「わー、すっげー」
「ずっりぃよ〜」
「けんちゃーん」
「あー?」
「おすな遊びー」
――……これは何だ。
毛利元就は、目の前の光景に茫然とした。
雑誌の撮影と言われ、指定された場所にたどりついたはいいが……
「慶次か」
「あー」
眼の前に子供の群れ。
平日の午前中だというのに、凄い混雑である。
少し大きめの公園ではあるが、遠足にでも出くわしたのか
「これはどうなってる?」
「これはって、俺に聞かれてもね」
「子供がいっぱいだぞ!」
「あ、うん……幸村、まぎれて何処に行ったかと思ったよ、うん……」
――確かに。
幸村がすっかり子供の群れにまみれているものだから、珍しく遅刻かと思った元就である。
慶次の気持ちは分かる。めちゃくちゃ分かる。
――が……それはいい。
それより、今元就が気にかけているのは、この状況で撮影するのかということだ。
スタッフは用意をしているらしく、待機のバンが奥に一つ。
しかし、なかなか降りてこない。
そんななか、待機させられているわけで……
「ま、奥様方がいないだけましじゃない?」
「だが……」
「あー、なりさま、子供苦手そうだからな」
「苦手そうじゃない、苦手なんだ……」
苦虫をつぶしたように言う、その横を、ちょこまかと小さい塊が走り抜けていく。
ぎょっとして、足元を見ると、
ぐいぐいっ
ぐいっ
引っ張ってくるつぶらな目二つ。
「わー、はんべぇおにいさんだあ!!」
ソノ叫び声に、寄ってくる幾つかのちっちゃなかたまり。
「「「「はんべえおにいさーん!」」」」
「なっ」
違う、そんな名前じゃないぞ、と焦る元就の隣、
「おお、半兵衛お兄さんか!」
なぜか、訳知り顔な幸村。
元就を二度ほどちらりと見た後に「うむ、似ている」としきりに頷いてくる。
「何が?」
「ん? 知らないのか?」
「そうだよー、しらないのー」幸村の質問にハモる子供たち。
「朝八時だぞ! 半兵衛お兄さんはBHK教育番組【算数なんてこわくない】のお兄さんなのだ。変身できるんだぞ?」
「へえ、……で? 元就に似てんの、彼?」
「おう。そうでもないと思うのだが……」
「てか、幸村って変な番組見てるなぁ」
感心してないで、止めてくれ、と言いたい。
慶次と幸村がそう口走っている間も、子供たちが
「やって、やって! さんすうかめんやって!」
「ひゅんひゅん〜☆ポーズやってー」
「ねえ、はんべえおにーさん」
「えー、やんねーのかよ、つっまんねー」ETC……
騒いでいる。
げんなりしながら、助けを求めるも、残る二人と言えば――
「半兵衛お兄さんやってあげなよ」茶化す慶次と……
「………(期待のまなざし)」 子供と一緒になって待っている幸村。
これもう、圧倒的に居心地が悪い。
――どうしろというのだ!
叫びたいが、叫ぶに叫べない。
子供包囲網の真ん中で、視線を感じれば、再び幸村がこちらをうらみがましい目で見ていた。
「……まだ、か?」
ぼそりと告げる同僚を前に、「そもそも何を」と問い返しかけたが最後――
「みんな、一緒に呼んでみるのだー。せーの、はいっ」
「「「「さんすうかめーん!!!」」」」
掛け声の係まで、幸村はやってくれてしまった。
素晴らしいタイミング、素晴らしい気合いの入れ方だ。
げらげら笑いこけている慶次はもう頼りにならないが……
このままいても、子供の援護射撃に幸村がひたすら攻撃を仕掛けてくるのみ。
味方はゼロ。逃げ場がない。
――万事休すか……
もう、やってしまえと、悪魔が耳元に囁く。
その間も、幸村が横で丁寧にこっそりポーズを教えてくれているのが憎い……微妙に教育テレビの癖にダンスのふりがある登場シーンが苦しい……。
――なんなんだ。この得体の知れない期待の眼差しは……。
なんだというのだ? このプレッシャー……。
たかだか雑誌撮影でちょっとこんなところで なぜこんな子供らに囲まれるのだ?
そもそも、何故、ロケだった?
スタジオでもいいだろう?
――何がいけなかったというんだ。
頭を抱える。
――寒いし、別に中でもいいだろう。というか、自分は寒さにはとことん弱く……スタッフとて知っているはずだというに……。どうしてくれよう。
……いや今はこの現状を乗り切ることが先だ……ETCETC
エンドレス 自問自答タイムが始まるも、もう周囲は待ってくれない。
「「「「じぃー」」」」」
子供たち(+幸村)の圧力が痛い。
「ふっ、さんすうかめん、見参! ……僕には…こんな問題、ただの通過点だよ、秀吉……?」
幸村の口ぱくどおりに言ってみたものの、よく分からず首をかしげる。
そんな元就をよそに、なぜだか子供たちは沸いているようだったが……(そして慶次は笑い過ぎて涙を流していた)
ちなみに、秀吉とは さんすうかめん@半兵衛の相棒のゴリラのぬいぐるみです。