|
「長太郎」 「さん、どうしたんです?氷帝(うち)に用ですか?」 「跡部に会いにきただけさ。久々に長太郎の顔も見たかったからね」 「はは……可愛いこと言いますね」
そんなつもりもないくせに。 「忍足先輩ならいないっすよ?」 「だからだよ。お前のことはあいつには秘密だ」 「いつまで?」
口をついて出た言葉に戸惑ったのは長太郎の方で、相手ははっと目を見張り、すぐにその瞳が妖しく光った。 (くっ……)
正直頭に来たが、これも慣れなくてはこの女の相手などしていられない。 「浮気、ですか?」 「それはどちらに向けて言ってる?私があいつに浮気していると?それともお前に浮気していると?」 「本気なんて、貴女には似合わないですよね?」
張り詰めているのにも飽きて、降参とばかり気楽に尋ねる。 「さあ?」 それでも本音なのだろうと、何となくそこまでは分かるが……。 (一体、これは何を示してるんですか?)
長太郎は考えたが到底相手の考えが読めるとは思えなかった。 「俺と忍足先輩のこと、邪魔してるのがそっちって行った方がいいんじゃないですか?」 呆れたように呟けば、 「でも、時折お前は私を本気で奪いたくなるだろう?」
その忍耐力を試してる。 「さあ、そろそろ行くよ。「姫」はそこで大人しくしていればいい」 「なんすか、その言い方。貴女はいつもそうだ」 遠慮がちに手を掴み、告げる。 「じゃあ奪ってみれば?……叔父様が業を煮やして動き出す前に、無理にでも私を縛り付けてしまえるのなら、私の心も動くよ」 「冗談は……」 「冗談?」
見下ろす瞳。 (やってみせようじゃありませんか)
忍足のことはその瞬間頭になかった。 「貴女が本気にしたいならしますよ?俺は親のことなんてどうにでもなりますけど、このまま「遊び」を続けるのにも嫌気が差します」 「相変わらず堅いな」
首元に手をすべらせて進入させても彼女は動じない。 「ゲームをしませんか?貴女はそろそろ忍足先輩に飽きてきてるはずだ。俺にしてください、。本気で相手をしたくなりました。あんたが戻れなくなるほど俺にのめりこんだらアウト。忍足先輩をボロボロにした挙句に、結局忍足さんがいいっていうなら、今度は本気になってくださいね」 「本気に?」 「そう。忍足先輩に言いなりになって俺を楽しませてください。気安さと、目新しさで言えば可愛い後輩にはむかわれて真剣に愛されたら、貴女は落ちる。……そういう人でしょう?」 「……そうだろう」
もうこの地点で、一歩リード。 「同意しなくても、もらいます」 校内で、しかも見られるだろうことを意識しながらも唇を奪い――敢えて自分から忍足にばらす気もさらさらなかったし、嫌われたいとは思っていないから、秘密裏に、を条件に足そうと考えて、その腕をひっぱり建物の影で再び深く唇を重ねなおす。 「ゲームスタート……。ただし秘密裏に。無論最終的にばらすでしょうけれど、そのときはお互いフォローなしですよ?」 挑むように。 「愉しい」
壊すように。 |