「なっ……」
声を詰まらせる幸村を無視して、「はいはい」と、佐助は横にバッグをよけていく。
幸村が絶句したのはファンレターにどうやら「かわいい」と書かれたせいらしい。
――実際そういうとこあるのは否定できねぇし。
と、佐助はしっしっと蹴散らすそぶりで、場所を陣取り、
「まあ、ほら、ファンレターなんて、しょせん、その子の妄想の産物だし。気にしてたらどうしようもないでしょ」
そもそも、どんだけ旦那にファンレターが届いてるか、分かってる?
答えを促す。
「う、うむ……」
「それより、今、眼の前にいるファンに、何かないのかね?」
こんなに旦那のために、休みとってんだけど。
事実半分おふざけ半分にいってみせる。
だが、佐助は、次の瞬間、不要な自分の発言に後悔することになる。
もとの態勢に戻り、背中を幸村に預けたまま、自分の脚本を読んでいるところ――
「やってるではないか? 」
佐助には特別。と、そう――
ぼそりと、答えが後ろから届いた。
「な、」
なにを、という前に、ぐいっと引っ張られる腕。
思わぬ強さに抵抗する間もなく、おさえこまれ――
あっという間に反転して見えた天井……と、向かうところ敵なしの、アイドルのアップ……
「俺の休みは、全部お前のモノだと思うが?」
だから、此処にいるのだと、そう――。屈託のない顔で確認を取られ、唖然とするスキに……
「っ?!」
オマケだ。と加えられた、一瞬の熱……
「足りないならこれも」と足されたハグは、力こそ可愛いものではあったけれど。
――おっかないねぇ……。
その力強さに、佐助は頭を抱えた。
けっきょくのところ、「かわいい」なんていうのは、みてくれと、遠くにいるファンの心情でしかなく。
彼は、「格好いい」佐助のアイドルなのだ。
幸村曰く、佐助「だけ」の……。