【SIDE 佐助】
「ツンデレとは何だ?」
「は?」
幸村がおかしなことに興味を持つのはよくあることだった。佐助は、それを知っている。
ちょっと前は「萌え」だった。(あのときも相当苦労したあげく、とりあえず可愛くてたまらなくなる感じなのだと無理矢理なっとくさせた)
その前は「ぱちる」
あんたマジ、いつの人だよといいたい。
400年前を引きずっているわけでもなく、半端なお笑いや、流行りの音楽はちゃっかり楽しめている主である。
「――で、何で今度は、ツンデレ?」
――また風来坊かな。
情報ソースを頭の中で特定しながら、佐助は、聞く。
「直江に借りた漫画にあった」
「何かりちゃってんの」
変なんじゃないだろうな。
佐助は疑心暗鬼になって、幸村の手元をみた。
とっくにお目付けから解放されたはずが、自分には主の奇行は許せないらしい。
ところで、幸村が持っている漫画は、赤い表紙はみるに、どうみても、ただのスポーツだった。
「てか、冷静に考えるとあの人、結構堅いもんね」
へんなもの買うとは思えない。
――それよりどうしてくれよう。
説明が面倒くさい。
「佐助」
「何?」
「今説明が面倒だと思ったであろう」
「………何のこと」
「ごまかすのが下手になったな」
ーーその必要がなくなったからだよ。
とはいえ、ここまで読まれてしまうとばつが悪い。
転生するごとに毎度記憶を持っていたわけでもないのに、なんていうことか……
――って、深刻に考える場面でもないし。ま、いっか。
適当に投げてしまおう。
あいにく、ここには幸村の疑問を、ぶつけられればきまじめに答えてしまう損な気性のひとも、いてくれる。
「伊達さんー」
「んだよ、気持ち悪い呼び方しやがって」
「真田さん家の幸村君が疑問だって」
「あ?」
今度は何だ?……と、ぶつぶついいながら、廊下のはじからこちら側まできてくれるあたりが、もう、この時代での彼の性格を表している。
「――律儀。もとからそうだったのかもね」
「なんだ?」
睨みつける独眼竜こと伊達政宗を軽く手で制し、
「んーん、なんでも。……で、はい、旦那、質問をどうぞ」
幸村に先を促す。
「お、おう。すまない。その……つんでれ?とは何か、博識な政宗であれば知ってると思い、その……」
「Pardon?」
「いきなり英語使わなくても」
いや、それくらい避けたい、というか聞かなかったことにしたいのはわかるけどさ。
佐助は、本気で答えをまつ幸村の横で、まじめに答えを拒否している彼に苦笑した。
「何いってやがる?」と目は訪ねているが、あえて口に出されないところをみると相当頭にきているのだろう。
「あー、この人これで本気だから」
わかってあげてね、政宗、とのぞきこむが、相手の肩はさりげなーくぷるぷると震えている。(やっべと思ったサスケである)
「――ああ……どのくらい真田が疎いのかってことはよ――――くわかった」
「?」
一人訳の分からない顔で首を傾げるさまは女子曰く「かわいらしい」らしいが、野郎からすればよくわからない。
あーあとため息をつく佐助。
横で気真面目に「どうしろってんだ?」と再び尋ねくる独眼竜に、「ああ、もうなんでもいいから例題でも探してやってくんないかな」と無茶ぶりをする。
と……
「なっ、」
焦ったような男の声。
正体はきかずと、わかる。
「何をいう、市!」
「でも――。長政君、さっき市にって……わざわざ探してきたんじゃない……の…?……」
「――そ、それは……」
「だから、嬉しくて……。ありがとう……」
「べ、別に市のためなんかじゃ、な、ないんだからなっ」
――おお、典型……!
何やら状況は分からないが、クラスメイトの市の手元にある小物は、浅井があげたものらしいことは分かる(ラッピングから)
それでもって、それを喜んでいる彼女に、素直になれず強く出てしまう浅井長政(青春真っ只中)
「旦那、旦那……」
――これはもう敢えて独眼竜に聞くまでもなく、
「あれがツンデレ」
教える。
政宗も、分かりやすいやつらだぜと頷いていた。
が――
「そうか……?あれ、が、か……」
――こりゃ、分かってないね。
佐助は付き合いが長い(だてに記憶をもっちゃいない)だけに、早速幸村の頭上の「?」マークに気がつけてしまう。
「なんか、他にないかな?いい例……」
アレ、たぶんこの人分かってないから。
もう一本くらい分かりやすいのがあれば、と、わざと口にして、期待をしながら政宗の方を見やる。
すると、現代ではなんのかんの仲良しになってしまった独眼竜はしぶしぶながら、「分かりやすそうなツンデレ」を探そうとしてくれた。
片方の目がきょろきょろ周囲を見回している。
やがて――
「ああ、あれだ。真田――」
その視線の先には、斬りそろえられた髪も凛々しいひとつ上の先輩。
「我こそが、委員長ぞ。そんなこと知らぬ」
――いや、役職とかきいてねーし。てか、あのひと(先輩)相変わらずだわ……
唯我独尊。というか、人の話など必要としていない絶対政権的というか……。
名を毛利元就。
指さした相手が相手だけに「記憶がないくせに、よくぞここまで因縁の相手を選べる」、と政宗の方にむしろ感心を寄せる元忍者 今は現役高校生・猿飛佐助。
――ただし……
目の前で何が起きているか、状況が読めるだけにその選択はどうかと思う。
「入会届ならば受けとってやってもよかろう。他はいらぬ!」
完全に、「ツン」
そこは認めるが……
――デレ、がない気がする。
そういうことだ。
「………???????」
ますます曲げた首の角度を大きくする幸村。
やがて何やら「そうか」と低く唸り出した。
「な?分かったか?真田」
「おう」
「――いやいやいやいや、この人分かってないって」
「?」
「Ah?本人がOKっていってんだから、いいだろ。それより悪ぃが、今日はこれから実家によびだされてんでな。帰るぜ。――元親にはよろしくいっといてくれ」
「あ、うん。――って、……それはいいけどさ」
言うことだけ言って、さっさと帰ってしまうクラスメイト(いつもつるんでる!)の薄情な後姿と、幸村の静かに滾っている姿(推定)にいつになく佐助は不安を覚える。
――いや、別にさ、ツンデレくらいしらなくたっていいんだけど。
絶対誤解はしている。
自信があるから嫌になる。でもって、次の何かの際に巻き込まれる自信もあった。
数日後――
佐助の予想は見事にあたってくれる。
ツンデレ=真面目で神経質 と捕らえ違えた幸村が、まさかのまさかで浅井に
「本当にツンデレなのだな」
なんて、さらっといい(それがまたも、お市の前&まさかの彼女の兄――信長の前でだったりするから踏んだり蹴ったりな長政様)
「ちがうといっている!!!!!!!!!」
……と、実はこっそりちゃっかり「ツンデレ」たるものを理解していたりする長政様に目を付けられ、佐助も巻き込んでやたらめったら生活指導をされることになったのだ。
さぼっていたわけではないが、真面目にやらず適度に手を抜いていた佐助だけに、目の付けられ方も半端なく……巻き込まれた仲間(元親&慶次&政宗)にさんざん文句を入れる羽目にも陥った。
しかし、そんな目に遭ってもいっそ幸村に「ツンデレ」をするよりはまし、かなと思う佐助はなんのかんの前世からの関係をどこかで引きずってるのかもしれない。
政宗にも記憶さえ残っていたら「んなことねーだろ。むしろお前の編み出した真田つきの生活の知恵じゃねーのか?」なんていうに決まっているのだが……。
思いつきで書いた。ごめん。ツンデレについては浅井は意外と理解があればいいと思います。その前に多分からかわれたんだと思うんだ、意外な方向から。