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「付き合うことになったんだろ?いいじゃねーか?」 いいながらも跡部は違和感を覚える。 「よくないんや……」 缶を蹴って、忍足はベランダに腕をついた。 「アーン?何が悪ぃんだ?あいつをしとめるなんて中々できねーぜ?ファンが嘆いて大変なんじゃねーのか?」 ――もしかしてそれか? 「……むしろ泣いて喜ばれたわ。完璧なファンや!許すって薔薇の隊長さんにもお墨つきもらってんのや」 跡部の心配は杞憂に終わった。 「じゃあ何が問題なんだよ?」 「……本人」 「はぁ?」 「本人や……ほら、あるやろ?――ん?跡部には経験ないかもしれへんな。本当に憧れたもん手にいれるとどうしたらいいんかわからんのや。王子やで?上流階級や!それが俺みたいな庶民とおって……不安にもなるやろ?」 わけわかんねーよこいつ…… 「あいつがそんなこと気にするか?……そもそも庶民じゃねーだろ、てめぇも」 「ま、氷帝はボンが多いわ。確かにうちかてそこまで激貧やあらへん、中流上以上や。けどなぁ、跡部。あれはもう気品がちがうんやで?」 ようやく調子を取り戻したらしい。 「馬鹿か?」 お決まりの文句を返して(これもどうだろう?)跡部は忍足を無視して、教室に戻ろうとした。 ――これはのろけってやつじゃねーか? そういうことである。 「…………そうやな……」 顎に手をかけて、カラダの線を身体検査のように軽くたどって……真剣に逃げようとする跡部に昔ながらの「たらし顔」で忍足が迫ってきていた。 「何やってんだ?アーン?」 「跡部や……跡部やと思えばええんやな……そうか……跡部か」 「は?」 なにやらまたトリップしているらしい思考に跡部は疑問符を投げて、それから取りあえず…… バギっ 殴りつけておいた。 「痛いやん、何さらすねん?」 さっさと教室に入った跡部を追いかけて、忍足が頭をさする素振りを見せる。 「何すんだはこっちの台詞だろーが」 「あー……」 忍足は前の人間の座席を陣取ったが、既にまた怪しい目に変わっていた。 「あのな……言い辛いんやけど……そのな……」 「アーン?はっきり言えってんだ」 気色悪い。 「俺とデートせぇへんか?」 「は?」 今日三度目のフリーズ。 「何言ってやがる」 バキッ やっぱり殴りつけておいた。 * * * * * * * * * 「侑士か?どうしていた?」 校門ですぐさまを見つけて走り出す忍足を止めるだけの気力が岳人にはなかった。 「(や!)」 忍足は目が潤みそうになったが必死に言い聞かせた。 ――跡部なら、どうするんや? 「を待っとった。今日合同生徒会やて聞いたから、じきにくるな思うてな」 精神統一完璧。 「迷惑やった?」 騙されている……というか忍足が自分を跡部だと思っているとは想像もせず、は実に彼女らしい調子でそういったものだから、忍足は更に苦難に耐えねばならなかった。 「ん?どうかしたか?」 「いや……跡部が待ってんねん。ほな、いこか」 身もだえしたいほどの心地を抑えて言えば言うほど空回りでクールになり、そんな忍足には惚れていく。 「あー今度は侑士のやつ、何やってんだ?あれ、おかしいよな?」 「……そうね。なんていうか……毎回の目つきやら挙動不審以上に、あそこまで化けると感動すら覚えるわ」 だけ。 「まあもうのことだから、半分以上気づいているはずよ?どこか変だって。それで面白がってるんじゃないかしら?」 「さすがにそれは侑士が可哀想じゃん?くそくそ侑士!アホなんだよ、あいつは」 「騙されてるってワケでもないと思うわよ。が面白がるってことは……ほら、帝王と比較すればわかるでしょ?跡部が面白がるのは何よ?」 「あー……」 納得言ったらしい岳人は微妙そうな表情をうかがわせた。 「結構気に入ってんだな、あれで……あんなの侑士も」 「そうね。ただ、あのクールっぷりに瞬間でも目を奪われたのは事実だから……どっちに転んでもあそこはうまくいくんじゃない?」 そうつまりそういうことだった。 「なあ跡部」 「もうお前いいから黙れ!」 事情を知らされた跡部はますます眉間のしわを濃いものにしていた。 「ツレナイなぁ。ええやん?ちょっとくらい……」 「あいつのことはあいつに聞けよ」 「せやって……」 結局忍足は乙女のままだった。 「次は休日デートなん?どこにいったらええ?」 「てめぇで考えろ!」 をゲットするために走っていたときは散々調子のいいことを言って、女から情報を貰っていたくせに、なぜその手が本人には使えないのだろうか。 そう魅惑的な笑みを浮かべるに跡部は「分かってやがるなら何とかしろ」と悪態をつくだけだ。そんなことしようものなら「つまらないな」と言い出す彼女の性格が分かってしまうあたりが問題なのだと自分に理不尽にも腹を立てつつ……。 「いくら似てるからってあいつは女だろーが?」 呟いた瞬間、忍足が過剰反応を起して、 「そうか……跡部とはできへんことをすればええやん……せやって、そんときまで跡部の想像するんか?それはキツイなぁ。俺、女の方が好きやで?」 というものだから、「女と男だけの差で選ばれてんだとしたら、複雑だ」と感じて、 バキッ ここでも殴っておいた。 その後、「それはまずい……」と考え直した忍足が自ら 「のとこに行って来るわ、自分最近人のこと気安く叩きすぎやで?」 なんていう更に疲れる発言をおいて、去っていく頃には跡部は後で様子を見に来た岳人のみならず、長太郎や果ては宍戸、日吉にまで次々と同情されてしまっていたという。 END *恋に落ちた直後編 ゲームと微妙に被るため頭が必要な今日この頃……微妙に設定が違うからプチパニック |