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「……は?」 朝練の終わった更衣室で跡部が跡部らしからぬ声を上げた。 「せやから、跡部やったら何とかできるやろ?」 「だから、何のことをいってやがる?」 跡部は忍足と押し問答を繰り広げているようだった。 「そうか、やるねー……」 テニスバッグを片手に呟いた。 「んだ?」 ついでタオルを頭にのっけたまま宍戸が長太郎と滝の方を見たが、長太郎はわかっているのか分かっていないのか曖昧な笑みをたたえ、滝にいたっては自己完結していて、教えそうにもなかった。 「せやから!」 結局、回答を与えたのは本人だった。 「氷帝の帝王やったら、きとるんやろ?姫宮のクリスマスコンのチケ!」 「「「…………」」」 「ああ」と、まあ…… ――暗黙の了解。 沈黙の理由は忍足のここのところの豹変振りにあった。 「ああ、アイツのか」 跡部は「アイツのことだから送ってくんだろ」と答えた。 「まあ確かに格好いいけどね」 滝の呟きに幾人かが頷いた。 「ほんまに格好ええんやで?……ああ!今年はロミジュリ言うてたんや……コンサート言うから、舞台系は期待せぇへんかったっちゅーに……!!」 テンションはオトコマエに高い。 「あれがオトコの中のオトコや!」 『その直後、うる目で言われるとな……』 宍戸が正直に声に出すと、一種尊敬の眼差しが彼に対して注がれた。 「絶対やで!!!!専用掲示板で5万はくだらへんのや!」 捨て台詞(?)をはいて、走り去っていった。 「「「「「…………」」」」」 またも沈黙が走る。 「なあ、滝、侑士のやつ、一時間目って……?」 「……サボりだねー……。本当は生物だし」 遥か彼方、彼が消えていった方向は間違えなくコンピュータルームであった。 そのとき―― がさごそっ。 「おはよー……うるさいから目ぇ冷めちゃった……」 「おう、ジロ」 岳人が起き上がった物体A イコール 芥川慈郎に声をかけて手を差し出す。 「あとべ〜。忍足(あれ)、王子様本人に何とかしてもらえないの?」 寝ぼけたまんまの眼差しで跡部に聞く。 「んで俺がお膳立てしなきゃいけねーんだよ。そもそもとはそういったことは話さねーんだ……」 「へー」 「意外だな」 とは岳人、宍戸の感想である。 「もっと見栄っ張りかと思ってた」 確かに派手である。 「ファンとかいったら片っ端から食ってそうじゃね?」 恐らく「跡部みたいに」がつく。 「俺もそう言われてんだろ?」 「「「あー!」」」 しかし実際は違う。 「だから、いーんだよ」 跡部の言葉に、なるほどなぁと一同は頷いた。 「さ、戸締りするぜ?」 皆を追い出して、一人残った部室でこっそり 「……ま、一応チケットの手配くらいしてやるか」 携帯のナンバーをおす。 「あとよ……たまには野郎のファンにもサービスしてやれ。うぜぇ女(ファン)が減るぜ?」 どっちに対する忠告だか、協力だか分からないような台詞を付け足すのだった。 END |