鳳と日吉   >  部長の条件

「なぁ、日吉」
 後ろからデカイ図体の男が声をかけてきた。
 むさくるしい。
「……」
 ひとまず無視をする。
「なあ」
 少々声が大きくなる。
――……煩い。
「わかったから、どけ」
 ていうか、頼むから近寄らないでくれ。
 狭くないはずの部室で、何故わざわざ隣に来る。寄りかかる。ずっと待ってる?
 日吉は呆れ顔のまま腕をなぎ払った。
 瞬間のぞく寂しそうな大型犬の目。
 ――騙されない。下克上だ。
 ここで気を抜くとものすごく嬉しそうな顔で、顔を舐められる――もとい、抱きつかれる(いやらしい意味でなく、純粋な友情表現らしいが、よくわからん、と思う日吉である)。
 挙句の果て、一緒に帰ると称して、コンビニだのお好み焼き屋(恐らく忍足の行きつけ)だの、果ては家まで付いてきかねない。実際被害は重度で、泊り込みで朝練まで一緒に行く羽目に陥ったことも一回や二回ではない。
「明日休みだから遊ぼうっていっただけだろ。都合悪いのか?」
「わざわざ練習直後、こんな体勢できかなくてもいいだろうが」
 アーン?と思わず、跡部直伝の部長節(歴代なのか?)が出そうになる。
「だって、こうでもしないと日吉、逃げるじゃん?」
「そりゃ、そうされると知れば逃げるのが当然だろ」
 こうなると、もう、卵と鶏どっちが先?の議論。
 水掛け、ENDLESS……
「じゃあさ、もうチョット待ってからいったら……」
「却下だ」
「ならこのまま聞く。てか、日吉がいいっていうまで離さない」
「そしたら、鳳、お前も帰れないが?」
「いい、そしたらくっついてくから」
 そして最後には納まるのだ。
「ふう」
 ため息とともに。
「わかった。……で、どくか?」
「あ……」
「どうせ、用意はしてきてるんだろ?」
「うんっ」
 なら、急いで着替えろよ。
 懐が広いのか、狭いのか、跡部の後継者は笑って言うと今にもぴんっと立った耳がみえそうな、犬の肩を叩いた。
 ――ここで逃げれば下克上成功。
 だが、部長の後をついだとはいえないような気がする(跡部もよくチームメイトに巻き込まれてた)
 なんだかんだで、氷帝の部長はじゃれてくるレギュラーへの諦めと妥協がものを言う。言い換えれば弄られやすく、かつ、それに気付かない「天然」であることが条件なのだ。
 日吉の下克上は遠い。


ちょたひよ好きなのに主張するもんがなかった!と気づいてブログから再録。
そのうちちゃんとかけるといいなぁと……。コネタ他纏めてサイト改築したい。

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