◇  ことの終わり(第二部Start) ◇

痛いとか嫌だとかは思わなかった。
怖いとは……
………悔しいけど少しだけ思った。

 *    *  *  *  *  *  *

「滝、おはよ」

「おはよう」

 普通の朝だ。

「早く服着れば?」

 訂正。
 ノット普通の朝。
 昨晩のことは覚えてる。
 しっかりシテしまった。
 阿呆みたいな感慨があるほど子供じゃないが……いや子供だけど経験値なんていくらでも何とかなるし……って実は初めてで気まずかったりするけど……。(混乱中)

「初めてだったとか――ないよね?って聞こうかと思ったけどその分じゃ……」
 あるんだよね?やっぱ。
 と、滝は綺麗な顔を崩さずに聞く。
 うん、分かってるからお願い……そんな意外な顔しないで。
 服着てないのはそっちもだし。
 直ぐ横でみたアップの困り顔にはさすがに黙り込む。
 ああ、もうっ、別に気にしてなんて――。
 ………そうか……。
 私は思いついて告げた。
 いつもの調子で幾分可愛げに。

「後悔はしてないよ?」

「俺がしてる」

「知ってる」

 それでもしてないんだから仕方ない。
 いつかこうなる予感があったわけじゃない。
 こうなりたくなかったっていったら嘘になるけれど、望んでたかと聞かれるとかなり微妙。
 シーツに包まったまま私の髪をひっぱる滝は少しだけ優しかったが、今はそれがかえって痛い。
 更に言えば、この人真面目に手加減しなかったし。
 たぶん、それもわざとだ。
 乗った自分にも、乗らせた私にも(こういうとなんだかエロいけど、「提案に」って意味で)罰を与えてたつもりだったのかもしれない。
 笑えない表情で私を貪ったコイツはまたものほほんとしてる。底にある意地の悪さを見られてよかったから、怖いだなんて思ったことは記憶から抹殺するとしよう。
 
「『好き?』とかきかないの?」

 滝はそういって、自分の方がずっと綺麗なくせに私の髪を弄ぶ。
 ネコ相手にしてるみたいに。(多分そんな認識だ、こいつ……)

「滝、私を怒らせたい?」

「好きだよ、俺はのこと」

「うそつき」

 いつもと逆だ。
 いつもなら私が「好きだよ?」って笑って、滝がにっこり言うんだ。
 「うそつき」って。
 きつい笑顔で。
 
「もういいよ」

 私は降参した。
 幸せそうなふりして、一度だけ滝を抱きしめて、

「滝はズルイ」

 もう多分しないなぁとか思いながら軽くないキスをした。
 滝は目を見張ったけれどゆっくり舌を絡めて、

「これ以上後悔させてどうすんだよ?」

 そういいながらも私を離さなかった。
 嫌がらせみたいに髪の毛をシーツに縫い付けて(痛いって)。

 それがどうしてか?
 ……そんなの知ってる。
 こいつは、私を慰めてるつもりなんだ。
 それに私は釣られてやった。
 この行為にどんな意味があるか深く考えなかったから。

「存分に後悔して」

 『今度は優しく』と無意識に罪滅ぼしをしたがる滝は嫌で、ただそれだけの理由で――息する瞬間をも惜しんで私は言い、

「嫌だね」 
 
 滝はまた意地悪い顔に戻った。
 ヤツはエスな方がいい。
 らしくて、大嫌いだけれど大好き。
 素直になるつもりもなくて、たきつけたくせに抵抗の手を強めた。

 結局、しばらく初めて、ようやくこれが不味い事だったと思い知るのだけれど。

                END
合間抜けてすみません。
実は昔MEMOで出したものですが耐え切れず、
先にやらかしてしまいました……。
ここにいたる紆余曲折はそのうち。
更に立て続けに この直後の日吉話も上げましたが ここで結論、とはいきません。むしろこれが二部スタートにあたります。
 
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