|
■ 表と裏 どちらも俺だとしたら どちらがお好きですか? 「あーっくん!」 シャウトして、 「うぜぇ」 と、けなされつつも、俺とあいつは友達なのに。 「てめぇ、何企んでだ?」 なんてしごく静かに屋上で応戦されたとき、胸に穴が開いた……そんな心持がした。 ****************************** 「なあ、南?」
部長、昼休み、愚痴=会社勤めでもない俺の日課。 「俺さ、あっくんの友達だよね?」
青春真っ只中な会話に落とし込んでみる。 「どうした?」 「馬鹿だろ?」と顔に書いてあるから、ちょっとむっとするが、仕方ない。(俺だって、そう思うよ、正直) 「友達にもナイショのことって、子供の頃ばれたときどうしてた?」 「今も子供だろ?」 「小学校とか」
小4のとき、裕美ちゃん(名前うろ覚え)のこと好きでさ。 聞いたら南は呆れ顔。 「千石。お前、それ他の人に散々やってるタイプだろ?……むしろ俺のがそういう状況になる役回りのような……」
うん。自分がよくわかってるね。南。 「……亜久津と何かあった?」 図星。
切り替えの早い、部長さんで助かるよ。 「少しばかり嫌われたかも」 「なるほど」
南は何も分かってない。 「【ナイショ】があるのか?」
そうです。 「打算で出来た友達だと思われてる」 「……そこまで器用じゃないだろ?」 「わかんねー」
俺は計算のできる男です。 黙り込んだら南はため息。 「あのなぁ。俺となんで友達やってんだ?」 「朝の宿題見せてくれるから」 「ああ、そうか。そうか」
南、嘘だよ。 「いいんだよ」 「え?」 「いいんだって」
南は言った。 「それでも俺は別にいいぞ?」 殺し文句だと思った。 「あっくんは?いいって言うと思う?」 「亜久津は亜久津だからな。なんていうか分からねーよ。でも、いやなら無視すんだろ」 「……確かに。」 「――あいつ、壇はまだしも他の連中にはいまだにガンたれてるぞ?」
南の告白は悪くなかった。 「からかったあと、自己嫌悪に陥るくらいならやめとけよ」 「分かってるって」 「分かってないだろ?お前のそれは罪悪感」 ナイショ自体は罪じゃないんだって南は笑った。 「スパイスだよ。ある意味で」 「何それ?」 「千石が考えてることは全部読めないけど」 『だから楽しい』って聞こえた…… 「本当?」 「ホント。女の告白みてーな返事させんな」 げっ 「うわ、最悪」
そうか、そんな風にあっくんが思ってるんなら悪くない……。 ******************************
次の日は部活が休みだった。 「あっくん」 「んだよ?」 間髪いれずに戻ったこの返事は?
そっか。 「あのさー亜久津、俺、お前のこと好きだかんな」 「あ?」
「あ」に濁点がついてました。 「まとわりつくのやめないしーそんで多分そのせいで楽しいこととかあって……それも諦めない」
そう、例えばそれが痛かったりしても。 「ゴマすってんじゃねー」 「……する」
わかってんのかな? 「だって、あっくんかまってくんないんだもん」 「てめえの狙いは何なんだよ?」 「あっくんの友達」
その場所。 「了承してくんなきゃやだ。てか了承しろよ?じゃなきゃ離さねー」
噛み付くみたいに言って、ホントに腕を放さなかった。
うん。欲張りでいいじゃん? 亜久津はゆっくり俺の手の力を少し緩めて、その隙に煙草に火をつけたけど、無理に腕ごと引き離したりしなかった。 「……ちっ」 こちらを見やって、 「……めぇも……」 何か呟いたが、それが『共犯』ってやつだと気づいたのはあっけに取られた俺の腕があいつの制服から離れた後のこと。
苦くてそれだけじゃ飲み込めないヤバイ液みたいな、カラメルがプリンの上に納まった。 「……共犯になってくれなくていいのに」
俺は犯人になれないから。
彼女が好きなのはお前で……俺は好きでも子供じゃなくて、そうも見られたくなくて。
表も裏も、どちらも俺で。 あっくんの残した消えきらない煙草の赤が、当たったわけでもないのに痛かった。(根性焼きされたみたい) E N D ■ BACK ■ |