0.でこぴん@(の続き)  

「むぅ……」

 何かとにらめっこしている小さい少女の様子に、ブン太はふき出しそうになるのを我慢した。

「んなに必死にならなくても買ってやんぜ?」

「駄目ぴょ。は……好きなのが選びたいぴょ」

「んだよ?」

 だから すきなのでいいっていってるのに。
 そう思うブン太である。
 近所に引越してきたこの黄色い毛玉は、ぴょこぴょこ跳ねてまわって、自分の脚に纏わりついてきた。
 可愛いなと、ちょっとだけ芽生えてしまった過剰は、淡いものでも、妹に対する憧れのような、そうじゃないような微妙な路線で、ブン太はあの日から覚悟したのだ。

(側にいて、俺が守ってやらぃ)
 はっきりとは言わないけれど。

(でも、まさか……)
 本当の妹かもしれない、とは思わなかった。
 ブン太はふと思い出す。
 
 あの日、偶々聞いてしまった会話だ。
 ベたすぎる――そう思ったブン太は割愛したい気分にかられたが衝撃が強すぎて忘れられなかった。

「……ブン太?」

 どうかしたかぴょ?
 生意気だと「お兄ちゃん」に呼び方を訂正させかけた自分を、浅はかだなーと振り返りながら、ブン太は首を傾げた幼い少女の頭をぽんっと軽く叩く。

「んでもねーや。それより、早く選べって」

「ん」

 くすぐったそうに、身をよじるの肩をきゅっと抱いて、ショーケースを指す。
 の誕生日でも、ブン太の誕生日でもない
 しかも、【今のところは】赤の他人―ーご近所さんであるだけだ。

(キョウダイって結婚できねーんだよなー……)

 不動峰の部長キョウダイをみてからかった赤也に、同意などしている場合ではなかった。

(同じ穴の「むじな」くらいならまだいいぜ……)

 問題はそんな生半可なものでなくなる危惧だ。
 手元の温もりと、匂い。
 その痺れるような甘さに頭が痛くなる。

「まじで勘弁してくれ……」

 ……と。
 つんっ

 頬をつつかれた。

「ぴょ?」

 もみじのような手が、ふにぃ〜っとほっぺたをそのままつねる。
 痛くはない程度の圧力。

「あのなー……」

 きめんだったら、さっさときめて……
 言いかけたブン太は凍った。
 の顔が目の前にあって(いや元々あったのだが近づき方が半端でなくて)かと思えば即座に

「ぴょ」

「……っ?!」

 衝撃的な頭突きをうけた。

(こういうときはアレだろ!……てか、なんで俺が……)

「……ごめんなさいぴょ〜……うう、届かなかったぴょ」

(なんだ?)
 とどかない、ということは、まだ何かあるのだろうか。
 ブン太は首をかしげる。
 すると彼女は泣きそうな、心臓によろしくない憂い顔のまま、

「……キス……したかったぴょ……」
 
 呟いて……。
 ついでに、もう一つ。

「ブン太の欲しいのが欲しかったぴょ……ブン太が……だったらよかったのに……」

(マジで勘弁してくれって……)

 お兄ちゃん、に籠められる言葉の意味に気付かないブン太は、俯いて真剣に頭を抱えたのだった。
 お兄ちゃんならずっと一緒に居られる――
 離れたくないの想いをを知らずに。

TO BE CONTINUED………

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