■ 最強のヒト


「なあなあ侑士。部室に女の子いたんだけどさぁ(ぼそ)……下着姿の」

 とんでもない話は岳人(飛べそうもない蒼白顔)から沸いて出た。
 三年は順番に進路指導があったものだから、今ようやく部室に行ったばかりなのだろう。制服姿の岳人に対し、アップも終えてラリーのところ中断された二人は顔を見合わせる。

「あー……」

「お前?」と話を振られた忍足は跡部を見た。

「俺は節操はある。場所もわきまえる。いやむしろ時間は」

 時間だけでいいのか!という岳人の突っ込みなんのその、

「時間はな…部活前はまずいやろ。監督くるし」

「ばれない自信のあるやつか 馬鹿だな」

 氷帝アダルト組(?)二人の会話は先に進んでいく。

「あー。ジロ?宍戸?」

 忍足は一気に納得したように適当に答える。
 彼の中での「そういう種類の馬鹿」の位置づけが微妙にわかってしまい、横で岳人が更に硬直する。
 が、跡部がフォローに入る秘儀「小馬鹿にした目つき」を出してきたので、安心した。
 しかし跡部の言ったことといえば……

「お前、何見てんだよ。やつらはもっと馬鹿だ。やるならそのままやってんだろ」

「「え?!」」

「羞恥プレイ?」とごくナチュラルにまたも忍足が会話を返す。
 流石に退いているが、既に話題をふった岳人は泣いていた。

「あーん?きまってんだろ?あえて見せてやるやつなんてあいつしかいねーよ」

「………誰や?」

 今度ばかりは検討が本気でつかず忍足が首をかしげている。
 跡部はそんな忍足に警告する。

「あーいっとくが日吉じゃねーぞ あいつは下剋上だとかなんとかいってるがそっちの方面で俺をこえられねー」

 どうでもいいが、さりげにいばっているのか、それとも普通に後輩の不名誉な疑惑をかばっているのかよくわからない跡部様である。

「かかか……」

忍足はふと真顔になって、急に口ぱくで同じ音を連呼した。

「か?!」

 これには意識が戻って、岳人が叫ぶ。
 跡部も焦ったらしい。

「ふざけんな。樺地はここにいる」

「……ウス」

 疑惑を払拭しようと、側近を呼んだ。

「ああ、おったわ……」

 三人が取りあえず一息ついたところで、冷静に岳人が聞きなおした。

「でも侑士じゃないなら俺わかんないんだけど?」

 ダブルスの相方に対して随分な言い方だが、あまり答えていないどころか男の名誉だとでも言い出しかねない口調で忍足は答える。

「おれはそんなえぐいことせぇへん。そっこーでくうわ」

「くうんか」
 思わずつっこむ岳人に対し、当然、

「だよな?」
と、同意する跡部。

 常識が分からなくなった岳人はもう制服を着替えなければならないという当初の問題も忘れて悩みこむ。

「あいつはやっぱりすごい奴だ」

 犯人は分からないが、この跡部にまで感動される始末である。
 そこに馬鹿だが良識ある男「宍戸」が走ってきた。

「おい、跡部!」

「あーん?宍戸、どうしたってーんだ?」

 ようやく部活らしい雰囲気に戻って、安心する中、宍戸はとんでもない事実を暴露してくれた。

「…いや、長太郎がいないんだけどしらねーか?さっきまでアップしてたと思ったんだが、まだアップがたりないとか言い出して……部室か?」

「(涙)」

 犯人知ったり――岳人は口をあんぐりあけている。
 跡部は分かっていただけあって、普通に困惑した顔で、
「あー……今いくな」

 忠告を与えている。

「なんでだよ?跡部」

「……まーいってみるのも一つの経験かもしれねぇ」

 跡部が真剣に考え込むその状況が飲み込めず宍戸は、

「あ?」

 首をかしげた。
 視線を横に走らせると、

「あいつか……」

 納得した忍足ともう既につぶれかけている岳人が見受けられ、一層宍戸の疑問は大きくなるのであった。
 さて、この後、宍戸が部室にいって何を見たかは……想像にお任せしよう。

 

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