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【SIDE 】
試合を見に行った。 ********************************** 「ミーティング……終わったわね?」 「ん……」 「行こ」 岳人の手を取った。 「でも侑士、放っておくと何するか……」 焦ったように岳人が言うのが聞こえたが、は 「別々にいた方がいいときもあるでしょ?」 ぴしゃりといって、手を引いた。 「百合……俺……」 「うん」 「なんていうか……」 「取りあえず帰る」 振り向かず隣も見ず、会場を後にする。 トコトコ…… ひたすら歩いて。 トコトコトコトコ…… 行きよりも長い道のりを黙々と進んで。
駅につくと二人分切符を買って、は一枚を岳人に渡し、二人で改札を潜る。 「叔母様たちは相変わらずね?」
「イコール留守」を確認して、五つ目の駅で乗り換え、運良くそのまま隣のホームに停まっていた電車に飛びのる。
もう数度遊びに来たことのある岳人の家につくと、鍵を受け取って慣れた手つきでドアを開けて、上がりこんだ。 「流石にここからは私には何もできないけど……」 立ったままいる岳人を手まねきで呼んで、目の前のうなだれた彼の、腕を自分の肩に乗せて、 「もういいよ、好きにして」 ――誰もいないから。泣いてもいいし、それ以外でも……。
言葉の外に含んだものに、の声も危うく掠れる。 「わりぃ」
は何かしてあげたかった。 「ううん」 抱きついてきた岳人を受け止めて、 「格好よかった」
普段あまり口に出さない賛辞を送った。 「……俺のせいで!俺が油断してたから……っ……」 意味をなさないような自責の言葉と、悔しさを零して。 「うん」
そのたびは同意でもなく、なだめるでもなくただ聞いて相槌を打って。 (少しイライラを出した方がいいのよ?)
いつもストレートな性格とはいえ、合い方の手前珍しく気の張っていた彼に、キスをした。 「……んっ……っ……」
余裕なく、求めるように逆に相手に繰り返され、熱が着実に上がった頃には、景色が転倒していた。 (これでよかった) 妙に確信した。 ********************************** 【SIDE 岳人】
指がゆっくりと滑り、キスが落ちる。 「……ぁっ……」 我慢がきかず、もれる声に、いつもよりも素直なを見つけて、岳人はそこら中を這わせる手を速めた。 (早く奪ってしまいたい)
でも最初はきついと散々聞かされていたから……。 「やっ……」
触れたとき反応の甘い、前の方に親指を滑らせてやると、少しだけましになったようだが、肩が震えていた。 「俺もう……」 言葉にならない声を出して、数本まで増やして彼女の中に差し込んだ指を一気に引き抜くと、 「……ぁ……ふぁっ……」 感覚に嬌声を上げる少女に間もなく熱いものをあてがう。 「………めぇっ……んっ!」 「力抜いて」 途中までできつすぎて溜まらなくなったから、もう余裕なんてなく命じて、かみ締めすぎて血の滲む少女の舌を自らのそれで舐め取って、何度も求めて水音を立てることで気をそちらにそらせる。 「くっ……」 隙をついて、今度は一気に押し込んだ。 「や!痛っ……やだぁっ……」
悲痛な叫びに気が引けるよりも前に、岳人の方が温かい熱に包まれて刺激に実が持たなくなりそうになる。 「い……いから……」
彼女の涙の滲んだ目でそういわれてはもう堪えようもなく、岳人は何度もその奥を突いた。何度も何度も……。 「ぁっ……ぁふっ……やぁぁっ!!!」
その度本気で泣く彼女に申し訳なく思うのももう後からのこと。 「ん……」
やがて疲れきって――快楽に堕ちてかもしれない――気を失ってしまった百合の横、自分もようやく今日の疲れが押し寄せてきた。 ********************************** 【SIDE 】
試合は休日。 (あ……)
脱力する。 (シーツも洗濯しなくてちゃいけないのに……) ソコに違和感が残って、その上さらに痛むのが恥ずかしく、もう何がなんだか分からない。 (情けないわ、自分……)
冷静に思うが仕方ないので横で寝ている彼氏の顔を眺めた。 (女の子みたいなのに……精悍だなんて卑怯)
やっぱりちゃんと男だった彼氏に誘われて、つい優しいキスを落とす。 「ん……」 その後、ついでに腕を取ってブンブン引っ張ったら、岳人はようやく起きた。 「うわっ!いてっ」 「おはよ、岳人。学校、遅れるわよ?」 冷たくわざと言った百合だが、直ぐに目をそらすくせで照れ隠しが見破られ、抱きしめられてしまった。 「馬鹿」 これじゃベタな「ばかっぷる」だ。 「………こんなの私のキャラじゃないのに……」
言って見せたら、笑われた。 「、学校は?」 「行きなさいよ。……私は後から……」 「さぼり?」 可愛げに覗きこまれて、百合は思わず言葉に詰まる。 「たっ……」 「た?」 分かっててやってるのか?と一瞬考えるが、岳人の顔は状況を理解しているとは思えない単純な疑問を浮かべていて、 (現況のくせに……) 殺意が沸かないでもないが、諦めて告げる。 「立てないの」 「えっ」 (赤くならないでよ)
はますます熱を持つ頬(多分真っ赤)を隠すように布団にうずめた。 (岳人も岳人で、帰ってきたら侑士侑士五月蝿いんだろうな……)
悪友、こと姫女の王子様のファンと化している噂の「侑士」君も、なんだかんだで結局「女」を全てきったわけじゃないだろう予感が、にはあった。 「天然は強い……か」 結局いいようにされている自分も決して嫌ではなかった、と納得して、一応着替えだけ済ませてからまたは惰眠をむさぼることに決めた。 **********************************
【SIDE 岳人】 「なんや。岳人が泣いとる思て慰めの台詞考えとったのに元気そうやん」
強がりかもしれないし、ダブルスの難しさを思っていつものコミュニケーションを装ってくれたのかもしれない。 (ちぇ。俺が何かいう必要ねぇじゃん) それが切なくもあるし、嬉しくもある。 「まあな。だって、俺らまだ高校もあるじゃん。やろうぜ、ダブルス」 軽口で、「本気」を返した。 「ああ。――せやかて、上(氷帝)いくとは限らへんで?」
ひらひら 「え?!」 岳人は思わぬ展開に真剣になった。 (侑士が別の学校にいく?)
それはいやだ。 「どこ!どこ行くんだよ!!おい!!侑士ィ!」 狭いベランダでつめよって、紙をとりあげようと逆側に手を伸ばしたものだからバランスが崩れた。 「危ないやろ」 間一髪、受け止めたのはやっぱり忍足で、 「だって!侑士!」 馬鹿した顔と、半ば本気の表情で、次に言った台詞は、 「姫女や」 「は?」 「女のふりして、女の園で三年間!!の側近を目指すで!」
急に岳人を萎えさせるに十分な御馬鹿丸出しのそれであった。 「侑士……それ無理だから」
笑いがこみ上げてくる。 (結局集まってんじゃん)
――仲いいな、俺ら。 「なあ跡部!また侑士が馬鹿言ってんだぜ!」
ちょっと聞けよな。 「アーン?」 変わらないあの調子で、 「どうせ、姫女にもぐるとかだろ?そいつじゃ無理だ。可愛くないしな。忍びこめるっていうなら岳人、お前のが向いてるぜ?」 とか声が戻ってきて、 「うわー!それもむかつく!」 近づいてきた跡部にいってやると、横からまた忍足が余計なことをいう。 「跡部こそ、きっと綺麗になるで。一緒いかへん?姫女高等部」 「アーン?これまた狂ったのか?おい岳人?」 「みたいだな」 岳人は相変わらずな自分達に嬉しくて、てんぽよく声を返した。 「まあ無理だ。諦めろ、忍足。…てことだ。来年もよろしくな」 「テニス部入部けってー」 はしゃぐのは特権とばかりに言えば、皆なんだかんだでその気らしい。 「オレもー」 寝ぼけたジローが答え、宍戸が頷く。 「なし崩しで結局侑士もー」 言えば、相方は苦笑してOKを出した。
「相変わらずやる気ねー」 「今度こそ勝つぜ」 その吸い込まれそうな強い瞳に、 「当然!」
岳人は身を乗り出して、皆を見た。 「俺はも追うんや」 忍足が本気でボケをかまし(むしろ最早真剣だと誰もが思っていない) 「そのまま一生追いつかずにいろ」
トンっと肩を叩く跡部が日常。 「ねえねえ、昨日の子だーれー」 とんでもないところから(寝ぼけジローの癖に!!)ツッコミが入って、「寝てろよ、そのまま」とか思ううちに、にやにや笑いの跡部と忍足AND宍戸に 「ほお、がっくんも大人の仲間いりかいな?」 「ほお、隠してんじゃねぇよ。いい度胸だな。アーン?」 「やるねー(滝の声真似)ばれてんの、激ダサだな」 問い詰められて、けれど見かけ(むしろ性格)によらず照れ屋なあの子のため、 「ジローの見間違え。あれは俺の親戚のねーちゃん」 「なんや、つまらへん」 「激ださ」 「………(にやにや)」
跡部はともかく、ばれては不味い相手(=相方)からは辛くも逃れ、ある意味少しだけ大人になった気がした。 |