「っ」
避けろと言う間もなく、爆破音が耳元に響く。
風圧と硬く押しつけられた何かに、頭がくらくらする。
【そのままに】
「さす――」
耳に直接届く響きは、声だったのか――彼の能力かわからない。
佐助……幸村の部下はそういった力を持っている。
「おさまった。…いいよ、旦那、起きて」
言われるなり、腕をつかまれた。引きずるように立たされても、まだ視界が歪んでいる。
「……すまん」
――また助けられてしまった。我に返ったときには、既に敵は空の彼方だ。
爆撃は止んだのだろうか。
「あちらさんも、まさか、こんな特区に俺らが忍びこんだとは思わないっしょ」
「……口を慎め」
「はいはい、ゆきむら中尉殿」
「む…」
「それより――」
見てよ、と佐助が建物の方を指す。
黒と赤の旗――織田軍旗、魔紋様。
「本拠地か」
「だね」
「――今回は偵察だけだぞ」
「分かってる。――てか、旦那、お偉いさんがここまで来るもんじゃない。何度もいってるけど」
「分かっておる!だがっ……」
「正規の中尉殿なら、部下の怪我のひとつやふたつ 心配すべきじゃない――。そしてアンタは、大将のかわりに……」
「みなまで言うな」
「中尉」を装って……幸村はここに潜り込んでいるのだ。佐助の本来の上司になりかわって。
「頼む……幼馴染として」
「……いいよ」
肩をすくめて、ぽんっと頭に手を置いた佐助に、幸村は何もいえなくなる。世話役同然の幼馴染……かつてからの子供扱いは、軍内部ではすっかりみられなくなったが、こういった場だけで出る。
――ズルイではないか。
佐助はけっして故意にふるまっているわけではなく……規則規律で自分らの関係を見破られないよう、普段は精いっぱい演じてくれているのだが、痛む気持ちばかりはどうしようもない。
「……仕方ないじゃないか」
心配なのだ。
おやかたさま――彼の本来の雇い人、幸村の養父のように、どっしりとかまえてなどいられない。
そう、信頼はしていても……気にかかるのだ。
彼は、幸村の唯一のひとなのだから。
唇をかすめて出て行った佐助の後ろ姿を、今はただ待つ他なかった。
パラレル おちつけ。