「で?一体何を聞けばいいんすか」
観月が何をしようと関係ないが、デビュー先が彼の店となれば真剣にならざるを得ない。はっきり言えば店主たる彼の機嫌を悪くさせるわけには行かないのだ。
リョーマはすぐさま表情を切り替えた。
目の前の警察署長は、うむと頷き、
「旧知であることがよいか悪いか、時に判断しかねるものでな……」
と、苦いコメントを残した。
確かに、とリョーマは思う。
相手が相手だし、警察とは敵対こそしないもののいい顔もしていないという噂は、この街で遊んでいたころから聞いている。
後ろに迫る「連中」――直接敵対組織であるヤのつく方々には及ばずながら、彼らに負けじとこのあたりに店を構えられている以上、何某かの「力」(後ろ盾)はあるに違いない。
大方、その辺りのことだろうが……。
「悪いのが出入りでもしてんの?」
「ああ……。そういう話がある。――こちらとしては観月の解答を信じたいが上が納得しないんだ」
「観月……さんは何て言ってんすか?」
「『品のないものは、うちの店に入れませんよ』と」
「ああ」
納得。
元部長の方を見やれば、リョーマの表情に「そうだろう?」といいたげな様子で、手塚はもう一度頷いた。
「分かってる。アイツは手段を選ばないが汚いことは嫌いだと聞くから……」
「それに、不二先輩がいるここじゃ悪いことできない、とか」
「………」
沈黙が何より雄弁な答えだった。
嘘か眞か、何でもいいから証拠を掴んで来いということだろう。
リョーマも無言で、劇場への足を益々早めた。
「掃除屋か情報屋だろう」
手塚はそれで十分といわんばかりのヒントを出す。
火のないところに煙が立たないという話もある。
その程度の雑魚なら――実際は表の企業とくっついて、わりと厄介なのだが、治安維持のためといわれれば、対処すべき範疇に収まってる為手出しの必要もない――放っておいていい。
彼らとの関係を探れということだ。
「榊グループの場合は?」
「……知りたくはないが、この地域の署長個人としては抑えておくべきだな」
知らないと何かに利用しかねない。
かといって上層部に教える義理はない。
そういう返事だ。
「リョーカイ」
リョーマはそういい、ふっと手塚の横を逸れていく。
否。
手塚が路地に入って行ったのだ。
「頼んだぞ」
と、リョーマは声ならぬ声を聞いた気がした。
デビュー戦スタート。
ここからは一人の戦いだ。
まさか敵があの彼だとは思いもよらなかったわけだが……