「で……その幸村の彼女っていうのがすげーんだわ」
「すげーって?」
芥川慈郎は丸井ブン太のお友達だ。
正確には、大ファンで、押しかけて今のポジションに居座ってきた。
偶然というか、なんというか、立海大のテニスサークルは氷帝と交流があるうえ、学校同士の単位互換制度もあったので、ブン太が授業を受けているせいもあるが、なんだかんだと接触が増えた二人だ。
まあそれもブン太が、見た目よりも真面目だったから成り立つことで、いわばブン太からすれば半分は世話してやってる後輩(どこぞのワカメ)への対応と変わらないのかもしれない。
適当に点数を取っている幸村や、取れる分きっちりでやめる仁王に比べ、わりとブン太は真面目で、法学を究めるつもりで外部に出た柳や、生真面目&向上心旺盛な真田にはかなわないが何のかんの一番面倒見もよかった。
そして、週に一度、木5の授業後にはこうしてジロにとっつかまって……気付けば呑み仲間ともテニス仲間とも付かない可笑しな付き合いをしていた。
とはいえ、興味が自分のテニス、という限られているジロ相手には、話も限定され、最初こそやれ四大大会だ次の試合だと話していた二人のネタは、今や元立海&氷帝レギュラー陣のゴシップにまで伸びていた。
ちなみに、ブン太本人は高校時代の同級生と続いていたりするが、慈郎にあわせると手間が二倍だという理由で顔合わせをしていない。
――俺ってぜってー面倒見いいって。
ジャッカルには「なら自分の世話もしろよ」と言われそうだが、ある意味真理だ。
そして、それは当人たちのみならず、友人の彼女にまで及ぶらしい。
で、その彼女というのが、件の君……幸村の「唯一の人」だという。
「こないだも幸村と同じゼミの教室いたら入ってくるか迷っててさ。俺が先に見つけて連れ込んだんだけどよ。本当とろいっつーか独特っつーか。別に天然じゃねーんだよなぁ。可愛くないし」
……と、この程度に面倒見はいいが、口は相変わらず悪かった。
「可愛くないってか、普通なんだよ見た目が……ほんっと。失礼だけどもっと選べるんじゃね?って程度の顔で」
「幸村君、面食いくせーのに」とはジローの弁。
こちらも結構口が悪い、もとい、正直者である。
ブン太も深く頷いて、
「俺も意外だと思った」
率直に言う。
ブスというわけでもないが、十人並みかつ体系も平均……むしろ氷帝のレベル(女子は氷帝のレベルが高いので有名)に照らせば、平均以下かもしれない、というのがブン太の持論。
庇護欲をそそるのではなく、本当に「仕方なく」世話をやいたらしい。(それだからこその俺=面倒見がよい発言)
「丸井君の彼女が可愛いからじゃねーの?」
もっともな質問をぶつけてみても、ブン太は冷静に切った。
「うんにゃ。幸村の趣味が可笑しい。だって、明らかに幸村(性別:男)のが可愛いんだぜ?」
「えー、けど幸村君怖いC……」
そりゃそうだ。あれは見かけと中身のギャップが凄い。
深々と頷くブン太だが、決して口にしないあたりは心得ている(どこに耳があるかわかったもんじゃない)
「携帯に写メあるけど見る?」
「うん、見てぇ」
素直なジローのお返事に、がさごそとバッグを漁り、携帯を取り出すブン太。
さっと操作をして、ジローに向かって見せた。
「わ……」
驚いたのかと思いきやコメントがなかなか付かない。
その辺りが何かを確実に物語っている。
「確かに悪くはねーし、好きなやつは好きそう」
「だろ?けど、なんつーか幸村の相手にしちゃ、な……」
「うん……」
ぶっちゃけ、『華がない』そういうことになる。
「………………そこ……かあ……って感じ?」
「けど、これでもう何年目かわかんねーよ。長ぇもん」
「え?マジマジ?」
「大マジ」
病院で知り合ったのかとも思ったのだが違うというし、本当にどこから連れてきたのか分からないうちに出来てた彼女は、幸村と二年以上の仲ときく。
紹介されたのが最近なのでビックリはひとしおというもの。
だが別れる気配はなく、幸村曰く「ツボ」らしい。
「幸村の趣味はわかんねーからな」
真田だって幸村の手にかかれば「お気に入りのチームメイト」だ。
柳のデータだって「素晴らしい趣味」だし。
――プレイのすごさは分かるけど、おかしいって……あれ。
「うーん……そっちが凄いとか?」
「……あー……ありえるかも」
テクとか、アレとか色々下世話な想像をする二人。
だ、が……一見するに、清純派だ。これは。
「まー、取りあえず幸村君趣味のMっぽい感じはするわな。俺が面倒見ざるを得ないって時点で」
「うん。それは分かる」
ゆっきーっていじめっ子っぽいC。とは段々慣れてきたジロの暴言にして真実。
ブン太は、「多分そのうち会えんじゃね?」と会話をそこで打ち切った。
ネタにするには、不可解すぎるのだ、幸村精市の人選は。
――それでいて「何かお礼してもいいよ」ってあの台詞……すげー幸村君似だったし。……怖かったっつーか……何となくやばそうっつか……
MだけじゃなくてS属性も裏側に感じ取れる辺りが素直に嫌だ。
取りあえず「幸村君は大人な関係がお好き」と呟く弟子(慈郎のことだ)に、素直に頷けない何かを感じつつ、ブン太は「生一つ!」と、横のおねえさんに声をかけた。
「幸せならいっか」
どんなにマニアックな事情があろうと、幸村が荒れなければ自分たちも安泰なのだ。
どうぞ末永く一緒にしてやってくれぃ、と告げた後の意味深な微笑みを思いながら(これも妙に脳裏に焼きついて怖いっちゃ怖かった……とブン太は思い出しながら)机の上の手羽先に手をつけた。
『本人の前でなら幾ら悪くいっても構わないよ』
にこりと告げる幸村精市という男(ひでーだろ)が分からない。
そういわれた横で「世の中には知らない方がいいことも多い」と、ぼそりと漏らす本人(マジか?あいつ……)も……もっと分からないし、分かりたいとも思わないが。
――ま、あそこには介入できねーし、したくねぇ。
だから、『知らないでいた方がいい』……という言葉、きっとそれは事実に違いないのだ。
どんな子なんだか……。出しませんので想像をどうぞ。それがこの企画コンセプト。
メッセにて「幸村は多分趣味が悪い」「悪いっていうか「・・・そこ・かあ」みたいな」という会話からまとまった結果(抜粋)
恐らくこんなタイプ説
・あー、ブサイクじゃないけど『え、なんでそれ?』みたいな。『もっとかわいいの他にいるじゃん』っていうタイプ」
・多分彼なりの視点でいうところの、最高潮の何かがあったってことか。
つまり幸村の観点が既に怪しい……?むしろ凡人に理解できないんじゃ……」
関係ないが……
・何となく、サドだと思う
・サドとマゾ両立してそう
・どっちも嫌いじゃないw みたいな(「リバですかw」「どっちも楽しいそうです」)