ありがちな一日だったとは思うよ?
でもね、結構悪くなかったと、僕は思ってる。
ねぇ、どうなの、佐伯?
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「裕太もこられればよかったのに」
砂浜に波打つ風と水が足元に心地いい。
折角なんだから泳ぐ準備してくればよかったかな?
何気なくいった僕に、佐伯は
「そうだね」
素っ気無く返して、腕を太陽に伸ばした。
日差しはそれなりに強い。
帽子もないから眩しいし、既に二人の髪の毛は熱くなっていた。
「俺はショッチュウ泳げるからいいか」
「ずるいなぁ」
呟いた僕の言葉は半分本当。
海は好き。
あのままこの辺に住んでたら、僕もずっと浜に入り浸ってテニスなんて忘れてたかもしれない。(佐伯がそうならなかったのは奇跡に等しいよ)
海が似合うタイプじゃないのに、ずかずかとズボンがぬれるのを気にせずに足元の砂を蹴る佐伯はモデルみたい。
何だか格好よかった。
……だけど、大人びたとは認めたくない。
「周助はいいけど裕太は泳ぎたがったかもな」
「うん。そう思う」
嫌がらせのつもりで出した名前に、予想外(範囲内だけど、もっとストレートに「俺といるのに」って昔みたいに言って欲しかった)の反応を返されて、僕は嘘つきな笑顔を作る。
ヤキモチやきな親友と、弟の仲はこれでもすこぶるよい。
佐伯は大人な雰囲気があるし(実際は僕と大差ないのに)裕太は騙されやすいから。
そりゃ実際、佐伯はいいやつだと思うけど。
――少し面白くないかな?
「何不機嫌になってんの、不二?」
「どのへんがそう見えた?」
「いや。わざわざ裕太を持ち出して俺を怒らせようとしてる」
『いない人間の話をするなんて遊んでるときのマナー違反だとでも?』
無言できいても君にはばれるんだよね。
「馬鹿かお前?そういうんじゃないよ。裕太も誘ってやればよかったじゃん?」
「誘わなかった僕が悪いって?」
「いいや、素直に俺に誘わせておけばいいのにな」
そう。
僕じゃ駄目。
断られたから。
ズルイのは佐伯だ。
そう言ったら喜びかねないから言わないけど、本当に嫉妬してるのは僕の方。
「いいなぁ」
「何が?」
馬鹿にした目つきで(というよりたぶん本気で呆れてる)佐伯はこちらを見て、ため息をついた。
水をすくって髪の毛にかける。
きらきらと輝いた水が僕を誘った。
冷たくて気持ちそうだ。
佐伯はすぐあらえばいいじゃん?と思ってるんだろうね。
この辺の子ならそれが可能だし。
じっと見ていたら、視線を感じたのか、
「お前もやれば?」
あっさり提案された。
「遠慮させてもらうよ」
「うちに来んだろ?」
………え?
佐伯はごく当たり前の笑顔で
「遊べよ。で、後で裕太に報告な?嫉妬させてやればいいじゃん。今度は来るって言い出すだろ?」
「そっか」
そうなんだ。
それって有りなんだ。
佐伯の声に含まれた遊ぼうって気持ちに何だか面白くなってきて、今までの微妙な距離感が一気にきえた感じがした。
裕太、ごめん。
お兄ちゃんはお前が大好きで、でもお前の尊敬する(*注意*本当はそんな資格もないと断言しておくよ?)友達も大好きだから、素直に遊んでくるよ。
「思い切り遊ぶ」
僕はいって、佐伯に水をかけた。
「上等」
佐伯から受ける飛沫をかわして――かわしきれなくて一部目に入って泣きそうになったりしながら。
ま、いっか。
目は痛くてもよく見えなくても洗い流せばいいし。
青い空で、あとですっきりクリアに見えるからね。
こすらないで涙流したまま、報復の水を掬う。
「上手いな」
「そりゃね。ブランクは長いかもしれないけど、君にはまだ負けない」
昔から僕の方がズルいんだから。
はっとした顔で、「負けないからな」と意気込む佐伯と、夕方になるまで水合戦を続けた。
ガキ二人出来上がり。
後で裕太に自慢してやらなきゃ。
きっと、「ガキだな兄貴」とかいって、「二人してかよ?」と意外な顔をした後に、佐伯の提案どおりになるんだ。
佐伯も大概ずるいね。
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また同じような一日があると思うよ?
そう、結構悪くなかったと、僕は思ってる。
ねぇ、どうなの、佐伯は?
基本は周助は裕太大好きっ子でお願いします。
さえさんはひねてる方が好き