4、いちばん
「おい、何持ってきてるんだ?」
ジャッカルの呆れ口調はいつものことなので気にもならなかった。
ガムか?と首をかしげるブン太である。
だが、ふと、肩に重みを感じて、
「ん?」
「ぴょ?」
(…………。)
妙なものと目があった。
くりくりした瞳が好奇心に輝いてこちらを覗く。
ひよこみたいな黄色の髪が頬にぶつかり、くすぐったかった。
かじりつかんばかりに肩から背中にぶら下がっているのはちっちゃな女の子だ。
「あ?んだ?」
くちゃくちゃ噛んでいたガムをぺっと吐き出して、質問ともつかないうめき声をもらせば、
「……まっ……」
相手も凝固してた。
「ま?」
「間違ったぴょ〜〜〜」
パニック状態に陥ってるようだが、自分を放すことはないらしい。
気付いたブン太はやむを得なく、彼女をひっぱって、おんぶ状態を止めさせる。
ついでに、目の前につれてきて、かがんで覗き込んでみた。
(へー……)
可愛いじゃん。
「何処の子だ……可愛いけどよ」
ジャッカルも横で同じような感想をもらしているが、その基準が小動物を見るようなものだったのかどうかは微妙な線だ(ジャッカルは小動物に弱いが、ブン太はそうでもない)。
ブン太はひとまず、小ささのわりに「むっ」として見せる強気な顔に関心して、ぽんぽんと頭を撫でてやった。
……なでる、というよりぐしゃぐしゃにする、というべきか。
案の定、気の強い彼女は怒って、
「になんてことするぴょ!!」
むぅっとますます口をへの字にして、ぴょんぴょんっと跳ねた。
(おもしれーの)
「間違えたんなら、仕方ねーんじゃねーの。自業自得だろぃ?」
ちょっと苛めたくなる。
言ったら、「」とやらは、
「?」
きょとんとした。
(ああ、自業自得ってのが分かんねーんだ)
「のせいってこと」
おめぇともお前とも君ともアンタとも……何だか上手い二人称が見つからず――見たこともないタイプのこの子に、名前をよんでやったら、
「くっ、意地悪だぴょ……そもそも人の名前を勝手に呼び捨てないで欲しいぴょ!ぴよこにはきちんとした名前が……」
「ブン太」
「ぴょ?」
「丸井ブン太な。ブン太でいいから」
だからって呼ばせろぃ?
言葉に少女は考えこんで、それから――
「仕方ないぴょね。許すぴょ」
偉そうに言って、またブン太の肩に飛びついた。
「いてっ」
抱きつかれた感触もちょっとした重みも悪くなかったが、わざといって反応見る。
「ぴょ〜」
横でジャッカルが「お前なぁ……小さい子をいじめんなよ」とか言ってるが気にもならない。本人の抗議をCHUと軽く唇で封じて(当然まだほっぺたで)ブン太はふと思った。
(で?俺と間違えたのって誰だ?)
は、真っ赤になって凍ってる。
後ろからは呆然としたままジャッカルがついてきてる。
ブン太は面白いような、面白くないような気分で、でも「ま、これからか」と妙な納得をした。
「とりあえず、の一番になってやるよ。な?」
そこから始めるのも悪くない。我侭は多そうだけど、と自分を棚にあげ、の顔をもっと近づけると、照れてか怒ってか背けられてしまったが、「いい拾いもんした」といわんばかりに、そのまま歩き続ける。
あまりに自然すぎて、誰も突っ込みを入れなかった。
「俺って天才的?」
……それは違うと思うが、ある意味でそうなのかもしれない。
何故ならこの日からしっかりはブン太になついたのだから。