【SIDE 幸村】
PIPIPIPI……
出発45分前かっちりに、目覚ましが鳴ると、
「む……朝か」
がばっと、布団をあげ、規則正しく起きる。
眼はこするものの、次の瞬間、しゃきっとした顔で廊下に飛び出す。
顔を洗い、朝の支度を手短に済ませる。
ここまで順調。
朝ごはんは、仕事内容次第。
撮影のときは最低限。
ダンスレッスン、舞台のときはしっかりと。
他はいきがてら済ませる。
「――うむ」
続いて、今日の予定を確認。
・よくわからないが社長の面会(多分、何か企画があるんだろう)
・雑誌取材
・ポスター撮影
結論=朝ご飯は行きがけでOK。
――……ということは……
「よし」
ダイニングの手前で、すぐさま右向け右。
そうして、上着を置きなおし、おもむろに再びベッドの中へ――
「って寝るなーーーーーーーーーーー!!!」
「…さ、佐助……ねむ……」
「ねむ、じゃないでしょうが! 確かに、朝食は用意してないけどさ」
でもって、起きられなくとも目覚まし替わりに俺もいるけど。
そう続ける佐助に、「そんなつもりは」なんて言い訳をするも……
――眠いものは眠い……
そう、幸村は一見ちゃんとして見えて、内実ものすごーーーーく眠かった。朝、起きたその瞬間から。
「なんでそこまで支度しておいて、ベッドに入るの?」
「いや15分あるから」
「……旦那、むしろその15分のために急いで支度したでしょ」
「………ZZZZ」
「がああああああああああああああああああ」
これで、俺がいないときどうやって起きてんの、このひと、なんて、佐助は聞いてくれるが……
――大丈夫。15分後にはぱっちり目が覚め……る、のだ……
世にも珍しい15分かっきり……そんな二度寝する朝。
* * * *
【SIDE 元就】
「おい……」
起きろよ、という男の声は聞こえてる。
ばっちり聞こえている。
だが……
――寒い……。
眠くはないのだ。
自慢ではないが、低血圧で確かに若干朝弱い節はあっても起きられないほどの状況はそこまでない。
ただ一つ問題があるのなら、暑さ・寒さに極端に弱いこと。
――駄目だ…、寒くてかまわん。
布団などはいだら、しんでしまいかねない。
起きぬけの、微妙に寝ぼけている頭がそう計算を出す。
やはりぬくくなるには、布団の中が一番いいわけだ……が……
べりべりべりっ
ものすごい力で、引きはがされる羽毛布団……
「ぬ……」
ずーずー……
ひっぱりかえす元就。
「起きろって!」
「……起きている」
――ただ寒いから潜ってるだけで。
とはいえ、言うのも面倒でうだうだと更に布団にもぐりこむわけで……
「だああああああああああああああ!!!」
寝ぼけている、が……寒さゆえ本気 VS もともと力任せ得意な同居人の本気
攻防戦に焦れた同居人こと、長宗我部元親が結果的にはかつ。
というか、
「時間だっつってんだろ! 間にあわねーぞ。車回してやるからさっさと支度しとけ」
――タイムリミットか。
止むをえなく、引きずられる布団から手を離し
「痛ぇっ! イキナリ離してんじゃねーよ。いいから、これでもきとけ」
この家で恐らく一番温かい元親のジャンパー(さっきまで来てた室内用)を羽織れば……
――まあましだな。
ようやっと起きられるレベルの温かさが手に入るわけで……
「おい、急げよ? ホットドッグ作ってあるから持ってこい」
こくん。
頷くこちらに、更に世話焼きが、付け足す。
「今日はBスタなんだろ? 台場は面倒だが、ま、朝食取れるだけましだな」
実のところ至れりつくせり……。
そうは、言わないでおく元就であった。
――教えると調子に乗るからな。
実際のところ、調子に乗って、便利な扱いをしているのはどっちだが?
……と。
本人が聞けば怒りそうなことを考えているあたり、本当はまだ若干寝ぼけているのだろうか?
だといいな、と、同情をよせたくなるような、彼らのダメな朝。
* * * *
【SIDE 慶次】
「あ、こっち、こっち!」
手を振って、タクシーを捕まえる。
真夜中と朝の六本木では至極簡単なことだ。なんせこの街にはさんざん遊んだ挙句、大至急帰宅する連中がやまほどいる。
慶次はいつもどおり、気軽に、道脇にとめさせた車に乗り込むと、
「世田谷方面出ちゃってください。後は案内するんで」
最初の道だけ告げた。
――そんな遠くないっていっても、まあ距離はあるか。
とはいえ、ラッキーにも一本曲がれば後はまっすぐだ。
道順の説明を考えた後、計算するのは「その後」のこと。
――えーと……一回帰って、シャワー浴びて……
その時間は余裕で確保。
次にすべきは、用意だが、そっちも既に抜かりなし。
こういうことに備えて毎度簡単な換えと、持ち物は揃えてある。
――……すぐ出て楽屋で寝てればいっか。
「……あー……今日は幸村が静かだといいな……」
――まあ、そうはいっても、最近幸村PSPにはまってるから、静かか……
90%の確率でゆったり眠れそうな気がする。
ちなみに、毛利はもともと本番前までは干渉しないタイプだ。(ある種、ここだけはありがたい。もっとしつこいかと思っていた時期もあるだけに……)
そこまで一通りシミュレーションしてから、今すべきことに戻る。
タクシーのおっちゃんに分かりやすいよう、ちょっと大きめに声をかけ、
「すみません」
「……はい」と返事があれば、すぐさま、
「そこ左、後はそのまま……で、グリーンヒルの横あたりまで。……着いたら起こしてくれませんか」
言うだけいって、既に寝る態勢に入る。
これで、何とか時間は稼げる。
――50分くらいかな。
道路の混み具合を図りながら、ゆっくりと。
慶次は、目を閉じた。
まだまだ夜のつもりな、朝。
寝起き(というか朝風景。
ある種それぞれダメ というか どうしようもない三人。