■ カラット


 女の子にフラレタことはある。
 でもこんなに途方も無い、迷子みたいな気分になったことはなかった。

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 試合帰りに見た亜久津と彼女に、適わない気持ちにさせられた。
 むしろ子供が親において行かれてしまったような……。

「俺……」

 きついよ。めちゃくちゃきつい。
 これでも我慢強い方だ。

 負けたことは堪えても、自分の内側で転化できる。
 でもこれはね。

 理由も無くスタート地点で決まったこと。
 仮に亜久津の場所にいたとしても、納得できない自分を知ってる。

 優紀ちゃんがダイヤモンドだとして、その宝石は何カラットなんだろう?

「手に入らないから綺麗なのかな?」

 事情を(たぶん)悟り始めたうちの部長さんにきくと、

「きついならやめろよ?」

 南の言葉が身にしみた。

「やめたい」

 やめられるもんならとっくにやめてる。
 ガキだからとか、男だからとか、相手が誰だとか、何も理由にできなくて。

「好きなんだよ」

 吐息のような声が漏れた。
 我ながら恥ずかしい(いつの青春ドラマだよ?再放送でもなきゃ見ない。)

「じゃ、言えよ?」

 南は動じない。

「分かってていってるデショ?」

 俺が好きな女性。
 女の子じゃなくて、レイディー。
 すごく綺麗で優しい笑顔。
 でもその人は……

 理不尽だ。
 年の差だけなら実力で乗り切る気概もあるのに、俺。

「まあな。でも憧れならそこでストップ。泣いておしまいなんだろ?」

 知ってたのか?という疑問より、その後の方に視点が行った。

「そうか」

 何だか南がまた何かヒントをくれてる?
 俺はね、南。
 そんなに頭はよくないけれど、きっと大切なことには気づける。

「ストップ」

 だからちょっと考えてみた。

「南君に質問。本気って何ですか?」

「さあ?」

「……わかんね。でもよ、ダイヤモンドが何カラットでも欲しけりゃ欲しいんだろ?」

 うちの従姉が言ってたけど――南はどうでもいいたとえを出してくる。
 なんじゃそりゃ?

「手に入らなくても?」

 女の人は謎なのだと(自分で花だのアクセだの上げて他の女の子で【色々と】だまくらかした時期は棚にあげて)唸ってみる。
 南はあっさり、お前は?とそんな演技も本当の葛藤も飛び越えて、

「違うのか?」

 また真正直に声を投げてきた。

 もっと考える。

 どうだろ?
 自前のラッキーで降ってくるかもしれない。
 そうじゃなかったら?

「……違わない」

 うん。
 子供がおいていかれるような気分にはもうならない。
 そのとき、そう思った。

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 そのダイヤモンドは何カラットなのだろう?

 実はふと、本気で手に入れようとしたら?と疑問を覚えたことはナイショにしとく。
 手に入るかもしれないと知ったら怯えてしまう。
 そんな予感にも今だけはふたをして。

「ガキじゃねーんだよ」

 くそっ

 記憶に残るあの女性(ひと)の影に悪態をついた。
(そんなことしたら、夢でも幻像でも、すぐに謝っちゃう癖に)

 E N D

 

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