫌いじゃない。
 つかれきってるとき、適当に切り流すこともあるが……。

 TRRRRRR

「はい」

「寝てた?ごめんね」

「いや寝てないから……」

 だから勝手に話を進めないように。
 には告げても無駄だ。
 こう思考するうちにも、もう……

「起きてたならいいんだけど。あのさ、最近部活忙しいから会ってないって思って……」

「昼会ってるのに?」

「じゃなくて…その……」

「ああ日吉もいるしね。日吉と一緒に事の方が最近多い?」

 最初は俺にヤキモチやかせたいのかと放っておいた。
 でも、そのうち本気で気に入りだしているとしった。
 慌てやしないけど。
 は友達だし。

「ん。日吉は日吉で一緒にいるの楽だからいいの。でも滝と話したい」

「了解。明日は部活いかないよ」

 引退している身だ。
 早々邪魔するのもよくないだろう。
 身体がなまるから――そんな理由で皆しょっちゅう顔をだしているが、ちょうどそろそろやめようと思っていたし。
 ――……跡部、けじめは必要だろう?
 言ったら一番嫌がるから我慢してる。(自主的に彼なら気づくだろうね。他の人間に、ことに俺には言われたくないような気がする。あれで大人びて「いたい」タイプだから)
 でも心の中で、「現」部長さんに問いかけて、
 
「そうだな、なら図書館で」

「日吉捕まえちゃうよ」

「ご自由に」

「……冷たい」

 「滝と話したいのに日吉を捕まえてどうすんのよ?」とか携帯ごしに遠く声が聞こえる。
「はいはい」
 電波が悪いが、どうせ大したこと言わなかっただろう。
 ただ、ストレスになってる色々が関係ない話でまぎれるというの言い分には大いに賛成するべきところがあった。
 つまり、しっかり会って休憩しようという誘い。

「悪くはないねー……」

 軽く頷いて――電話じゃ見えないのは承知のうえ――ふと違和感を覚えた。
 これだけなら電話じゃなくて、直接あって言いそうだ。
 なら、その為だけにクラスに会いに来ても可笑しくない。
 ちょうどそんな思惑に頭を悩ませているときだった。
 答え合わせのように言葉が降りかかる――

「ね、滝、好きだよ?」

 分かってる。
 答えようとして、いつもより唐突な調子に黙り込む。
 騙されたわけじゃない。

「嘘。ごめん。でも本当に大好きだから」

 トーンを下げた声。
 本気半分。
 いつもは強がりで言われる台詞に、何となく企みが見えた。

「ええと……本気?」

「ん」

「0時を3分回ったよ?」

 エイプリルフールね。
 終ったけど。
 本気にされたいのかと聞く声に、彼女は低く唸った。

「……知ってる。……でも楽しみにしてたのよ。学校で言い忘れたことにようやく気づいたのに、アウトか。悔しいからわざわざ電話したのに!」

 可愛いなとか思うと痛い目みるから思わないようにするけど、こういうところは子供っぽくても嫌いじゃない。(この時期に子供っぽいのもどうかと思うし、数年たっても同じだろうけど)
 ちょっとだけ――けれど感想として抱いた想いは紛れもなく「可愛いね」という気持ちだったから。(いつもみたいな皮肉じゃなくて)
 彼女も決して全てが嘘というわけでもないし。
 ならば、この曖昧な時間にはぴったりだろう。
 俺が鼻で笑った(厳密にはそうじゃない)と感知して、はますます不機嫌(もしくは不機嫌なふり)になるのだが、本当のところ、こっちとしては少し吹き出しそうだった。

「だって、半年前から浮かんでたんだよ。嘘……折角考えたのに」

「馬鹿?」

「いわれると思った。でもいいじゃん。可愛くて」

「自分で言ってちゃ用ないね」

 これは俺に失言。
 これじゃ可愛いと認めてるようなものだ。

「ムカつく」

 気づかない彼女こそ一番可愛いのは「馬鹿な子ほど〜」のくだりとどれだけ差があるのか微妙。嘘をついていい日の延長戦で、真面目になれてる自分に面白くなりながら、後に続くの愚痴を聞き流したりして……。

『半年前から考えなくてもその嘘、いつもついてるくせにねー』

 嘘にまぎれていえればよかった台詞を、無理やり咀嚼して、

「もっと新しい嘘を考えないと騙されないよ」

「分かってるわよ」

 言われた彼女は分かってない。
 嘘ばかりついているのがどちらか、この会話にどれくらい本気が混じっているのかまではね。

「……まあいいけど」

「なに?」

「ん、いや……嘘をついてもいいかなと思ったら、もう十分近く立ってるからアウトだろ?それだけ」

「何なに?滝の嘘、聞きたい?」

「あんまり聞かない方がいいと思う。少なくとも聞きたがられて言うヤツはいないだろ?」

「そうか……」

「だから聞かないで」

 たわいもない話で、盛り上がったような盛り上がらないようなで……電話を切った。 
 その後に残るのは何だかやっぱり、少し可愛く思うような気持ち。
 行事に感化されるなんて、頭にくるねー。 
 
 俺が付こうとしたのは嘘なんかじゃなくて本当。
 いつも素直にいる気満々なのに、どうやらは分かってないみたいだから、偶には色々話してもいいかと思ったけれど、

「特に隠してるつもりはないし」

 延長で一年、次のエイプリルフールまで覚えてるつもりもないしね。
 俺は。
 ――だったらやりかねないけど……。




無駄コメント
滝さんは複雑が似合う……珍しくこちら視点で……。何故か忙しいわりにささっと浮かんだものを書いて更新。
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