自動ロック解除式の出口は内側からはフリーパスだ。
そこを通り過ぎると、左手に郵便受け、右手が駐車場へとつながっている。
・・・・・・と、いつもの道を歩きながら、元親はふと違和感を覚えた。
「ん?」
なんせストーカー被害には(同居人のおかげで)慣れきっている元親である。
雰囲気で人の気配を察することも、悲しいかな出来るようになってきた。
だから、そういった類のもので【ない】判断も出来る。
――ああ、新聞か。
そういえば、郵便物もとってなかったな。
思い出して、左手の郵便受けを見て……
「?」
帰宅時からの違和感の正体に気づいた。
何も入っていないのだ。
いつも早いこの地域だが、さすがに午後11時を回っている。夕刊は届いていてしかるべき。
それがない。
あわてて、手を突っ込む。が、同時に、下に落ちている新聞が目に入る。
「新聞配達もドジなやつになったってか?」
――いや、違うだろう。
指先に感じる違和感は、カミソリレターや嫌がらせの瓶の類のときとにているようで違う。
「お友達のいない元就君には何も届け物がないってか?」
な、わけあるか!
こんなに必死に叫べてしまうのが悲しいが、何せ今日は請求書の到着日なのだ。
最低でもガスの明細書がないのはおかしい。
それから携帯電話。
仕事用で持ち歩くことも多いが、そちらの電源を落とすことの多い元就のために、提案して、二人用の携帯をもっているがその詳細は紙で送られてくる。
ほかの相手にばらしていないかお互いに確認しあうために。
「浮気チェックかよ!」と最初こそ抵抗したものの、実際ストーカーやら何やら深刻な被害にもあっている人気アイドルを見て、この恒例行事に口出しはしなくなった元親だ。
その、わざわざ印字してもらって、発行されてくる請求書がない!とは・・・・・・・・・・・・
「やべーな」
可能性は十分にある。
郵便受けは開錠が必要ではあるが、薄い一枚の封筒程度ならば入れられ方次第で取り出せなくもなかった。
あわてて、ほかに到着が見込まれるものを確認する。
1、オークション入手したボトルシップ小冊子
2、結婚のしらせ(前のマネジャーから「ハワイにいるからおくるね」といわれてたのでそろそろのはず。業界的問題はないが個人情報なのがいただけない)
3、ちらしの類
3はいいだろう。そもそも捨てる。
1はよく見れば入っていた。もっていかれなかっただけいいが・・・・・・元就の趣味としてどこかで変な噂が立たないことを祈る。(AVの通販とかじゃなくてよかったとマジで思う、おバカモデル20代)
2はおとなしく郵便受けに入っていた。
時計を見れば午前1時。あっちも最悪本番は終わっているだろう。連絡くらい許されるはずだ。
あわてて、携帯を取り出し、履歴を押した。着信も発信も全部同じ人物で埋まっているので苦労しない。
そのまま2コール。
不機嫌そうな声とともに、「そろそろそっちをでるのか」と不遜な発言がある。が、これもひとまず無視。(いつもならつっかかっているが、そんな余裕は今ない)
「郵便受けがやられた」
「で?入ってたのは何か?カミソリレターなら・・・・・・」
「ちげー。請求書がとられてる。あと・・・・・・ん?なんだ?」
「どうした?」
一つ一つものをとりあげていくと、奥にかちゃんと何かの感触があった。会話中にもかかわらず中断して、思わず確かめる。
「携帯?」
「は?」
「携帯だ、つか、なんだこれ。しかも新機種とか・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
――どうしろと?
二人の心境を表すといえばこれにつきる。
「まあおそらくお前に持っててほしいってことなんだろうが」
「なぜ我がそんな恋人同士のようなことをせねばならん」
「しらねーよ。てか、恋人とかいってんじゃねーよ」
先ほど同棲相手でもねーのに、浮気チェックでもねーのに、俺らなんで携帯独占とかしちゃってんだろとイケナイ想像をしかけていただけに、げっそりする。
「なぜきれる、鬼よ」
「あー」
説明するのもますますへこむ。
やめておこう。どうせ必要なのだ。仕方ないのだ。
言い聞かせて、話を戻す。
「こいつは管理人に処分頼んどく。あとセキュリティ強化もしといてもらうからよ。それより、問題は――」
「よい。早く迎えにくるがよい。話はそれからだ。今日は我も切り上げる。どうせ打ち上げを兼ねた飲み会のようなものだ」
「顔つなぎはいいのかよ?」
あんまり横との顔つなぎで仕事をとることは好きではない元親だが、だからこそ売れないことも、そういう営業努力も必須であり、仕事の一端であることも悟ってきた。
何せかえってきてはぐったりして・・・・・・好きでもない人にもまれてもがんばっている毛利を見ていると、あながちバカにできないところもあるのだ。
そんな毛利だからこそ、今日午前3時とかいてまで出たい顔つなぎである想像もつく。
ところが、尋ねたこちらの気遣いもしらず、
「30分で来い」
無茶ぶりとともに、ぷつっという音。
つーつーつー
寂しい音に、元親の肩ががくっと下がる。
なんて自分勝手な・・・・・・
思うが、後の山。どうせ、自分はこの人使い之荒い人間のもとにいるのだ。わりとなれてしまってきたのだから、やむを得ない。居心地も今やそこそこ以上(本人は認めたくないが同じ風土をいきた人間だけあって、住居の趣味がにているのもある)
「まずは管理人部屋か」
そのために24時間起きている相手だけに、遠慮はない。
ずかずかと一階奥の部屋を尋ね、ぼーっとした管理人室の住民に、いきさつを説明。
ある程度こちらからも払うからとセキュリティにかかる経費を計算してもらうよう、伝え、気持ちの悪い携帯を渡してから、駐車場に向かった。
時刻は既に7分経過。
いそがねば、30分での到着は無理だが、それくらい許してくれるだろう。
脳天貴な計算にヘッドライトがほの明るい光を照らしていた。
まだ続く。