「ハイ、こんどはそっちの棚を片して、さっさと動く、ハイハイハイ!」
パンパンパン!・・・と軽快に手を叩く観月の姿は、学校や部活では見慣れた光景だが、それがなぜ・・・
「俺ン家で・・・???」
赤澤はなんでこんなことになったのか、記憶をたどってみた。
そう、日曜日に、次の地区大会の作戦ミーティングをしよう、となったのが事の発端だった。
それなら、いつも寮暮らしの観月に家庭料理でもご馳走しようかと、ミーティング場所を我が家にし、母親に頼んで昼食を用意してもらったのだ。
ここぞとばかりに腕をふるった料理をどれも美味しそうに口にしては「羨ましいなあ、こんな素敵なお母さんがいつもそばにいて」と、ふっ、と笑顔を浮かべる観月はたちまち母親のお気に入りになり、「ゆっくりして行きなさいね♪」の声に見送られて赤澤の自室へ・・・
しかし、そのドアがバタンと閉ざされた瞬間、その瞳にはいつもの容赦ない、厳しい輝きが戻ったのだ。
「・・・僕には理解できませんね・・・どうしてこんな・・・ゴミ集積場のような状態の空間で・・・暮らして行けるのか・・・」
悪かったな!!!
いや、一般の、中学生の男子の部屋なんてこんなもんだろ?
まあ、そりゃ多少・・・3日以上前の飲みかけのコーラとか、地震が起きたら間違いなく脳天を直撃するであろう高さに積み上げられたテニス雑誌だとか、いつ着替えたのか忘れた下着とかが散乱しているのは認めるが・・・
「お前が異常なんだよ・・・寮の他の奴らの部屋だって似たようなもんだろ?」
「僕が抜き打ちでチェックしてますからね・・・こんな部屋発見しようものなら、トイレ掃除二週間です」
・・・良かった・・・寮生ぢゃなくて・・・(しみじみ)
きっとトイレ掃除当番は永遠に自分であったろう(←自覚してるあたり・・・)。
「ほら、ここ!・・・雑巾はありますか?・・・ああ、染みが・・・ああもーっ!」
そう言いながらも、部屋の主以上に熱心にちょこまかと動き回る小柄な姿に、何だかだんだんおかしさがこみ上げてきて・・・それを隠そうとわざと背を向けた途端、
「・・・赤澤・・・笑ってるんじゃありませんよ!ここはあなたの部屋なんですよッ!」
と、びしっ!と一喝された。
「あー、悪ィわりー・・・でもさぁ・・・ついつい汚しちまうんだよなぁ、もうこれって一種の・・・えーっと何て言ったっけ・・・?」
「習性?」
「そう!それ!(ポン!)」
「・・・(ボソ)・・・バカ澤・・・」
「え?何?」
「(ハァ)・・・なんでもないです」
大きくため息をついた観月は、床から拾い上げた雑誌を一気にドサリ!と赤澤の両手に投げ出した。
「・・・部室でもどこでも、あなたは汚し屋さんです!」
「はは・・・分かってんじゃねーか」
「そして、いつも私が尻拭いです」
「そこもよく分かってんなー」
悪びれもなくケラケラ笑う赤澤を、やれやれという諦めの表情と、同時に何か愛おしいペットでも見るような顔で、観月は見つめる。
「・・・いいですよ、もう・・・汚したいだけ汚したら・・・そのたびにこうやって私が片づけてあげますから・・・」
「観月?」
「・・・言っておきますけどね、僕は綺麗好きです!(きっぱり)整頓された清らかな空間が好きです!人間も然りです!」
「(ぐっ!)・・・」
「でも・・・僕を汚すことができるのは・・・バカ澤だけですからね・・・」
「え・・・?」
雑誌を抱えて両腕が塞がった赤澤の襟元をいきなりぐいっと引っ張って、観月はその浅黒い顔を自分の鼻とくっつきそうなくらいに引き寄せた。
「あなたは好きなだけ・・・僕を汚してもいいんですよ・・・」
吸い込まれそうなほど黒くて深い輝きを持つ観月の瞳が目の前にあって・・・
赤澤は全身の血がカーッと熱くなるような不思議な感覚に襲われた。
別に押さえつけられている訳でもないのに・・・魔法がかけられたように動けなくて・・・二人はそのまましばらく向き合って立っていた。
観月の唇が、赤澤の首筋に近づき・・・触れる直前にそのままかすめ去って・・・クスッという含み笑いと暖かい息だけがそこに残った。
「もっと汚してみます?」
静かに、しかし挑戦的に向けられたその言葉に、赤澤はばさばさばさ!と雑誌を落として反応するしかなかった。
「みみみみ観月っ!」
「あーもうせっかく拾ったのに・・・」
もういつもの口調に戻って、何事もなかったように床に膝をついている。
「ほらー、早くやっちゃわないと、ミーティングする時間がなくなっちゃうじゃあないですか、ほら、赤澤ッ!」
「・・・って誰のせいで・・・」
反論しようとした瞬間、ドアが軽くノックされ、
「お茶とケーキ、持ってきたわよ」
と母親の声が響いた。
「お母さん、すいません、そんなお気遣いいただいて・・・」
「いいのよー・・・あら、うちのバカ息子の部屋の掃除までしてくれてるのー?やだもう、恥ずかしいったら・・・うちのも観月クンみたいにきちんとした子なら良かったんだけど・・・」
「・・・もう、いいからさー、下、降りてろよー、母さん」
「ねえ吉郎、観月クンみたいなお嫁さん、欲しいわよねえ?」
思わず紅茶をブ????ッと吐き出した赤澤に、
「ほら、また汚して・・・」
と、さっと自分のハンカチを差し出し、口元に運ぶ観月の表情は、何だかとても愉快そうで。
(まあいいか)
と、されるがまま・・・そしてきっとこれからもいろんなこと失敗して汚したり汚れたりする自分のそばに観月がいてくれるそんな光景を、一瞬思い描いていた。
ヨツバサイトなのに、無理やり強奪してきた物は垂涎もの!
いやはや……本当すんません。
毎度毎度(毎週?)お世話になりっぱなしです><
ちなみに ふたつさん(日記でいうところのO女史)とは、そのうち、またも
無理やりコラボを開催予定。
あっちのジャンルとこっちのジャンルの死闘(言いすぎ)……メインこっちは幸村でいきます