「黙ってな。したらよくしてやるよ?虎にも可愛がられたんだろ?」
言えば歪む顔が心地いい。
そのはずなのに、何もが足りない。
「それともあの忍びか?」
Ah? 続ければ怒りに眼が揺れる。
――そうだ、もっと愉しませろよ。
指先が彼の熱を掴み、ぬるりと吐き出させると半端に解放する。
別の責め苦に、その赤が刹那さを帯びる。
「はっ」
馬鹿にするように、ねめつけてやれば、低くうもれるばかりで、息に悦が混ざる。
恥辱に染まるこの主を見たら、あの忍びは、あの軍師はどう思うのだろうか。
それすらも耐えて見せろというのだろうか。
――どっちでも関係ねぇ。
再び煽るように削りとったばかりの爪の凹凸で、玩べば、雄の形が起ちあがり、怒りに眉が震えている。
「目、とじんなよ」
「言われずと」と応戦するかと思えば、従順に耐えの姿勢を崩さない。
男の心は、ここには、ないのか。
怒る真田幸村はあれど、耐える真田幸村は無でしかない。だから、無為につつくな、と、告げた小十郎の正しさを今さら知る。
「興ざめだ」
一度煙を立たせられた若い虎と、冷めた竜。
にらみ合うでもなく、解放された虎は、その場に何とか座り込むことを免れる。
「臣下に下ったでもねぇ、もっと愉しませろよ?」
それが奥州流だ、You see?と、なぶる瞳のままで告げる意味を、感じているのだろうか。
ハッと、低くくぐもったものを漏らして、ぐっと下から竜を仰ぎ見るのだ。
伊達政宗は、その姿を滑稽とは思わない。
その怒りにこそ、本来の悦を取りもどす。
早い話、色を本当に感じたのはその一瞬だったのかもしれない。
「誰かつきあわせるか」
あとの始末を考えぬよう、その扉の奥に虎を閉じ込めると、自分も別の檻を求めて、奥殿に踏み入った。
※破廉恥とかではないがあれげ。