【SIDE 信長】
流石に動けずくたりとなっている女を前にどうも出来ない。
そうは思いながらも、もう一度同じような戯れを繰り返さざるを得なかったため、罰が悪くて、信長はなるべく反応しないよう気をつけながら身体を清めてやった。
「信長さ……」
「寝てていい。後で送る」
「うん」
珍しく、幼い答えに、髪をなでて返す。
本当に疲れたのだろう。
無理をさせる気はなかったが、結果そうなったかどうか、男の身には分かれない。
「責任はとる」
この先がどうなるか、そこは不明。
もっといい女もいるかもしれないし、他の女に手を出さないかどうかも誓えるものではない。(意外と即物的な自分を知っている)
にもかかわらず、誓えるのは、彼女が望むままにそばにいること。
勝手についてこい、とはひどい言い様だが実際そういうつもりなのだから仕方ない。
かつてのように一歩後ろでなくともよかった。
並んで戦うのもありだろう(某元配下の最強夫婦を思い出すのはいかがと思うが)
≪――蝶は羽化するか?≫
脳裏に、さきほど言われたわけでもないのに、松永らしきひとの問いかけがあった。
静かに、応える。
「羽を休めただけ。最初から蝶は蝶よ」
彼女以外を求める気もないくせに、かつての彼女だけでは嫌だった。
わがままなのはどちらだろうか。
≪今欲するものと、かつて欲したものとは別だ≫
そう答えたが、どちらにせよ同じなのだ。
拘らぬと決めるも、こだわると決めるも、どちらも自然ではなきこと。
明鏡止水……気にするもしないも、ただただあるがままを受け止めるだけの器と、その覚悟。
それが、今の己には欠けていたようだ。
明け方の冷たい風から守るように、その熱を覆えば、飛び損ねた蝶は葉の下の茎にしがみつく様に脚を絡め、信長の動揺をも絡め取る。
腕の中にいる少女が現実であれば、あとはどうとでもなる。
何が芽吹こうが芽吹くまいが、己が傍に立つよう、努力する番だ。
「守るなどとはおこがましい」
平手は愚か、信長自身にすら「蝮の娘」たろうとした姫を抱え込んで、信長は始めて、自ら安まった気がした。
最期まで、守られていたのはどっちであったのか。
答えは出ない。
ならば、これからの世で見つけるしかないのだ。最期まで横に或ることで。
手元に答えの鍵は揃ったのだから。
ちょっと分けてみた。微妙だったらもう一度分割を戻します。