0.虹  

「虹だぴょ!」

 言葉と同時に、背中に違和感を感じた手塚は振り向いた。
 ……と、その隙に今度は、膝に何かが座り込む。
 義妹だ。
 一昨日そういう続柄になったばかりの彼女がちょこんと鎮座していた。
 何というか――猫か何かのようである。
 可愛い、とは思う。
 だがそれ以上に――

 ――何だかまずいような気がする。

 手塚は思った。

「……離れてくれ」

「なんでぴょ?」

 特有の口調で、彼女は自分を見上げて小首を傾げた。

「…………」

 瞬間、その年齢を思い出そうとするも、非常に曖昧だ。
 まあこれだけ小さければ問題ないか、と判断しながらも戸惑う手塚国光(15)。

「……ずるいぴょ……国光はいつもあいまいだぴょ」

「漢字にできない言葉をつかうな」

「……うっ……」

 潤んだ目で見つめられるとどうにも弱い。

 ――『』は義妹で……だからそんなことがあってはいけないというのに…………ん?

 いや、その思考回路こそ危ういだろう。
 ベッドサイドの眼鏡を取ると、すぐさま装着した。
 まじまじと見つめるが、やはり彼女は彼女で……とても小さかった。

 ――幼すぎるだろう

 その思考に安心した手塚だが、ふと触れてしまった頬に慌てて手を引っ込めた。
 冷静な表情で、

「……すまない……」

 そう呟いて目を逸らす。
 この時点で、何かに落ちかけていることを、彼は知らない。

「…ああ、綺麗だな……」

 だから静かに、彼女の見た空を見上げる。
 七色といわれているそれは、もっと曖昧で……でも彼女の目のように、きらきらしていた。

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 手塚が兄の場合は たぶん ほのぼの。