この段階ではまだUPするつもりではなかったのですが、
アニメの進行がまさかの方向に来て、被るんじゃ疑惑が出てきたために先出しします。
本能寺の変関係の核心に触れかかる部分があるため、知りたくない方は、ブラウザバックを。
大丈夫だという方は、下へスクロールをお願いします。&数話続きます。






















本能寺前哨戦 漆黒へ導く(SIDE 松永)  >松永・風魔



「浅井(あれ)と一緒に滅んだと思い込んでいたが……なかなかどうして……さすがは魔王の家系ということかね。永らえていたとは」

卿もそう思わないかね?
伝説の忍びにそう問いかけると、報告で契約を終えた風魔は、何も答えず姿を晦ました。

「はて?北条からの出稼ぎゆえ、そうそう長く使えるとも思っていなかったが……」

――伝説の忍びのご機嫌が損なわれたのはいかなることだろうか?
首を傾げる。
契約更新の際は別報酬を考えるといってあるのだから、もう少しいてもいいではないかとも思う。

特に北条は今安泰だ。
普段北条とにらみ合う武田は、明智の足止めを食らっており、冬前で軍神は降りて来ない。
その上、最大の脅威織田は全軍あげて、上洛に乗り出す最中ときている。

勅命を持って、本願寺との戦いへ水を差されたことが信長の本気に火を付けたのだろう。松永も、この全力戦には援軍要請されていた。もちろん、一応身を寄せている形をとってもいたのだ、軍の方はある程度出している。ただし、自分の方は、上手く別の武将に華を持たせるという理由で後退していたが……。

「まあいい」

執着はない。
自分が欲するのは、彼らとは違い、魔王の首ではないのだから。

――それはそれで面白いと思うが、この局面で参加はできまい。

自軍と自分を上回る凶気を浮かべて、そろばんをはじく。

「彼女を明智が囲っていたことも意外だが……」

もとより、欲するものがあいまいな女だ。
それゆえ、本当の欲から自らを遠ざけ、今まさに「壊れ」かかっている。
浅井を欲するならきっぱりと魔王をきればよかっただけの優柔不断さには、松永はいささかも同情できなかったが、いよいよ欲望に忠実なる狂気を持ったと分かれば話も違ってくる。

「ああ……」

見れば、後の報酬を忘れていたからだろうか(あるいはきまぐれか)
風魔が再びもどってきていた。

「追加を出そう。卿が連れて行ってくれるかね」

「………」

自ら戦闘に立って愉しみを振る舞えない戦場へは、出向く気すら起こらなかったが、自らが画策した余興のためならば、動ける。
とはいえ、面倒な明智と織田の出城。

欲する者が欲するように動けるため、松永は協力を惜しまない。

「それが狂った姫であろうとも」

あれは、魔王の血すじ。
少しは愉しませてくれるに違いない。

「……」

風魔は何を考えているのか分からない、そのままの気配で頷き、自分を抱え上げ、風に気配を馴染ませた。

――確かに、明智(かれ)の入れるお茶は味わい深く、その複雑そうでいてまっすぐな精神も嫌うところではないのだが……。

「狙いどきを誤っては、ただの手となろう。彼にも、爆ぜるための口火が必要だ」

――そうか。
どちらにせよ、自分は魔王の首を狩る立ち位置からとっくに降りていたのだ。
松永は、胸がすっとすくような想いのまま、新しい高見で彼らを見下ろした。ただ少し、魔王という混沌に一つの終止符が打たれる未来には、一抹のさみしさも感じていたのかもしれない。
風の悪魔の気配に火薬のにおいを滲ませながら……。