「なっ、なんなのよ、あれ!!部長!」
佐助が思わず呼んだその先で、一般ピープルその1馬術部部長は、静かに言った。
「馬術でも、芸術を競うレースがあって……ああいうのは好まれるんすよねー。やらせてみたら楽しそうだし、あの人ならけがしそうもないなって思ってちょっと投げてみたら、あのさまっつーか……」
「へ、へえ。でも、政宗は隻眼なんだから一応さ」
「そうだぞ、気をつけないとあの方はあんまり急激な運動は……」
「ていったって、そういう扱いを嫌がるっしょ、あのひと」
「そりゃ……」
「う……」
おっしゃるとおりだ。
思うに、政宗が馬に乗るといいだしたのも半分は小十郎のせいだろうが、半分はこの頓着せず自分勝手にさせてくれる部長のせいではないか?
――自由大好きなひとだからつったってさ……
類は友を呼ぶ、のかもしれない。が……
何となくそれだけとも言い難いのは、次々と飛び出す因縁のせいか。
「そういやさ、部長の名前聞いてなかったけど……」
うーん?
どこかで見たような見てないような。
そもそも政宗がなぜ馬術部部長と知り合えたのか。
そこまで馬に乗りたかったのか、ふと気になった。
佐助がいえば、幸村が横から「あー!!!」と武田名物 今も昔も変わらぬ大声をあげる。
「に、に、にてござる」
「?はあ……」
「伊達に似てござる」
――え?
佐助は今まで斜めに見流していた、相手の顔をよくのぞいた。
確かに、目じりが少し似ていなくもないが……
「そりゃそうでしょ」
相手はきやすい感じでにっこりと笑った。
「伊達成実。俺、あの人の従弟だもん」
「あああああああああああああああああああああああああああ!」
「……嘘だろっ」
伊達三傑。小十郎と鬼庭にならぶラストの一人、伊達藤五朗成実。
前世でもさり気なく顔は合わせていた相手だったのだ。
――そのうちのひとりが何故またこんなところに、都合よく配置されちゃってんのよ!
そんな佐助の悲鳴は飲み込まれ、幸村の叫びに驚いた馬が突進してくるのは数分後。暴れ馬を綺麗に沈めて、さくっと柵の中に成実が入れるのはわずか数秒での出来事。
大騒ぎに巻き込まれ、気づいて戻ってきた政宗に、佐助が恨めしげな声を上げたのは言うまでもない。
「あのさ、なんで部長とか紛らわしい言い方してんだよ。あのひと、あんたの従弟なんだろ」
「ま、な。俺もさっき知ったばっかだ」
「は?」
「なんかわかんねーけどそうらしいな。ってかまだオヤジとかにもきいてねーし。本人がそういってるだけだがよ」
わからねーが嘘じゃねってきがするから本当なんだろ。
と、軽口をたたいた伊達政宗に佐助はかける言葉もなく――
やがて、気づく。
――あれ?成実もまさか……
にやり。
幸村に、しきりに何やら話しかけられている相手がこちらにちらりと顔だけむけて笑った。
――覚えてんのか!!!!
小十郎にはいわないでおいてね。
と、口だけ動かして――忍びにしかわからないかのような術を使った相手に、佐助は絶句した。
だ、同時に――
大丈夫。俺も覚えてないことにしたいから。
ただただそれでも政宗とは話したかったのだ、そう告げる瞳に偽りはなかったから。
だから、佐助は脱力した。
今の世は危険もなく――
かつてのしがらみもない。
だが縁だけは削られない。
自分と主がそうであるように、覚えていればそう願うのは当然で、それは悪いことではないと……遠回りに肯定されたような、そんな気がした。
――こりゃ、参ったね。
覚えているも忘れるも、同じように。
逃れられないからこその、運命なのだろう。
後半のおまけモブは、愛ゆえに成実。
伊達陣営叩きに行くときは、成実がでてくるたびにヤンデレになってつっこんでいきます。すきーしんでー。とかもう病気。