■ マリアはいつも庶民派だから


「なあ千石。お前のマドンナってどんなんよ?」

と、馬鹿なクラスメイトに聞かれた千石はこう答えるのであります。

「庶民派でマリア」

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 馬鹿じゃね?  マドンナって何だよ?

  「鬱陶しいから、愚痴ってんな」

 ボケ。

 珍しく屋上に行ったら、ますますむかつく人間を見つけて(でも今は同士になれるかと思って)近づいた。
 亜久津はふかしに来てた。(言うまでもなく煙草・でも実は禁煙パイポ。でもって優紀ちゃんが原因)

「お前なら分かると思ったんだけどな」

「馬鹿じゃねーのか?」

「そうそれ!そのノリ!」

 欲しかったのは!

 言ったらすんごくいや〜な顔された。(密かに快感)
 その後、二人の間に沈黙が落ちる。
 特に気にならないのはしょっちゅうだからだろう。
 俺は南を呆れて黙らせる名手だし、室町君を心配させては追い返すし(半分無意識・半分女の子のせい。あいつはタイミングが悪い)、亜久津を怒らせてはこうなる。
 でも、その亜久津にしたって、正確には俺の飽きっぽい、次の会話を待っててくれていたりする。

  「で、てめぇ、何て答えたんだよ?」

 よしきた。
 答えましょう。

「庶民派でマリア」

 馬鹿にした目に気づいてか、あるいは心を読まれてか、亜久津は不機嫌そうに「ああ?」と声をあげた。

「じゃ、あっくんは?」

「…………マリアって柄か?」

 無意識に呟いたのか、こちらに向かったのことか分からなかったけど、コメントはしない方が打倒かなと直感で悟る。
 マリアって柄か?
 でもマリアだろ?

 ならそれって結局一人しか指してない。

 俺に対する疑問なのか?
 そんな風にわかられんのもむかつく。

「あーあ、聞くんじゃなかった」

「ああ?」

「だって、あっくん答えてくれないんだもん」

「庶民派でいいんじゃねえ」

 答えたのもやっぱりむかつくからダンマリを決め込んだ。
 ただ、こういうときのことを俺は失念してた。
 南は間をとって、話しかけてくれる。
 でもあっくんは……

「……だよね!庶民派のが俺好き。超人じゃなくて、お化粧ばりばりじゃなくって、無理しないで片意地張らない方が人としていいと思うわけなのだよ」

 どうせしゃべんないからなぁ。
 沈黙は嫌いじゃないが、雄弁に何かを語ってしまう気がして、俺はまくし立てた。
 今は静かにするタイミング。
 わかっちゃいるけどね?

「うるせー」

 そう。
 それでいい。

「でさー帰ると台所でねぎとか切ってて、たまねぎだったら泣きそうになってて、それでも笑って『お帰り』とか言っちゃうの」

 どうよ?
 てか、お前んとこのマリアはそうなんだろ?

  「…………」

 何想像してんだよ?
 答えろよ、いいから。

「……………俗物すぎる」
「あ………」

 声があまりに沈んでて、あんまりに真剣に考えた結果のようだったので、思わず凍った。
 お前、何見てんだよ?

 結論。
 俺も、結局聖母には憧れがあるらしい。
 庶民派は庶民派なりに……。

 でもあのマリアはいつも庶民派だから。

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「なあ千石。お前の好みのタイプってどんなんよ?」

「えー…俗物でもいいから庶民派なマリア様」

  「は?」

 努力してでも、憧れより現実が欲しいんです。

「気持ちいいのも現実だけだし、俺男だからグッとくりゃ後は問わないの!」

 でも、『げへへ』笑いとかされると、あの女性はそんなんじゃねーんだよ、お前に語るなんて勿体ねーんだよってあっくんの口調真似てでも言いたくなるけどな。
 (あっくん、一体あの女性の何を見たんだ?)

 E N D

 

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