「は?」
佐助は口をあんぐりあけて、かつての主を眺め見た。
今の時代じゃあ、ただのクラスメイト、である(一部に不本意ながら、彼の保護者的な見方をされているが、誰が何と言おうとクラスメイト!である)
元々憚ってなどいないが、どんなに驚いても叫んでも失礼には当たらない。
「えーと、俺様、よく聞こえなかったんだけど……」
何せ、彼とは不釣り合いな言葉なのだ。
「もてたいと言った。当然だろう?」
この時代なら、と、あとに続くセリフも何となく想像はつく。
つくが納得はし難かった。
そりゃ、この状態で「破廉恥!」を叫び続けられてもおいおい高校生としてどうよ?という他ないが――
――あの真田のダンナがねぇ。
感心する。
むしろ頑張れと思う。
だが……一番しっくりくる感情といえば、「うわー大変だよ、これ」というマイナスのもの。
なんのかんのと幸村を育てたものとしての、さみしさか?といえば、それも違う。
素質的に無理があるから?というわけでもない。
幸村は、もとはいいのである。もとは……
――暑苦しいっていうのと、まだちょっぴりシャイなとこがあるのとで、あんま女の子受けしないけど、おねーさんには可愛いとかって好かれてるし。
だが、何故前向きに考えられないかと言えば単純な話。
面倒くさい……
この一言に尽きる。(そのまま言っても持前の強引さと、傲慢さで押し切られるだろうから、言葉を選ばねばなのだが)
ちょっと考えて、佐助はふと窓際の方に目をやった。案の定まさに女子に囲まれてる人たちがそこにはいる。
「ねえ、旦那。俺なんかよりあっちに聞いた方がずっといいと思うよ」
学校一人気と名高い、伊達男、政宗。
たかる女子を交わしながら、さっさと席に向かっている。
その横で呑気にしているのが長宗我部元親。
こちらもだいぶモテていて、昨日も、放課後門の前で他校の生徒に告白されている現場を幸村とともに居合わせた経緯がある。
それだけに、納得したのだろう。
ぽんっと。音が出そうな手の叩き方をして、幸村は猫まっしぐら二人のもとにむかっていた。
「やれやれ」
――ごめんね、二人とも。でも俺様も、旦那にもて指南なんて無理むり!
そもそも今日も今日とてバイトなのだ。
放課後付き合うにせよ、時間がない。
「取りあえずっと」
今は東西、二匹の鬼のお手並み拝見と行きましょうか。
佐助は、わざと遅れて、三人に近づいた。
* * * *
「あー?」「Ah,hann?」
予想通り、というか、「ですよねー」と頷きたくなる反応。
元親も政宗も、眼を丸くして幸村の方を見てる。
前世の記憶のないふたり、ですら、これである。
普段の幸村から「もて」の言葉はなかなか想像できないのが現実なのだ。
破廉恥!と叫ぶことは減ったとはいえ、1に部活。2に部活、3,4が練習、5が部活、の幸村である。
しかも、休日のほとんどを男子とつるみで――つるむ相手は自分らなのだが、その時に限って何となく暗黙の了解で、なんぱ・逆ナンの類は避けてる自分らがいる。
そんな幸村に何があったのか。
二人はそちらの方が気になって仕方ないらしい。
「女か」
「違うでござる」
「他にねーだろ。てかまあ元々服とかアクセに興味あるタイプじゃないぜ」
「む」
――あーダンナ、口調戻ってる……。
注意も諦めたのでそのまま詰め寄られる彼を見ていると、やがてしどろもどろに言い訳を始めた。
まあまとめれば思春期らしい好奇心と、つるんでる面々の問題らしい。
曰く
「興味がなくはない。
にも関わらずお前たちが俺がいないときにかぎってナンパだのしてるからズルイ」
うらやましい、らしい。
まあ実際裏では学年人気順位上位組だ。
男子生徒も羨むもて度に、幸村があてられてもおかしくはなかった。
「といわれてもな」
自覚はあるらしいが何が受けてるか実はあまりしらない二人である。
そのうえ彼等の場合、女子にというより
「てか俺、どっちかっていうとヤローにもてるっつーか慕われるタイプだし」
とは長曽我部。
「なあ?」
「俺もだ」
そのふりに答える元毒眼竜。
「「……知ってる」」
どーしてだかと首をかしげる二人に、対して佐助は図らずも、幸村とハモっていた。
瞬間「アニキ!」だの「筆頭!」だのと叫んでた面子が浮かんだのは自分だけじゃなかったようだ。
「眼帯は、どうしてかしょっちゅう物貰いになるからでファッションじゃねぇし、服もなんとなく好きなもん着ててこうだからよ」
天然もの長曽我部がいえば、政宗は政宗で、
「俺はわりと選ぶの好きだが親父が……あれだし」
あれ=ヤンキー というか、元ヘッド。
その手の方向に偏りがちな政宗は「許されるレベルに抑えてるがあんたにゃ派手だろ」と聞いてきている。
なんのかんのぼっちゃんな出自の幸村である。
「センスは悪くねーし、浅井とかにきけば?」
等と言われる始末。
まあそれに対し、
「浅井はもてないであろう」と、スッと返す辺りが天然ひどいのだが、事実なので仕方ない。(見た目はいいはずが、「うざい」だの「あざわい」だのひどい嫌われようなのは、校則の取り締まりイメージが強すぎるせいだろうか)
「だいたいもてんなら、猿、お前だろ。センスいいし」
「いやいや勘弁。政宗たちほどじゃねーって。てか【恋】だのって言うなら慶次じゃない?」
――前田夫婦とか魔王んとことかは別だし。
因縁なく、一番彼女ゲットしてるお人っていえば、風来坊くらいだろ。
こそっと思うが、事実慶次はもてる。
反面、フェミニストがたたってふられやすくもあるが、彼女のいる率でいうならナンバーワンだ。
幸村も学べばいい。
――というか俺様もたまに羨ましい勢いだっての……
佐助はこっそりため息をついた。
ところで、幸村はというと、提案に何やら激しく感動したのだろう。
ぅおおと叫んでる。
そして、そのままの勢いで、感謝をのべて走り去っていった。
「おいおい大丈夫か、あいつ」
「あれがCOOLじゃねぇんだが分かんねーんだろうな」
「――まあ」
「ダメだったらまた戻ってくるよ、あのパターンは……」 と忠告しながら、「あれでこその真田幸村なんだよなあ」と佐助は納得している。
結局、二人に通じるはずもなく、
「うちの女子も部活中の幸村みて、ぶっちゃけときめいたって言ってたぜ」
「真剣なとこがかっこいいし、普段とのギャップもありってさ」
「けどあいつ、話聞かねーとこあるからな」
――うんうん。
それ、もっともなんだよねと。
そこへの否定要因はもはやない。
――素質もあり実際もいいのに、どこかズレてる――
総じて もったいないひと
幸村の女性からの見方は結局のところ、その評価からずれないのだ。過去も今も。
なのに、身内びいきで、
「ま、本当んとこ、そこがよかったりするからさ」
なんて言ってしまったりするあたり、
「お前も甘やかしすぎ」「身内びいきのせいで気付かなくなってんじゃね?」
佐助も佐助で、あまり変わってないというのが本当のところなのかもしれない。
ふと我にかえって、ここはかばうところでもないよなぁと思うに、
「あれ?――だとしたら、俺様若干貧乏くじ?」
佐助も気づいてはいるのだ。
だが、実際災難としてふってくるまでやめられないのだからしかたない。
結局、いくばくもしないうちに慶次が「ありゃだめだ」とさじをなげにくる――。そして、再び佐助が巻き込まれるという素晴らしいループがあるのだが、なにはともあれ学園は今日も変わらず平和であった。
END?
ようやっとかけた日常話。補足話たぶんかくとおもう。もっと長かったんだ。最初は……。