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痛いとか嫌だとかは思わなかった。
怖いとは……
………悔しいけど少しだけ思った。
* * * * * * *
「滝、おはよ」
「おはよう」
普通の朝だ。
「早く服着れば?」
訂正。
ノット普通の朝。
昨晩のことは覚えてる。
しっかりシテしまった。
阿呆みたいな感慨があるほど子供じゃないが……いや子供だけど経験値なんていくらでも何とかなるし……って実は初めてで気まずかったりするけど……。(混乱中)
「初めてだったとか――ないよね?って聞こうかと思ったけどその分じゃ……」
あるんだよね?やっぱ。
と、滝は綺麗な顔を崩さずに聞く。
うん、分かってるからお願い……そんな意外な顔しないで。
服着てないのはそっちもだし。
直ぐ横でみたアップの困り顔にはさすがに黙り込む。
ああ、もうっ、別に気にしてなんて――。
………そうか……。
私は思いついて告げた。
いつもの調子で幾分可愛げに。
「後悔はしてないよ?」
「俺がしてる」
「知ってる」
それでもしてないんだから仕方ない。
いつかこうなる予感があったわけじゃない。
こうなりたくなかったっていったら嘘になるけれど、望んでたかと聞かれるとかなり微妙。
シーツに包まったまま私の髪をひっぱる滝は少しだけ優しかったが、今はそれがかえって痛い。
更に言えば、この人真面目に手加減しなかったし。
たぶん、それもわざとだ。
乗った自分にも、乗らせた私にも(こういうとなんだかエロいけど、「提案に」って意味で)罰を与えてたつもりだったのかもしれない。
笑えない表情で私を貪ったコイツはまたものほほんとしてる。底にある意地の悪さを見られてよかったから、怖いだなんて思ったことは記憶から抹殺するとしよう。
「『好き?』とかきかないの?」
滝はそういって、自分の方がずっと綺麗なくせに私の髪を弄ぶ。
ネコ相手にしてるみたいに。(多分そんな認識だ、こいつ……)
「滝、私を怒らせたい?」
「好きだよ、俺はのこと」
「うそつき」
いつもと逆だ。
いつもなら私が「好きだよ?」って笑って、滝がにっこり言うんだ。
「うそつき」って。
きつい笑顔で。
「もういいよ」
私は降参した。
幸せそうなふりして、一度だけ滝を抱きしめて、
「滝はズルイ」
もう多分しないなぁとか思いながら軽くないキスをした。
滝は目を見張ったけれどゆっくり舌を絡めて、
「これ以上後悔させてどうすんだよ?」
そういいながらも私を離さなかった。
嫌がらせみたいに髪の毛をシーツに縫い付けて(痛いって)。
それがどうしてか?
……そんなの知ってる。
こいつは、私を慰めてるつもりなんだ。
それに私は釣られてやった。
この行為にどんな意味があるか深く考えなかったから。
「存分に後悔して」
『今度は優しく』と無意識に罪滅ぼしをしたがる滝は嫌で、ただそれだけの理由で――息する瞬間をも惜しんで私は言い、
「嫌だね」
滝はまた意地悪い顔に戻った。
ヤツはエスな方がいい。
らしくて、大嫌いだけれど大好き。
素直になるつもりもなくて、たきつけたくせに抵抗の手を強めた。
結局、しばらく初めて、ようやくこれが不味い事だったと思い知るのだけれど。
END
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