■ 無意味な攻防戦


「お前だけだと思ってんだけど?」

 史上最強のくどき文句(?)にも

「ずるいね」

 不二は笑う。
 いつもみたいに。

 ……お前は俺の理解者で、一番近くて……。

「知ってる。で?本気?……今からうちに来て何するって?」

 だから俺は欲しくてたまらない。
 その笑顔の裏側を、穿りかえしたら何が出てくるか見てみたい。
   めちゃめちゃにしたい。
 何もかもを。

「わかんないからきいてるんだけど?」

 とぼけてんだろうか?
 それとも本気で言ってるのだろうか。
 答えなんてとっくに分かってるから、そちらを睨み返した。

「ざけてんね、不二」

「そうだね」ともっとふざけた答えが返って、俺は履き捨てる。
 できるだけの笑顔で。

「馬鹿だろ」

 でも知ってた。
 嘘と本当を不二は半分づつ混ぜてしか言わない。
 特に【本当】を話すときは、できるだけ平然を装って、自分をからかうような話し方しかできない。

「そうなりたいっておもってる」

 そういったあいつの目には真剣の色が宿って、俺は「無理してんだ?」とはいえずに黙り込む。
 副部長でなくても実質はこいつがそうで……俺もある意味で似た場所にいるから。
 何が言ってほしいのか、分かるから言わない。
 俺だけが持つ言葉を、こいつは自覚しているから。
 言えば自嘲を重ねるだけ。

 あーあ。
 寝ろと素直に言っても寝ないだろう。こいつは。

 馬鹿だな。

 優しくしてやるのもなんだ。
 強引にひきよせて、マットに静めた。

「寝ろ」

 囁くのには遠い声で投げ捨てるように。
 後は、そのまま置いてかえるだけ。
 人の家でこんな風に自分の傍若無人さをふりかざすなんてそうそうないことだ。

「ん」

 不二が猫みたいに嬉しそうなのがしゃくで、枕をなげて顔面衝突させようとしたら逆に受け取られた。

「かわいげないなー」

「そう?」

「そうだって」

 デモ可愛いでしょと顔が笑ってた。
 ドアを閉める。

「そんなことないね」

 部屋をでてのんびり歩く。
 距離はあったけれど、嫌じゃなかった。
 かわいげないのは素直じゃない俺も同じだと、くすりと笑って。

 E N D

 

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