■ ナカ


 どんなに思っても俺は子供で、でも彼女の中から生まれたなんてありえなくて……。

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「…ぁっ……」

 しゃくりあげる声が耳を刺激した。
 カノジョのナカはいい感じの熱で、俺を原子に戻すようだ。
 そんなときは、いっぱいいっぱいで、んな詩的な言葉は浮かばねーけど。

「もっとないて……?」

 女の子は好きだ。
 あったかいし。
 気持ちいい。
 大抵の子が癒し系だよなと思う。
 気性の激しい女だって、俺を熱くしてくれるし。
 そうすればせめて瞬間はヨクなれるでしょ?

 今は余裕あるからんなこと考えてんだよ。
 わかってんだって。

「きちんとっ……シテよっ……」

 ああ、そうだね。
 今だけなんだから……。

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「てめぇ、どこでヤッてんだ」

 屋上の貯水タンクの上って、いけるんだ。
 変なことに感動しながら、俺は降りてきたそいつを眺めた。
 亜久津仁は今一番会いたくない相手。
 正直面倒だなぁと思う。
 これが南だったらちょろいのに……(てかあいつはソレだと悟ったとたんに逃げるか)

「どこって?」

 女の子はさっさと逃げちゃったから俺一人。
 でもさ、よくやるよな。
 誘ってきたのあっちなのに、恥らう必要どこにあるんだよ。
 苦笑で答える。

  「ここ」

「ザケてんのか?」

 なんでお前が怒るんだよ。
 答えは多分知っていて、でも俺ははぐらかす。

「あっくんは据え膳きらい?くわねーの?」

「……ちっ……」

「やっぱくうんじゃん」

 てか、呆れてるだけだろうね。
 取り敢えずこいつの対処は簡単。
 からかうべき。

「おい」

 見透かされてるのは、

「なら誰でもいーじゃねーか」

 とっくにしってるけど。

「さあね」

 これ以上殺伐とした会話交わす気はないよ。
 俺は踵を返した。

「ちっ」

 舌打ちが聞こえても振り向かない。

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 放課後部活に出た。
 珍しいといわないように。
 部活出てない日も、練習はそれなりにしてる。

 あっくんは居なかった。

 帰りがけに優紀ちゃんの横に並ぶあっくんを見つけた。

「あっくん!」

 すっげー嫌われるな。
 そう思いながら俺は声を張り上げる。

「あ、キヨ君だ」

 手を振り替えしてくれたのは予想通りカノジョの方で、あっくんは嫌そうに顔をしかめた。

「ガキのふりしてんなよ」

 ゴメンネ。
 そのくらいの言葉じゃ俺は引かない。

「だって俺子供だもん」

「あはは。二人とも、いつも仲良しね」

 優紀ちゃんは可愛く笑った。(お決まりの文句で!!)

 おい、あっくん。
 こっちの方にいってやれよ。
 これ以上幼く(=純真に)ならないでって。
 子供じゃないから性質悪い。
 思ったのは同じなのか、横であっくんは眉間の皺を増やす。

「優紀ちゃんはいつも可愛いね」

「あら、ありがと」

 軽く流すなよ、ねえ。
 俺はそれなりに色目使った気がしてたから(流し目とか、声の低さ……エロヴォイス?とか)こっそりショックを受けた。
 そもそも色仕掛けならこっちは負けこし。
 胸元の開いた服から白い肌が覗いてる。
 うなじ綺麗。
 あっくんがこちらに目に気づいて、俺とカノジョの間に入った。

  「あーずりぃ。俺も優紀ちゃんの隣」

 【ガキ】を続けて、すぐにサイドチェンジ。
 くそ、やりてーよ。(最悪)
 でもそんなもんじゃん?
 中高生なんて。

 睨むライバルを無視して、俺は可愛いキヨ君を演じ続けた。

 そこに通りかかったのは……

「あ……」

 女の子。
 もとい女。

 向こうは意味ありげに優紀ちゃんの方を見て、それから何もなかったように俺に目を向けた。
 多分全部計算済み。
 あっくんは大体分かった様子で、「おい離れた方がいいか?」と聞いてきた。
 南だよ、それじゃ。
 お前は勝手にしてろよ。

   同情されたくねー。
 それに……利用も……。

 俺は手で制止して、どう考えても一回りは年の離れた彼女に笑った。

「こんにちわ」

 最初ナンパしたときみたいに、子供仕様の笑顔で。

「こんにちわ、清純君」

 あら?名前言ったっけ?
 まあいいや。
 お姉さんは笑って続けた。

「こんにちわ、清純君の従姉です」と。

 うそつき。
 これだから女の人は。

 苦い思いで、曖昧に笑顔を浮かべたら、

「ごめんなさいね、すぐに済むから。直接話したくて」

 探したのか。
 本気で。
 何せ行きずりで数回だけの相手。
 驚いていると、爆弾を投下されて凍る。

「子供が出来たからおめでとうって言ってもらいたくて」

「あ……」「え……」

 と、声を漏らしたのは俺とあっくん。
 うん、お前はいいよ、黙ってて……
 ――とか、今度ばかりは言ってもいられなかった。

「安心シテ(君の子じゃないから)……相手、とってもいい人だから……」

 ああ、そうか。
 本命さんがいたんだよね、確か。
 よりを戻したのか、彼女の顔は凄く綺麗で、瞬間見とれた。

 ちぇっ……。

 ――……ん?ちぇって何だよ、俺。

「ただ、まだ言ってないんだけどね(相手を疑われるかもしれないし)」

 優紀ちゃんは「あら、病院帰りなんですか」ととぼけたコメントをしてる。
 気まずいのは俺なんだろうが、あっくんが先に凍り付いてるから、いいや。
 俺はへらへらしておこう。

「あんまりなかったから、不安になって……」

 と、これは優紀ちゃんへのコメントだけど、前に付く単語とか補えばきちんと俺へのメッセージだった。

【あんまり(本命とはシテ)なかったから、不安になって(るけど、でもそれでもいいって)】

 深読みしすぎかもしんない。
 でも……

 そうだね。やっぱ、そうだよな。
「らっきーな俺だから、多分それ本命さんのだよ」とジェスチャー交えて口動せば「ありがとう」が戻ってきた。

 あー……
 なんつーの、俺最低?
 いつもソレばっかり考えてるせいだと仁は思ってんだろうな(泳ぐ目)。
 けどね。
 それだけじゃねーんだよ。
 ちゃんと俺は彼女だって好きだったんだ……それなりに。
 ぼーっと眺めていたら、優紀ちゃんの手がちょこっと触った。
 単に買い物袋をパスされたんだ。
 いつの間にか優紀ちゃんは彼女の手をとっていて、

「大丈夫」

 強い調子で言った。
 ばれてないといいなとびくびくして俺は気が気じゃなかった間に、包み込むような笑顔で、

  「母は強いのよ。ナカにある命を大切にね」

 綺麗だったから、見ていて切なくなった。
 子供が出来たのと言ったカノジョと同じくらい横顔は美しいのに、俺が真剣にさせられんのはこの女一人だという事実に俺のひずみが音を立てた。

 子供が宿るナカ……。
 エグいよな、ある意味グロいと思うよ。
 生理的に、そういう器官だと思うと、自由でいたい子供(男)は気持ち悪くなるよ。
 一方で、自然なこと。
 語った彼女たちが聖母みたいに見えるから、目を逸らせなかった。

 でもって、そんなときでもなお、触れてしまった手に移る優紀ちゃんの熱がおさまらない自分が一番痛かったりする。
 痛い痛い………。

「じゃあね」

「うん、また(もう会わないけれど)。お幸せに」

 ぺこりとお辞儀して、俺らは彼女と別れた。
 俺はすぐに荷物を仁に預けて、帰りたい衝動に駆られた。
 もう少し一緒に、生ぬるい関係を味わっていたいとも思った。
 熱より微温湯みたいなこの感覚が愛しくなるなんて、南に言ったら呆れられるな。
 何人くったんだよ?って。
 既にあっくんには見さげられてんじゃん、俺……。

 あっくんの隣、ちょこっと母親してた優紀ちゃんが手に終えなくて、感情を持て余しながら俺は途中まで荷物もちを手伝った。

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 ナカに潜ってしまいたい。
 一緒になるんじゃなくて、隠れてしまいたい。
 ああ、こんなこと考えてる地点で俺は子供にはなれないだろ?
 貴女から生まれればよかったなんて、クソ忌々しい夢か幻。

「あっくん、可哀想。」

 帰りがけ、悔し紛れに返す。
 どんなに思っても俺は子供で、でも彼女のナカから……なんてありえない。

「進化中だから俺はいつか何とかなんの」

「あ?」

 そうとでも思わなきゃやってけないね。

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 そういや、血つながってんの?
 聞くのが怖かった俺は耳を塞いだ。
 ……弱っ。

 E N D

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リク用にかこうとしてえぐくなりすぎた却下作。
これ、なんなのよ もう。
きよは 3マタ説でぜひ。

 

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