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■ 置き物 「不二。お前さ、ここを逃げ場にしてんじゃん?」
不二は「ん」とうなったまま、雑誌を読んでた。 俺は取り上げられず、むっとしたまま自分も本に目を落とす。 「帰りなよ?」
声は出したけど、実際そう思えてないことくらい、不二にはばれてんだろうな。 「やだ」 「素直だな、相変わらず」 「さえ相手に可愛いふりなんて気持ち悪いでしょ?」
そのとおりで。 「テニスしにいかね?」 一番俺等らしい提案をしたら、 「いいよ。さえが本気でやってくれるなら」 あっさり返された。 「本気、な……」
どうだろう?
出し惜しみしたいわけではない。 「いいな。でもそれ、公式で当たりたくないか?」 「でしょ?」
また予想しての会話か。 「だからさ」
いいながら不二は唐突にめくるのをやめた。 「無駄でも、ここにいたいんだけど?」
だめ? ――だめなわけあるかよ。
答えるのが悔しく、追うのが俺だということもまた納得がいかない。 「勝手にすれば」 「じゃそうする。僕は佐伯を縛らないよ」 「そう」
そうしろっていうのは違反だ。
それはまるで、どちらか先に告白するかのゲームみたいで。 「邪魔」
そう宣言する。 「邪魔ならどかせばいいでしょ?でも佐伯はそれをしないから……」 手を伸ばして雑誌なんて読んでないとアピールするようにそれを渡した不二が 「とことん邪魔してるんだ」 今度こそそらさず真っ直ぐ射抜いた視線が俺の一部を捕まえた。 「本当に嫌なやつな、お前」 雑誌をとりあげて俺はめくり始めた。 さっきまでの不二と同じ。 「似てるんだよ、佐伯は」
だから最悪だと笑うお前が俺はにくくてたまらないよ。 痛いよ
とか笑うのが悪い。 「気持ち悪いだろ?」
噛み付いた耳元が驚くほど寒くて、何だか可笑しな気持ちになる。 「帰れよ」 駄目押しにいってやった。
……結局不二はそのままそこに居た。 E N D |