|
■ 屁理屈の境目――毎度同じパターンで――
そう、俺はあいつが心配なんだよ。 * * * * * * 「……何が言いたいんだ、千石」 また厄介ごとを背負ってきたに違いない千石にため息をつく。 「何って、南君。元気なさそーだし」 軽く言う千石清純に「お前のせいだろ」とずばり切り返すも、相手は懲りた様子がない。 「なに?なに?俺のせいだったりする?」 ふざけた調子で笑うと、ぺこりと手元のペットボトルを曲げた。 「ゴミ箱に捨てとけよ」 「そうする」 バシュっ 放り込んだペットボトルは宙に放物線。 「今度の子、可愛いデショ?」 「誰だか見てない」 不快だが、コイツには段々慣らされてきてる。 「そろそろ加減しろよ。女の子が傷つくだろ?」 言葉が嫌になるほど浮いて、慌てたけれど、平然と俺はフェミニストになった。 「そう?」 わかってるくせに?と顔に書いたコイツに、何もこたえられなくなるんだ。 「で今日はなんだ?」 目を逸らせて聞く。 「ナイショ」 いつものパターンだ。 「ああ、予想はつくけどな」 どうせあの人のせいだろう。 男なんて所詮――わかっちゃいるけど、コイツのせいでまとめられるのはいかがなもんかね。 ……で?俺はなんでこいつを止めなきゃなんないんだ? ********************************* 「オハヨ。南」 「ああ、おはよう。千石、どうしたんだ?そのアザ」 右の首筋にアザ。 「カノジョの男か?」 「……あー…そうだったらよけたんだけど」 「つまり敢えて食らったと?」 「そゆこと」 会話終了。 ********************************* 「で?怪我どうしたんだよ?」 「あのさぁ南、これからちょっとお出かけするから、俺先に帰るわ」 そう言い出したので、 「行けば」 切り替えした。 で、数分後………。 「なんでいかねーんだよ?」 俺はまだいる千石にびびった。 止められなければこいつは行くだろうと思ってた。 「本気だからさ」 千石は笑った。 俺は止めた。 「……悪い、千石。それはやめとけ」 「えーなんで?」 「なんででもだ!」 「なんでだよ?南がいけっていったのに?」 「なんででも!」 不毛そうに言い合ううちに気づいたんだが、俺が止めるのは女の子のためで……そう女の子のためで……あの人のためで……。 「……わかってるよ」 呆けた俺に千石は続けた。 「南は結局とめたいんじゃん?」 「何を?」 千石はそれ以上答えなくて、でも帰らなかったから、一緒に途中まで行ったんだけど……俺はエライ後味が悪かった。 「そうじゃない」 俺はそんなつもりじゃ…… 「なんで?」 「モラル的にまずいだろ。……一応ひとづ……」 人妻。 「別にいいじゃん?」 「だって……」 亜久津の……。 「どうして気にすんの?俺、わかんなーい」 怒らせる気でやってるんだろう。 「いいじゃん?好きなんだから」 駄目だというのも傲慢で、でも「道徳的にまずいだろ?いいのか?いやあくつの教育に……」と、いくら心が止めよう止めよう騒いでも、 「いいんだよ」 ほら、コイツの一言にはかなわない。 俺は開き直ることにした。 「やっぱり、お前には監督が必要だな」 「え?伴爺?」 「違う。生活監督だ。清純なんて名前のくせに、お前はやることやること、酷すぎる。取りあえず、俺が請け負う……。というわけで、優紀ちゃんには近づくな」 「南の横暴。……てか、今優紀ちゃんって……」 「あの人、本人でそう呼べって言うんだから仕方ないだろ?」 今まで呼んだことなんてなかったけどな。 「うわー、アックン!南が壊れた〜〜!」 「何言っても無駄だ。俺は……」 そう、俺は…… 「モラリストなんだ」 ついでにいうと、部長だしな。 そう、俺はお前が心配なんだよ。 そう優紀ちゃんが……好きなわけじゃ…… 俺は同じ穴の狢にはならない。*******コメント************ |